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連載 コレクション日記

渡辺直美も来場した「フェンディ」で、キム・ジョーンズの才能に再び感服! 2022-23年秋冬ミラノコレ現地リポートvol.1

 ボン・ジョールノ!欧州通信員の藪野淳です。ウィメンズ・コレクション取材のため、半年ぶりにミラノに戻ってきました。今シーズンからミラノ・ファッション・ウイークは本格復活!95%以上がリアルでの発表を予定する怒涛の5日間が幕を開けました。初日の気温は最高17度とポカポカしていて、気分はもう春。天気がいいだけで、やる気が湧きます。朝から晩までびっしりと詰まったスケジュールはまるでコロナ前のようで、すでに気が遠くなりそうなのですが、これだけ対面でのイベントが戻ってきているというのはうれしい限り。規制が緩和されて、席同士の間隔を開ける必要もなくなり、ファッションショーの熱気が戻ってきたように感じます。それでは今回も健康に気を付けつつ、張り切って取材に行ってきます!

DIESEL

 「ディーゼル(DIESEL)」は、グレン・マーティンス(Glenn Martens)がクリエイティブ・ディレクター就任後初のリアルショーを開催しました。グレンと言えば、1月のパリ・メンズでは自身のブランド「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」の2022-23年秋冬コレクションを発表し、その後にはゲストデザイナーとして手掛けた「ジャンポール ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のオートクチュールを披露したことも記憶に新しいですね。

 ショー会場に入ると、まず目に入るのは空気でふくらませた巨大な人間型のオブジェ。もちろん全員デニムスタイルなのですが、寝そべったり、挑発的なポーズを決めたりとさまざま。その足の間やお腹の下をモデルが通り抜けながら歩きます。

 ファーストルックは、“Y2K”スタイルを感じるデニムのブラトップとローライズジーンズ。ウエスト回りにはハードなダメージ加工が施されていて、今季のキーディテールとしてさまざまな部分に用いられています。スタイルの中心となるのは、ブランドの核であるデニムをさまざまな加工や手作業を駆使して仕上げたウォッシュドカラーのアイテム。その多くは、資源利用を最小限に抑えて生産するプロジェクト“ディーゼル ライブラリー(DIESEL LIBRARY)”で構成されているそう。用いた技術は、フィルムコーティングや生地の一部が剥がれ落ちたような“ピールオフ”から、手作業で解いてループ状にしてファーのように仕上げるものまで。中にはデニムのような風合いに仕上げたジャカードなどの素材使いや、デニムジャケットのトロンプルイユ(だまし絵)・プリントも見られます。

 そこにミックスするのは、ダメージ加工が施されたレザーのアウターやパンツ、ボディーコンシャスなミニドレスやスカートなど。レトロスポーティーやモーターサイクルのムードにポップな色彩やグラフィックを加えて、エッジを効かせた若々しくセクシーなスタイルを打ち出しています。グレンらしさを感じるのは、ドローコードやファスナー、ユーティリティーベルト、パネル使いで自由にシルエットや着こなしを変化させられるデザイン。デビューシーズンから継続するアイデアも多く、このショーを通して、グレンによる「ディーゼル」のイメージをより明確に確立したように感じます。

FENDI

 「フェンディ(FENDI)」のショーには、インスタグラムのストーリーでニューヨークから渡辺直美さんが来場すると知って、移動中からずっとワクワク。会場に入って、まず彼女を探しました。そしてセレブリティーやインフルエンサーが集まる席で発見!パープルのツインテールにメタリックなゴールドのドレスがお似合いです。

 今季の着想源となったのは、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が手掛けた1986年春夏のメンフィス・コレクションと、透ける素材の軽やかさを生かした2000年春夏コレクション。現在同ブランドのジュエリーを手掛けているデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)が、母シルヴィア(Silvia Fendi)のワードローブで見つけた1986年春夏のプリントブラウスをオフィスに着て来たとことからイメージを広げたといいます。「フェンディ」におけるファミリーの歴史や価値を大切にしているキム・ジョーンズ(Kim Jones)らしい出発点ですね。

 無機質なトンネルのような空間にまず登場したベラ・ハディッド(Bella Hadid)がまとうのは、細かいフリルがあしらわれたシフォンのブラとショーツに同素材のスリップドレスを重ね、ラムファーをあしらったショートジャケットを羽織ったルック。ペールピンクやミントグリーン、そして“オーロック”プリントやアップデートされたメンフィス風プリントで彩るシフォンのアイテムは今季のカギとなり、すっきりとした細身のシルエットやコンパクトなミニ丈などで2000年春夏にカールが打ち出したスタイルを現代的に再解釈しています。

 そして、柔らかく軽やかな素材感の次のカギは、テーラリング。就任して以来、キムはテーラリングをコレクションに巧みに取り入れていますが、今季は細身でなめらかにボディーラインに沿うデザインが特徴です。素材は、ガンクラブチェックやハウンドトゥースなどのツイードやウール、レザーが中心。ジャケットはロングもしくはクロップド丈で、ボトムスはハイウエストのパンツやマイクロミニのショーツなどを合わせています。アクセントを加えるのは、右サイドだけにジャケットの腰下のようなパーツが付いたベルトや同様のデザインをドッキングしたスカート、コルセットなど。強さと柔らかさのコントラストが際立ちます。先日のオートクチュールや「ディオール(DIOR)」のメンズでもキムの才能やミックス感覚に感服しましたが、今季もミラノ初日から素晴らしいコレクションを見せてくれました!

N°21

 「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」も、今季はテーラリングが際立っています。厚手のウールやガンクラブチェックのツイード、ハリのあるレザーなどで仕立てられたクラシックなメンズウエア由来のジャケットやコートのポイントは、コルセットのように絞られたウエストライン。それによって広い肩がより強調され、コントラストの効いたプロポーションに仕上げています。

 そこに加えるのは、深いスリットを入れたミッドカーフ(ミモレ)丈のタイトスカートやレースのドレス、モヘアのニット、大きさの異なるスパンコールを組み合わせたドレスやスカート、砂浜に並ぶヤシの木が描かれたハワイアンプリントといった、アレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell’Acqua)らしいラインアップ。メンズは同様の素材やモチーフを取り入れつつ、よりリラックスした雰囲気に仕上げています。

 デラクアは常に“マスキュリンとフェミニンのコントラスト”をクリエイションの軸にしていますが、今季はここ数シーズンの「ヌメロ ヴェントゥーノ」ではベストという印象。また、「プラダ(PRADA)」を筆頭に“女性性の解放”や“セクシーの再考”が台頭した先シーズンに続き、快活な肌見せやセンシュアルなスタイルは継続しそう。特に今季は、「フェンディ」や「ヌメロ ヴェントゥーノ」のコレクションに見られた伝統的に“男性らしさ”の象徴とされてきた要素とのコントラストが広がるのか注目しています。

おまけ:今日のワンコ

 「フェンディ」のバックステージ出入り口の前で出待ちしている人だかりの端でキュートなワンちゃんを発見!そのつぶらな瞳をしばらく見ていたら、飼い主さんもノリノリで撮影させてくれました。


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【第1部】60分 13:30~14:30
◇2022-23年秋冬コレクションレポート

登壇者:向 千鶴/WWDJAPAN編集統括 兼 サステナビリティ・ディレクター
藪野 淳/WWDJAPAN欧州通信員
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

【第2部】50分 14:40~15:30
◇国内マーケット展望

登壇者:五十君 花実/WWDJAPAN副編集長
ゲスト登壇者:神谷 将太/三越伊勢丹 婦人・雑貨・子供服MD統括部 新宿婦人営業部「リ・スタイル」バイヤー
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

【第3部】50分 15:40~16:30
◇どう着る?どう魅せる?スナップなどから探るスタイリング提案

登壇者:向 千鶴/WWDJAPAN編集統括 兼 サステナビリティ・ディレクター
藪野 淳/WWDJAPAN欧州通信員
ゲスト登壇者:シトウレイ/ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

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