PROFILE: ジェームズ・アクィリナ/職務執行者社長

米エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)の日本法人であるELCジャパンは、フレグランスカテゴリーの力強い伸長を背景に、2025年6月期の売上高が日本の化粧品市場の平均を上回る成長率で着地した。また、日本で企画・試験・製造した「エスティ ローダー」の新スキンケアライン“アクア チャージ”が大ヒット。同社史上初めて、日本発のスキンケアを海外の他市場でも発売する計画など、存在感を高めている。
新ビジョンにおける3つの重点領域を推進
WWD:2025年は、本国で構造改革を含む新たな戦略ビジョンが発表される大きな動きがあった。日本市場をどう振り返るか。
ジェームズ・アクィリナ職務執行者社長(以下、アクィリナ):ELCは新たな戦略ビジョン「ビューティ リイマジンド」を軸に、世界で最も顧客中心のプレステージ ビューティ カンパニーになることにフォーカスしている。5つの柱のうち、主要な重点領域は次の3つだ。第1に、業界最高水準の消費者接点の拡大。消費者の嗜好が進化する中、われわれの目的は消費者が今いるところで彼らとつながることだ。第2に、変革的イノベーションの創出。需要の高いサブカテゴリーや機能、オケージョンに焦点を当て、トレンドを捉えた製品を迅速に市場に投入することを目指している。また、1年以内に発売するイノベーションの比率を3倍に引き上げることにコミットしている。第3に、消費者向け投資の強化。再構築した投資モデルによって、ブランドの魅力をより直接的に届ける。これらにグローバルで集中し、日本においても、日本の化粧品市場を上回る成長で市場シェアを拡大した。日本はELCにとって明確な成長市場だ。
WWD:組織再編でどう変わったか。
アクィリナ:日本を含め、グローバルにわたり意思決定の迅速化と顧客主義徹底を目的に、ブランドクラスター制をカテゴリー軸で再編。コミュニケーションの効率化とより高い消費者価値の創出に集中できる体制を整えた。
WWD:成長をけん引したカテゴリーは。
アクィリナ:一番高い成長率を示したのはフレグランスだ。化粧品市場の中でも最も速く成長しているセグメントで、ELCジャパンはここへの投資を継続してきた。加えて、日本は世界でも有数のギフト市場である点も、成長を力強く後押しした。「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」は24年5月、東急プラザ原宿「ハラカド」1階に世界初のグローバル旗艦店を開設した。香りだけでなく、ロンドンの町の音や天気まで、ブランドの世界観を五感で感じられる空間を表現した。
「ル ラボ(LE LABO)」も同年3月、京都にある1879年建造の町家を1年かけて改修し、蔵を改装したカフェを併設する世界でも類のない旗艦店をオープンした。店舗体験への投資が、ブランドの日本市場における成長に寄与している。両ブランドとも、複数年にわたり2ケタ成長を達成している。注目すべきは、直営店、百貨店、オンラインとチャネルを問わず伸びている点だ。つまり、消費者にとって真のオムニチャネルが実現している。
WWD:フレグランス以外のカテゴリーはどうか。
アクィリナ:スキンケアも伸長した。170年以上の発酵技術を持つ勇心酒造との共同開発により、24年9月に発売した「エスティ ローダー」の新スキンケアライン“アクア チャージ”が好調だ。同シリーズは日本市場向けに開発した製品で、成功を受けて今年、海外の他市場でも展開する。
WWD:オンラインでの拡販も進んでいる。
アクィリナ:楽天とのパートナーシップは10年にわたり、次のフェーズへと進化している。製品ポートフォリオなどへの戦略的投資を拡大することで、ビジネスは力強い成長を継続。楽天市場の新機能、住所を知らない相手にギフトを贈れる「ソーシャルギフト」という次世代の購買体験においても、両社の連携は一段と深化している。本年以降、イノベーションとスケールを両立させながら、今まで以上にダイナミックな成長を実現していく。
加えて、昨年はアマゾン(AMAZON)のラグジュアリービューティ・カテゴリーに「オーディナリー(THE ORDINARY)」「ドクタージャルト(DR.JART+)」「ラボ シリーズ(LAB SERIES)」「クリニーク(CLINIQUE)」の4ブランドが進出した。「オーディナリー」は、売り上げランキングで何度も1位※を獲得しており、月次成長率でも著しく伸びている。既存顧客がアマゾンを通じて定期購入モデルを活用する機会にもなっており、消費者へのサービスの提供方法、既存パートナー企業との協業の両面で革新が起きている。
WWD:26年の展望は。
アクィリナ:今年は2月に「クリニーク」から、10の美肌スイッチにアプローチする薬用導入美容液“イーブン ベター アクティブ ブースター セラム”【医薬部外品】を、日本製・日本限定で発売する。3月には「エスティ ローダー」のロングセラーファンデーション“ダブルウェア”を、1997年の発売以来初めて処方を強化して発売するなど重要な製品投入が続く。日本は世界3位の化粧品市場であり、サービス、イノベーション、トレンドの基準をつくるなどグローバルな影響力を持つ。日本で成功した取り組みは世界の水準を高める。その確信のもと、投資を続けていく。
※ アマゾン売れ筋ランキング美容液部門、2025年10月1日調べ
個人的に今注目している人
7代続く酒蔵を引き継ぐ孝仁さんは、発酵科学を専門とする博士号を持つ。孝仁さんは、6代目であるお父さまが生み出した美容成分「ライスパワー」の研究開発を続け、世界に貢献できる新たな価値の創出を目指している。「エスティ ローダー」の“アクア チャージ”の開発を通じて協業する中で、歴史と伝統を尊重しながら科学で価値を進化させる姿勢に深く刺激を受けた。地域や人々の生活に貢献するという明確な使命感は、私自身の経営観にも大きな影響を与えている。
1968年に米エスティ ローダー カンパニーズの日本法人として東京・日本橋高島屋に「エスティ ローダー」第1号店カウンターを開設。以来、プレステージビューティ分野で55年以上の歴史を持つ。2025年現在、12のブランド、2000人超の社員、1000以上の店舗・販路を展開する。ELCグループはアジア太平洋地域での事業拡大に向けて22年6月、茨城県下妻市にアジア太平洋地域初となる生産拠点およびエンジニアリング・イノベーションセンターを建設した
ELCジャパン
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