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連載 コレクション日記

「ジル サンダー」のミニスカートに驚き、「ボッテガ・ヴェネタ」は期待の新章スタート 2022-23年秋冬ミラノコレ現地リポートvol.4

 こんにちは。もうパリコレが始まりましたが、まだまだミラノコレの現地リポートも続きます。第3弾に引き続き、今日も朝から晩までスケジュールはぎっしり!「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」と「トラサルディ(TRUSSARDI)」の新クリエイティブ・ディレクターによる初コレクションのお披露目に、「アンブッシュ(AMBUSH)」のランウエイデビューと、今季注目の話題満載の1日です。本日もフリーランスジャーナリストの井上エリさんと一緒にお届けします!

JIL SANDER

 先シーズンのウィメンズは薄紫、今季のメンズはオレンジと最近ワントーンでまとめたショー会場を用意する「ジル サンダー(JIL SANDER)」ですが、今季のカラーはホワイト。会場中央には、ギリシャ彫刻のレプリカがたくさん置かれています。

 これらのレプリカに通じる彫刻的なシルエットが、エレガンスを追求したという今季の軸になっています。例えば、テーラードジャケットやコートは、ベルシルエット。膝上丈のスカートの裾は波打つようなデザインで、モデルの動きに合わせて弾みます。ミニマルなショートコートやロングドレスのベルスリーブ、ケープディテールや大きな襟が細身なボディーとのコントラストを描いたルックも目を引きます。アクセントは、肩や胸元、ウエストにあしらわれた生地を折り畳んだようなボウ。今季のメンズにも登場した手描き風の星座プリントも、キルティングコートやドレスに施されました。

 特筆すべきは、ミニやショート丈のスカートがたくさん登場したこと。意外かつ新鮮でしたが、クリエイティブ・ディレクターであるルーシー&ルーク・メイヤー(Lucie & Luke Meier)の手にかかれば、エレガントな印象に仕上がります。お馴染みのミッドカーフのスカートやドレス、ストレートのパンツスタイルもあり、既存の「ジル サンダー」ファンへの心配りもバッチリです。

 2人の手掛ける「ジル サンダー」を象徴するハンドクラフトの要素はいつもより控えめで、ギュピールレースのロングドレスや、ファーのように仕立てたフリンジニットなどが登場。その分、ブークレやモヘアなど表情豊かな素材が際立っていました。

BOTTEGA VENETA

 「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は、マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)新クリエイティブ・ディレクターによる初のショーを開催しました。これまで「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA/現メゾン マルジェラ)」のアーティザナル・コレクションやフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)による「セリーヌ(CELINE)」、ラフ・シモンズ(Raf Simons)による「カルバン クライン(CALVIN KLEIN)」、そしてダニエル・リー(Daniel Lee)による「ボッテガ・ヴェネタ」を支えてきたマチュー。彼がこれから率いるブランドに対する十分な理解がうかがえる完成度の高いコレクションでした。詳しくは、こちらでリポートしていますので、ご覧ください!

TRUSSARDI

 「トラサルディ(TRUSSARDI)」も、新クリエイティブ・ディレクターによる初のコレクションを披露。今季から、ベルリン拠点のブランド「ゲーエムベーハー(GMBH)」のベンジャミン・A・フゼビー(Benjamin A. Huseby)とセルハト・イシク(Serhat Isık)がデザインを手掛けています。ショー会場は、工事中の同ブランドのミラノの店舗&カフェ。「ボッテガ・ヴェネタ」の会場もそうでしたが、未完成の空間は、新たなストーリーを作り上げていくというイメージにつながります。

 「トラサルディ」は1911年創業の老舗ですが、もともとは高級手袋メーカーで、ウエアのアーカイブやデザインコードは豊富とは言えません。そのため、彼らは自分たちで基盤を築く必要があったようです。彼らがまず取り組んだのは、ミラノで暮らす人々の着こなしを研究すること。“ピウミーノ・ジャケット”と呼ばれる薄手のダウンジャケットが愛されていることに気づき、コレクションのベースににしたと言います。

 壁一面が鏡の会場で、爆音が響き渡るなか披露されたコレクションは、黒やグレーを基調にしたアンダーグラウンドでエッジーな雰囲気。良くも悪くも、より洗練された「ゲーエムベーハー」という印象です。彼ららしい鎧のように力強い肩のラインとシェープされたウエスト、ドラマチックなフロアレングスのドレスやコート、ミニ丈のバッスルスカートを軸にしたスタイルは、中世の装いをヒントにしたRPGゲームのキャラクターのよう。アイコニックなグレイハウンドのロゴも自身の尾を噛むウロボロスのようなデザインに生まれ変わり、アームリングやサングラスにあしらわれています。

 これが「トラサルディ」のスタイルとして定着するのか、数シーズン見てみたいと感じました。(藪野)

AMBUSH

 ユン(Yoon)が手掛ける「アンブッシュ(AMBUSH)」が、ミラノで初となるランウエイショーを行いました。会場内に真っ白な砂が敷かれ、ランウェイの中央には巨大な球体があり、宇宙船に乗ってどこか他の星へ降り立ったかのようなSF映画さながらの雰囲気。「バーチャル上に『アンブッシュ』のメタバースを構築しながら、同時に、現実世界で『アンブッシュ』を着用してくれる人々や、実際のニーズについて常に考えています。メタバース上で宇宙船を作るにしても、現実に根ざしていなければ、人々には説得力がないのです」とショーノートにユンの言葉が記されています。

 コレクションではアウターが豊富で、強く印象に残りました。クロップド丈のライダースジャケットやブレザーなど「アンブッシュ」らしいハードな印象のレザーアウターには、袖や襟にシャーリングをあしらって柔らかさを加えています。テーラリングはボクシーかつシャープなラインで、2Dのデジタル上でもよく映えるアウトラインが明確なシルエット。ドレスのネックラインをハート型のようにカット。マイクロミニと床スレスレのマキシ丈コートとのコントラストなど、肌の露出のバランスが良く、体をキャンパスにさまざまなスタイルを描き出しました。それらに合わせるバックル付きのニーハイブーツやサイハイブーツ、レザーのチョーカーなどのアクセサリーが、色気のあるフェティッシュなムードを漂わせます。

 ショーのBGMのほかに、ヘリコプター(もしくは飛行船)の効果音が鳴り響きました。前頭部の髪はウェットで毛先にかけてエアリーな質感に仕上げ、どこかエイリアンのような異質な印象。ルック、演出、ヘアメイクの全てで現実世界と仮想空間の相反するエネルギーが表現され、「アンブッシュ」らしい懐かしくもあり未来的、そして強いフェミニニティーが香り立つ世界観が存分に発揮されていました。

 「アンブッシュ」は2012年、ユンが学生時代からのパートナーであるバーバル(Verbal)のステージ用ジュエリーを制作したのをきっかけに誕生。15年頃からウエアをスタートさせ、ユンは18年に「ディオール オム(DIOR HOMME)」のジュエリーデザイナーに就任しています。着実に成長を続け、独自のストーリーを紡ぎ出す「アンブッシュ」。初のミラノでのショーは、名実ともに“世界のユン”へと羽ばたく新たなチャプターを印象付けました。(井上)

おまけ:今日のワンコ

 「ボッテガ・ヴェネタ」の会場前で、ぬいぐるみのようなワンちゃんを発見!抱いていないと蹴飛ばされてしまいそうな人混みでした(笑)。

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