ファッション
連載 コレクション日記

ウクライナへの気持ちを表した「ジョルジオ アルマーニ」の無音ショー 2022-23年秋冬ミラノコレ現地リポートvol.5

 ボン・ジョールノ!欧州通信員の藪野です。本日お届けするのは、ミラノ・ファッション・ウイークの実質最終日リポート。昨日までの嵐のようなスケジュールが幻かのようにゆったりとしていて、ようやくイタリア料理を食べるチャンスが到来しました。ボンゴレ・スパゲティとミラノ風カツレツを食べて、心置きなくパリへ移動します!

GIORGIO ARMANI

 「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のショー開始直前には、「ウクライナの悲劇に巻き込まれた人々への気持ちを表し、今回のショーではあえて音楽を使わないと決めました」というアナウンスが流れました。コレクションの世界観を表現する上で音楽はとても重要な要素の一つ。新型コロナウイルス・オミクロン株拡大の影響を受けて1月のメンズとクチュールのショーを中止したアルマーニさんにとって、このショーは特別だったはず。彼の“音楽を使わない”という決断には強い思いを感じます。振り返れば、イタリアにおける新型コロナ感染拡大が始まったときに、先陣を切って無観客ショーに切り替えたのも「ジョルジオ アルマーニ」でした。2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まりましたが、ミラノコレでは主要ブランドからのそれに関するメッセージ発信は見られず、今回も、アルマーニさんが先頭に立ってアクションを起こしました。

 ファッション・ウイークは、華やかな部分が取り上げられがちですが、本来はビジネスの場です。デザイナーだけでなく、アトリエや広報、マーケティングなど多くの人が関わり、作り上られたコレクションは、次の半年のビジネスにつながるもの。エディターやジャーナリスト、インフルエンサーが、それを伝える役割を担っています。つくる側、発信する側全てが、真剣にファッションを向き合っています。ただ、正直、この数日は100%の気持ちで発信に臨むことができませんでした。ウクライナに思いを馳せ、自分たちに一体、何ができるのかと考えました。まだ、ファッション・ウイークは続きます。そんな中、コレクション発表でできることは、世界に発信される力を生かして、より多くの人に“今、世界で何が起こっているかを考える”きっかけを与えたり、行動を起こさせたりすることだと思います。なぜなら、ファッションは移り変わる時代・世の中と共にあるものだからです。パリコレの序盤では、ショーやプレゼンテーションでウクライナへの連帯を示したり、寄付などの支援を行ったりするブランドが増えました。私自身、何よりも祈るのは、“これ以上傷つく人がでないこと”。戦争は、悲しみしか生みません。

 カメラのシャッター音だけが鳴り響く中で披露された「ジョルジオ アルマーニ」のコレクションは、光沢のあるベルベットなどの柔らかな素材となめらかに体に沿うシルエットで表現する、しっとりとしたエレガンス。序盤はテーラリングを軸にウィメンズとメンズをミックスして見せました。後半のイブニングウエアは、すっきりとしたロング丈。ダークカラーの生地に施されたビーズのフリンジやクリスタルの装飾が、繊細にきらめきます。

MSGM

 「MSGM」は親密なムードを演出するため、ブランドの新本社でショーを開催しました。朝9時半からのショーでしたが、クリエイティブ・ディレクターのマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)がインスピレーションを得たのは、夜空。「ここ数年、これまで以上に空を見上げるようになった」という彼は、そこにいやしや気分転換の効果を見いだし、「星は私たちの生活の中に常に存在し、地球上のあらゆる場所で見ることができる。冒険の相棒であり、迷子になってしまわないための羅針盤だと思う」と話します。

 そんな今季のキーモチーフは、もちろん“星”。その表現方法は、小さい星型のピースをつないだり、流れ星のグラフィックを盛り込んだり、ミラーパーツで天の川を表現したりとさまざまです。パテントやグリッター素材も星がきらめくイメージにつながります。夜空の花火や惑星のプリントなども登場しました。

 今シーズンは、縦のラインを強調する細身のシルエットが中心。光沢や透け感のあるドレスやスカートに、オーバーサイズのボクシーなテーラリングやワイドなカーゴパンツやジーンズ、セカンドスキントップスなどを合わせます。黒を貴重にした控えめな色使いで、いつもより大人っぽく洗練されたコレクションでした。
(藪野)

DSQUARED2

 「ディースクエアード(DSQUARED2)」が、ウィメンズ・コレクションでのリアルなランウエイショーを行うのは2年ぶり。今季のテーマは“旅”で、未知の場所でのスピリチュアルな旅路を楽しむ旅人を表現しました。

 アフリカの民族衣装に見られるようなジオメトリックなカラフルパターン、黄土色の花柄、タータンチェックといったさまざまな柄が、ベルベット、シルク、ニットなどの多彩な生地に施され、異なる要素が混在するスタイルが登場しました。防寒性と快適性を兼ね備えたダウンジャケットなどのアウターに、ニットベストやダウンベストでレイヤード。タータンのパッチワークキルト、ビーズのイヤリング、メタルのリング、シルバーボールや鈴をあしらったブレスレットなど、ハンドメードのようなアイテムに、何だかほっこり。旅路の途中で手に入れた思い出の品々をコラージュしたような要素をふんだんに盛り込んでいます。錆び色、こはく、フォレストグリーン、カーマインレッドなどのアースカラーの色彩が自然豊かな大地を思い起こさせました。

 多くの異なる要素をミックスさせてもコレクション全体としてはまとまっていて、くどさはありません。違うものをありのまま受け入れながら調和させ、ボヘミアンな仕上がりです。“異文化に触れて、その経験を装いに取り入れたい”という思いは、多くの人が今一番感じていることかも。新たな放浪の旅への出発を後押しするようなコレクションでした。
(井上)

おまけ:今日のワンコ

 今日は会場近辺でワンちゃんに遭遇せず、お休みです

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