
暑い秋が続くけれど、夏物には飽きたという微妙な“端境期”は服選びに困りがちです。この時期に求められるのは、涼しく軽いのに、退屈には見えないというわがまま仕様。長すぎる残暑が当たり前になるなか、各ブランドは創意工夫を凝らしたアイテムやスタイリングを提案しています。スイッチシーズン向けに増えているのは、シアーやレースを多用したり、スカーフなどの“ちょい足し”アイテムを盛り込んだりといったアレンジ。“秋色夏素材”も季節を交わらせる提案です。2025-26年秋冬展示会で目に留まった新アイテムや着こなし技をまとめてご紹介します。
レースレイヤードで“涼シック”な秋仕様
着る服を1枚でも減らしたい真夏と違って、初秋にはレイヤードが楽しめます。ただし、まだ残暑が続く時期なので、各ブランドは、重ね着前提のアイテムを豊富に提案しています。有力候補はシアー素材を使った極薄アイテム。特にレースアイテムとカジュアル系ボトムスを組み合わせると、互いの持ち味を引き出し合って、こなれた印象に仕上がります。
「ドゥーズィエム クラス(DEUXIEME CLASSE)」MDの陬波このみさんは、センシュアルな質感のレーススカートをダメージ加工を施したフレアデニムの上に重ねます。カジュアりなジーンズに新たな表情が加わります。テーラードジャケットを羽織れば、シックにも転身。
レースを軸に“フェミニン×マニッシュ”
レースはフェミニンではかなげなムードを帯びるので、マニッシュなアイテムとのミックスコーディネートに向いています。バランスの取り方次第で自分好みの印象に導きやすいスタイリング。「カオス(CHAOS)」がトップスとスカートのセットアップに選んだ素材は、ストレッチ仕様のレースです。上からデニムシャツを重ねて、“フェミニン×マニッシュ”の好バランスに整えています。着こなし面では首筋が涼しい抜き襟風のシャツアレンジが見どころ。ベルトで絞りを利かせて、砂時計シルエットを演出。シャツの前を開けても、ベルトのおかげでルーズに見えていません。
長袖のストレッチレース・トップスにストライプ柄のシャツを重ねたレイヤードプランも提案しています。実際に、セットで購入する人も多いそう。シャツの前開け加減で温度調節しやすいのは、端境期に好都合。抜き襟、前開け、袖まくりの3点セットで、秋らしさと風通しのダブルゲットが叶います。
シャツの重ね着も新しい
色や柄の異なるシャツを2枚重ねるスタイリングも今季おすすめ。「J.プレス(J.PRESS)」のルックは無地のシャツに、細いストライプ柄のシャツを重ねています。襟が2枚見える意外感もこの着方のいいところ。
「ランバン オン ブルー(LANVIN EN BLEU)」もシャツのレイヤードを打ち出しました。クロップド丈で、一段と軽やかな着映えに。ボトムスはワイドパンツにフレアスカートを重ね、上下の“ダブルレイヤード”に。重層的な見え具合に整いました。
シャツやカットソーを“トッピング巻き”
小ぶりのアイテムをトッピング感覚で重ねると、装いにアクセントが加わります。スカーフやストールが代表的ですが、ニットウエアやシャツを巻く手も使えます。「ロンハーマン(RON HERMAN)」はチェック柄のシャツをニットトップスの上から巻きました。シャツをストールのように使う小技。シャツのほうが見た目が軽いのに加え、ひねりの効いた印象に。チェック柄などの表情豊かなシャツを巻くのがおしゃれ見えのコツです。
「オブリオ(AUBRIOT)」はハウンドトゥース柄ジャケットの上に、赤いカットソーをスカーフのように結びました。トーンの異なる赤系アイテムをミックス。暖色を響き合わせました。色なじみのよいブラウン系パンツを引き合わせて、穏やかな着映えにまとめ上げています。最もビビッドなカットソーが格好の差し色になりました。
着るスカーフで印象的な“プラス0.5枚”に
重ね着以外で少しだけ彩りを加えたい――。端境期にありがちな、こういう微妙な状況では“着るスカーフ”が効果的。肩や腰に広げて巻く使い方です。服1枚には届かない“プラス0.5枚”のまとい方です。
「アイシービー(ICB)」はパンツスーツのパンツにスカーフを広げて巻きました。スーツとは印象の異なる素材感もポイント。幾何学的なスクエア柄のトリミングがスーツ姿にアート感を加えています。
スカーフは首巻きや肩掛けが定位置です。でも、ベルト通しから垂らすと、ボトムスの動感を高められます。オータムカラーを差し込みやすい簡単に決まる小技です。
服選びが悩ましい、夏から秋への移行期には、レースやシャツ、スカーフなどを使ったスタイリングが重宝です。重ね着に向くジレ(ベスト)やキャミソールなどもスイッチシーズンに役立つアイテム。夏物同士の掛け算は冬本番の手前まで使えるシーズンレスの着こなしです。四季の区別がはっきりしない傾向は年々、強まっているから、端境期をしのぐテクニックはますます出番が多くなっていきそうです。