百貨店やファッションビル系ブランド、セレクトショップの2024-25年秋冬ウィメンズの打ち出しが出そろった。ここ2〜3年の間でランウエイで広がった“定番の再解釈”の価値観は、リアルトレンド市場にも着実に浸透している。トラッド&ベーシック回帰の傾向が一層強まる中、どのように新味を作り出せばいいのだろう?また、昨今の悩みのタネになっている暖冬対策は?展示会取材でもよく耳にした、この秋冬気になる6つのギモンに答える。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月24日号からの抜粋です)
Q. 各社の展示会の傾向は?
秋冬らしいトラッドムードが色濃く。
ジャケット、シャツ、ジーンズといったタイムレスなアイテムを、シルエットバランスの変化やディテールで新鮮に見せるという考え方が主流に。ラメやビジューなどのグリッター素材がとにかく目立った昨秋冬のキラキラ&ドラマチックなテンションはやや落ち着いて、今季はジャケットやピーコートなどのテーラードアイテムが充実。トラッドなムードが一層深まっている。
Q. 暖冬対策はどうする?
セット売りで客単価をカバー
重いウールのロングコートは減る一方、ショートコートや中綿ブルゾンなど短丈・軽量アウターが増えた。着脱が容易かつ、ライトアウター並みの防寒性を備えた厚手のカーディガンなども多く見られた。寒い時期は厚手のニットを挟むなど提案を工夫し、セット売りで客単価の低下をカバーする算段だ。ウールコートの仕入れは1〜2割程度減らすブランドが多い。納期も本格的に寒くなる11〜12月に引き付け、実需に合わせて店頭に投入する考えが一般的になってきている。
Q. トラッド&ベーシックをどう差別化する?
“コントラスト”がカギ!
商品そのものでは目新しさを作り出しづらくなる中、スタイリングで差別化する発想が重要。ビスチェやジレをシャツなどに重ねるコーデは春夏も反応がよく、秋冬も引き続きMDに組み込むブランドは多い。レイヤードスタイルを面白く見せる上では、異素材のハイブリッドもポイントだ。かっちりとしたテーラードジャケットにシャカシャカのナイロントップスをインしたり、オーバーサイズシャツにタイトなカーディガンを重ねたりと、素材感やボリュームのコントラストで遊ぶのが今っぽい。シアー素材、ラメなどのグリッター素材を取り入れれば、コーデに女性らしいニュアンスをプラスできる。
Q. ディテールや雑貨、小物使いは何がポイント?
レディーライクに。ハズしにキャップも
バレエコアの流れからくるリボンディテールが、ヤングカジュアルから大人ブランドまで幅広く見られた。足元は、特にセレクトショップブランドなどではポインテッドトゥのパンプスが多出。ともすればマニッシュに寄りがちなトラッド&ベーシックをレディーライクに仕上げる。ヤングカジュアル系ブランドではミニ丈と相性のいいロングブーツ、ローファー&ソックスの提案が目立った。ジャケットスタイルなどの“ハズし”として、キャップを被ったルックも散見された。
Q. イチオシの素材は?
「クロエ(CHLOE)」が2024-25年秋冬のパリコレで見せたような、レース、チュールなどの繊細な素材にレザー(もしくは合成皮革)を掛け合わせる“甘辛”の提案に力を入れるブランドが多数。客がレザージャケットに抵抗がありそうなフェミニン系のブランドは、ハードな印象が薄まるブラウン色で企画したり、ジレやスカート、グローブなどで取り入れたりしていた。
Q. トレンドの色や柄は?
トレンドカラーの赤を取り入れるには、ニットをインナーで差し色にしたり、バッグや靴などでポイント使いするのがリアルだ。トラッド回帰の流れから、アウター類ではグレンチェックやハウンドトゥースなどの英国チェック柄が多く見られた。ランウエイの最新トレンドである“グランパコア”(おじいちゃんが着ているような、いなたい服を着こなすこと)を意識し、レトロなチェックシャツなどをコーデに取り入れるブランドもあった。