エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES、以下ELC)の最高経営責任者(CEO)に、ステファン・ドゥ・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)氏が就任した。CEOの交代は2009年以来16年ぶりだが、ラ・ファヴリーCEOが抱える課題は山積みだ。
ファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)前CEOは、ELCを世界最大のプレステージビューティ企業に押し上げたが、23年にはライバルのロレアル(L'OREAL)にその座を奪われた。中国やアジアのトラベルリテール市場と本拠地である米国市場の低迷、イノベーションの欠如などにより、昨年は株価が年初から約45%下落。全世界で約3000人の人員削減を進め、事業の効率化を模索している。
ラ・ファヴリーCEOは、米「WWD」が入手した社内向けビデオメッセージの中で、「常に最善を選んできたつもりだが、過去数年間の決定には成功も失敗もある。悲観はしていないが、われわれは多くのことを学び、迅速に方向転換する必要がある」と述べている。その上で消費者ファースト、新世代の獲得、イノベーションの進化、会議や準備の効率化などを重点事項とした。
25年も減収でスタート アジア、米国の立て直しは急務
財務状況の改善も急務だ。投資銀行スタイフェル コーポレーション(STIFEL CORPORATION)のマーク・アストラカン(Mark Astrachan)アナリストは、ELCの収益向上と粗利益率の改善において、「多くの課題を抱えている。遅かれ早かれ解決しなければならない。現状のポートフォリオが長期的に正しいかを見極めるべきだ。各市場で適切な戦略が採用されているか、中国市場の課題にどう対処するか、持続可能で収益性の高い成長を取り戻すためにどのようなポジションを確立するかを再考する必要がある」と指摘する。
ELCの25年度第1四半期は、売上高が前年同期比4%減の33億6000万ドル(約5270億円)だった。事業の大部分を占めるスキンケアは、「ラ・メール(LA MER)」と「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」が2ケタ減で、全体でも8%減収。同社は第2四半期も、中国本土とアジアのトラベルリテール市場での継続的な課題を主因に、同6〜8%の減収を予想している。
しかし、アマゾン(AMAZON)での販売戦略の転換が奏功するなど明るい兆しもある。アナリストはラ・ファヴリーCEOが任命に深く関与した北米共同責任者のタラ・サイモン(Tara Simon)氏とアンバー・イングリッシュ(Amber English)氏らが同エリアのビジネスを再び活性化させると期待している。
ブランドポートフォリオの見直しは必須か
同社がポートフォリオを見直すのかは不明だが、情報筋は、「グラムグロー(GLAMGLOW)」「スマッシュボックス(SMASHBOX)」「トゥー フェイスド(TOO FACED)」というカリフォルニア発の3ブランドの事業終了や売却を予想している。だが、「トゥー フェイスド」は16年に14億5000万ドル(約2270億円)で買収しており、事業終了の可能性は最も低い。情報筋はヘアケアブランドの「アヴェダ(AVEDA)」と「バンブル アンド バンブル(BUMBLE AND BUMBLE)」も売却の可能性があると見ている。銀行筋は、「一般的にビューティ業界では、売却よりも打ち切りを選ぶ。競合他社に売却したブランドが成長し、小売店で存在感が増すことを避ける傾向にある」と話す。
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