ファッション

“韓国っぽい”ブランドは日本に数あれど…… アダストリアが「エーランド」と契約した理由

 アダストリアは10月8日に、国内でライセンス展開する韓国発のセレクトショップ「エーランド(ALAND)」の日本1号店を東京・渋谷にオープンした。ファッションをはじめとした韓国カルチャーは10~20代女性を中心に支持が強く、彼女らを狙って“韓国風”のブランドを自社で手掛ける日本のアパレルメーカーは数多い。わざわざライセンス契約するよりも、その方が手軽そうで利ざやも大きそうに感じるが、アダストリアが「エーランド」と契約するに至った経緯とは?樋口和之エーランド事業部長に聞いた。

――「エーランド」とライセンス契約を結んだ背景は?
樋口和之事業部長(以下、樋口):韓国は自国の市場が小さいこともあって、さまざまなカルチャーコンテンツが海外市場に照準を合わせている。ファッションも欧米市場で受けそうなブランドが多いとリサーチをする中で感じていた。そうした面白い韓国ブランドを日本で集積して見せることができたらいいなと社内で話していたが、“韓国っぽい”ブランドなら今は日本にもたくさんある。ただ、韓国カルチャーのファンは“韓国っぽい”ものではなくて“韓国ドンズバ”なブランドがほしいのだと思う。それで、絶大な支持を集める「エーランド」と取り組むことにした。

――SPAを基幹事業とするアダストリアにとって、ライセンス事業は初だ。
樋口:従来のようなSPA事業だけでブランドポートフォリオを埋めていこうとすると、どうしても社内で食い合いが起こる。新しい客層を取り込んでいくためには新しい事業が必要だと判断した。当社はSPA事業が軸だが、傘下のエレメントルールでセレクトショップ「カオス(CHAOS)」などを運営している。エレメントルールの知見は、「エーランド」にも生かせるものは生かしていく。

――アダストリアは日本国内での出店交渉や店舗運営を担うが、日本の店で売る商品はどのように決めているのか。
樋口:商品ラインアップは全て韓国側が決めており、日本では商品をいくつ発注するかを決める。日本側から、「こういったブランドを入れてほしい」といった要請は極力行わない。それをしてはせっかく「エーランド」と組んだ魅力が薄れてしまう。今後、韓国と日本とで若干のマーケットの誤差は出てくる可能性があるが、その際には「エーランド」のオリジナルレーベルで日本向けの商品を企画する可能性はある。しかし、大幅に日本企画を作るようなことは考えていない。

――韓国側から提案される商品ラインアップを見てどんな発見があったか。
樋口:日本のブランドは、「こういう商品を売りたい」「これが売れるだろう」と考えて品ぞろえするがゆえに、どこも同質化しているのだと思う。韓国側から提案される商品の中には、「本当にこれが売れるのか?」と感じるものも含まれているが、それを(SNSや店頭に)出してみて、「実はこんなニーズがあったのか」と気付かされるケースもある。売り上げという実利を得るよりも、次なる売れ筋や潜在ニーズにつながる情報、店舗運営のノウハウなどを「エーランド」で培って、それを社内で横展開することができれば、会社全体として価値につながるはずだ。商品は本国と同様に毎週投入し、売り切り御免でどんどん店頭フェイスを変え、鮮度を保っていく。ライブ配信などでリクエストが多かった商品については、追加投入を考えることもあるかもしれない。

――アパレル商品のうち、7割がトップスという商品構成に驚いた。日本のファッションビジネスで当たり前とされている品ぞろえの考え方とは違うようだ。
樋口:「トータルコーディネートを組まねばならない」という考え方がわれわれの中には刷り込まれているが、トータルコーディネートの考え方は今の10~20代にはあまり必要ないのかもしれない。単品を買って、その後自分でボトムスにはどんなものを組み合わせるか考えるという単品志向になっているように感じる。どう着るかはお客さまが考える時代だ。セット率向上を目指すにしても、トップスとボトムスではなく、トップスとトップスとか、トップスと雑貨といったような組み合わせでもいい。同様に、「冬は防寒アイテムを売らねばならない」「夏はビビッドカラー、冬は落ち着いたカラーを提案する」といった考え方もわれわれにとっては当たり前になっているが、そういうものに捕らわれていてはいけないと気付かされた。

――日本のファッションのMDは固定化してしまっているということか。
樋口:そういう部分はあると思う。正直僕も、日本ブランドと韓国ブランドの提案がそう変わらないように感じる部分もある。そういう時に「これなら日本のブランドでいいじゃないか」「日本のブランドじゃダメなの?」と韓国ファンの若い子たちに聞くと、「全然違う!」と返ってくる。恐らく感覚的なことなんだと思うが、そうした違いの1つがユニセックスのブランド。メンズのサイズ感なのに色使いはファンシーだったりするので、僕ら世代は「男にはちょっと着づらい」と感じるものが、今の若い女の子や男の子には支持される。日本ではターゲットである10~20代と作り手が同世代というブランドが減っていて、それでややデザインがコンサバになってきているんじゃないかと感じる。

――1号店はアルバイトに総計900人の応募があったことも話題になった。人材不足が課題となっている販売員でこの数字は驚きだ。そこから30人を採用したそうだが、選考はどのように進めたのか。
樋口:応募者のSNSのフォロワー数は確認したが、もちろんそれだけではない。投稿しているファッションや美容情報、ライフスタイル、韓国情報などを見て、「エーランド」と親和性があるかを重視した。実際にフォロワーが数百人規模と少なめだったスタッフも採用している。オープンに先駆けてSNSでのライブ配信を始めてからは、そのスタッフのフォロワー数もぐんぐん伸びている。

――今後の出店計画は?
樋口:5年間で30店舗を目指す。ショッピングモールなども含め、最低でも495平方メートル以上の店を出していく。韓国にある9店舗と同様に、店舗ごとに全て内装コンセプトは変えていく。1号店の初年度の売り上げ目標は7億円だが、将来的には1店舗あたり年間売り上げ10億円をめざす。

最新号紹介

WWD JAPAN

デジタルコマース特集2020 コロナで変わったもの/残すべきもの

「WWDジャパン」10月26日号は、デジタルコマース特集です。コロナ禍でデジタルシフトが加速し、多くの企業やブランドがさまざまなデジタル施策に注力していますが、帰るべきものと残すべきものの選別など、課題が多いのが現状です。今年はそんな各社の課題解決の糸口を探りました。巻頭では、デジタルストアをオープンしたことで話題の「シロ(SHIRO)」の福永敬弘=専務取締役やメディアECの先駆け的存在「北欧、暮…

詳細/購入はこちら