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連載 コレクション日記

ハンサムな「トッズ」に、「ヴェルサーチェ」の“ドヤ感”あふれる演出 2022-23年秋冬ミラノコレ現地リポートvol.3

 ボン・ジョールノ!欧州通信員の藪野です。ミラノコレは早くも折り返し地点の2月25日。アクセサリーのプレゼンテーションやショー発表ブランドのリシー(ショーの後日に開く展示会)もあり、朝9時から夜9時までほとんど休憩なしという佳境を迎えています。ということで今回からは、コロナ禍のコレクション取材の頼れるパートナーであるフリーランスジャーナリストの井上エリさんにも加わってもらい、一緒にダイジェストをお届けします!

TOD’S

 「トッズ(TOD’S)」のショーは、90sムードを感じるスリムなパンツスーツとチェスターコートをまとったジジ・ハディッド(Gigi Hadid)のオールブラックルックからスタートしました。主役は、ミニマルなテーラリングと、異素材ミックスのスポーティーなアウター、そしてバリエーション豊富なニットウエア。メンズウエアをベースにしたユニセックスなデザインも多く、全体的にハンサムな印象を受けます。ショーには男性モデルも数人登場。1月に発表されたメンズと共通するスタイルを着こなしています。

 目を引いたのは、モコモコしたウールやキルティング、ワックスコットンなど異素材をミックスしたケープやコート。クリエイティブ・ディレクターのヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)は、鮮やかなカラーを取り入れることが多いですが、今季は黒やダークブラウン、タン、ベージュ、グレー、カーキなどシックなパレットで素材の表情を際立たせています。ニットも複雑な編みで構築的に仕上げたセーターやジッパー付きのリブスカートから、チャンキーなミニドレス、フリンジがドラマチックなロングマントまで、クラフト感のあるアイテムが勢ぞろい。奇をてらいすぎることなく、「トッズ」の伝統をほどよくモダンにアレンジするのが上手いヴァルターですが、個人的には今季が就任以来ベストだと感じました。

GUCCI

 「グッチ(GUCCI)」はファッション・ウイークを離れ、独自のスケジュールやロケーションでコレクション発表を続けていますが、今季は久しぶりにミラノコレに参戦。まさかの「アディアス(ADIDAS)」とのコラボ発表はビックリしました。そのきっかけや今回スーツにこだわった理由などクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)に直撃取材。それを交えた詳報は別途アップしておりますので、こちらからご覧ください!そして、コラボの展示会詳報もこちらからご覧いただけます。

VERSACE

 パンデミック後の世界に向けて、メンズウエア由来のテーラリングの女性らしい着こなしが広がっている今シーズン、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」の力強さは一層輝いています。デザインのポイントとなるのは、胸元やウエストを際立たせるビスチエやコルセットのディテールと、誇張された肩のライン。ファーストルックのパンツスーツのジャケットには、両方のシルエットを取り入れ、コントラストを演出しています。その後も、ビスチエの上に肩幅の広いボクシーなジャケットやコートを羽織ったり、パワーショルダーのミニドレスとコルセットのようなパーツを重ねたり。ボディーコンシャスなドレスにもビスチエをドッキングし、ブランドらしい自信と魅惑に満ちた女性像を表現しています。

 そこに加えるのは、パンクやフェティッシュの要素。クラシックな雰囲気のツイードは端がほどけてメタルやクリスタルのチェーンと絡み合い、ラテックスのグローブやタイツ、ニーハイブーツ、ソールが2段になったハイパープラットフォームヒール、釘をモチーフにしたジュエリーなどでルックを仕上げます。

 フィナーレは、モデルが5人ずつグループになってポージングするシルエットがランウエイを覆い半透明のスクリーンに映る演出。そして、スクリーンが上がってモデルの姿を拝みながらクライマックスを迎えます。そんな“ドヤ感”あふれる演出は、まさに「ヴェルサーチェ」ならではでパワフルです。

ETRO

 「エトロ(ETRO)」は、テーマの“エトロ リミックス”のとおり、モチーフ、テクスチャー、都会&自然のハイパーリミックス!異なる要素をつなぎ合わせて、もりもりてんこ盛りです。会場は音楽学校の中庭に面した回廊で、1970〜80年代のアップテンポな音楽が響き渡りました。コレクションの基盤となるのはもちろん、ブランドのシグニチャーであるペイズリー柄。ドレスやパンツにオレンジとカーキの色調で登場した他、今季はペイズリーを拡大した大きなモチーフを、ブランドの新たなコードとして取り入れました。ゆったりとしたニットに編み、オーバーサイズのボンバージャケットにパッチワークでダイナミックな拡大ペイズリーを施します。さらに、クロシェ編みのロング丈のドレスに民族衣装を思わせるグラフィカルなモチーフをあしらい、レオパードの動物柄やサファリジャケットを差し込んで、野生的でエスニックな空気を漂わせます。

 中盤からは艶やかなベルベットのリラックスシルエットのスーツルック、光を反射して輝くメタリック素材のドレスで、都会のナイトシーンへと舞台を移しました。会場の座席の多くを占めていた20代前半くらいのインフルエンサーに向けて、ブラトップやミニスカート、ニットのレオタードなど、肌の露出を楽しむ"レトロ可愛い”アイテムも忘れていません。これだけバリエーション豊かな生地、装飾、モチーフを取り入れられたのは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)系の投資会社、Lキャタルトン(L CATTERTON)に株式の一部を買収されたことで、潤沢な資金を得たからなのかと考えてしまいました。理由はどうあれ、「エトロ」は贅沢な要素をリミックスして、再び始まる旅やナイトライフのためのドレスアップに活気をもたらしてくれました。

ONITSUKA TIGER

 2シーズン前からミラノ・ファッション・ウィークに参加している「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」が、初のリアルなショーを開催しました。この後に控えている「グッチ(GUCCI)」のショー会場から程近い、大型倉庫の会場内は見渡す限り真っ黒!今季、クリエイティブ・ディレクターのアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)は、80年代に川久保玲と山本耀司がパリのモード界に与えた“黒の衝撃”へオマージュを捧げます。

 ナイロンのジャケットの下から覗くコットン地のオーバーサイズのTシャツ、何層にも重ねたミディー丈のプリーツスカート、ボアのジャケットとベロアのドレスなど、日本の礼服の典型であるレイヤードの手法で異素材を重ねて、黒のルックに深みを持たせました。装飾は白い炎とフラワーのプリント、カフタンに施されたグラフィカルな刺しゅうだけで、全体に統一感のあるミニマルな内容です。また、モデルが着用したクリアのサングラスは、職人技を生かしたアイウエアブランド「金子眼鏡」とのコラボレーションによるもの。

 シルエット、モノトーン、ディテールに焦点を当てた黒のコレクションは、“質素さ”という日本独特の美学を感じさせました。今季、見てきた他ブランドのコレクションでは、スパンコールやビジューなど鋭い輝きを放つ装飾が多いこともあり、「オニツカタイガー」が表現した“わびさび”に通じる質素な美意識は、ミラノで一層際立っていたような印象です。

おまけ:今日のワンコ

 「コルヴィル(COLVILLE)」のショールームに行くと、ちょうど「ラ ダブルJ(LA DOUBLEJ)」を手掛けるJJマーティンも来ていて、愛犬のペッパーくんも発見!食いしん坊で、食べ物を求めてショールーム内を走り回っていました。

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