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ワークライフバランスを追求した柔軟な働き方を推進 「法令順守意識」1位/高島屋【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

  「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員クチコミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材し、1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「法令順守意識」1位は高島屋だ。世の中で働き方改革が言われ始めるよりはるか以前の1980年代から、社員が働きやすい仕組みづくりを地道に行ってきた同社は近年どんな取り組みをしてきたのか、福田大・人事部労務担当課長に話を聞いた。

WWD:「法令順守意識」1位について、率直な感想は?

福田大・人事部労務担当課長(以下、福田):時間外労働の上限規制や5日間の年次有給休暇取得が義務化など、働き方改革法案の施行を踏まえ、高島屋としても2019年4月を待たずやれることはやっていこうと、前倒しして実行してきた。19年1月に、私たちが“ワーク・ライフ・バランス休暇”と呼んでいる計画付与年休を、従来の2日から5日間に拡大。また、小売業は長時間労働のイメージがあると思うが、会社として長時間労働の抑制を経営課題と捉え、新勤怠システムを導入して就労管理業務のデジタル化を進め、業務を効率化したりと、さまざまな取り組みをしている。そういう意味で評価をいただいたというのは率直に言ってうれしい。

WWD:それらの施策について、一つずつ伺っていきたいのだが、まずは長時間労働を是正する柔軟な働き方に対する具体的な取り組みを教えてほしい。

福田:36協定は、時間外労働の限度時間が月45時間、年360時間以内というイメージがあるかもしれないが、労働組合とも協議して、労使協定の覚書も締結し、私たちは年120時間を一つの目安として、時間外労働月10時間以内を最大の目安として管理する取り組みを進めてきた。

WWD:ファッション業界の長時間労働はよく話題にもなるが、時間外労働が月10時間以内というのは驚くべき数字だ。10時間以内に収めるために、シフトなど具体的にどのような施策を行っているのか?

福田:実際には18年度の社員全体の残業時間は平均月5.3時間だった。地方・郊外店や中小型店に関しては短刻営業を実施するなど、一直勤務(途中交代のない勤務形態)できるような仕組みを数年以上前から整えてきた。閉店時間を早めることで朝から晩まで同じメンバーで働けるので、早番・遅番で生じる無駄な重なりも省くことができ、非常に効果を発揮している。

また、19年1月から1日の所定労働時間を月の中で柔軟に拡縮できる勤務方法を導入した。例えば、いそがしい日は労働時間を2時間延長する分、閑散日は2時間短くして調整するなど、フレックスとまではいかないが、よりフレキシブルに働ける勤務方法をつくった。

WWD:それ以外で何か対策していることは?

福田:広報や人事部の人間は一日家にこもってやったほうがはかどる場合もあるので、在宅勤務は17年に試験的に導入し、18年に正式に施行した。それ以外には、「サテライトオフィス」といって全国に拠点のあるサテライトと契約をし、そこを利用できるようにしている。百貨店はバイヤーの数も多く、取引先に行くことも頻繁だ。例えば、表参道はよく行くエリアだが、その際に表参道のサテライトで最後の2時間仕事をして定時に帰る、といった働き方を可能にしている。費用対効果を考えると、投資的には「ん?」と思うところもあるものの、外出して会社まで戻って仕事をするより、移動時間を極力抑えることで効率的に働けるということで採用している。ただ1日4時間までと規制は設けている。現在は、本社のバイヤーと販売員以外の社員がその対象だ。

WWD:次に、年次休暇の取得について伺いたい。

福田:19年1月から年次休暇を半日単位で取得できるように変更した。年始の段階でその年の取得予定日を提出してもらい、現場のマネージャーや部門長が、自分の部下が年次休暇を取得したかどうかを確認することを業務に組み込んでいる。最終的には人事担当者が未取得者がゼロになるまで追いかける。ちょうど今19年度が締まるのだが(取材日1月9日)、最後のヒアリングをして、なんとか100%に持ってきたところだ。もともと“ワーク・ライフ・バランス休暇”を始めた16年当初から今まで、日数に関係なく取得率はずっと100%だ。ただ平均でいうともっと取得していて、18年度の正社員の休暇取得日数は11.2日だった。

WWD:従業員の約7割が女性と聞く。女性は出産や育児などでライフステージの変化が起こりやすいが、育児休暇制度などはどのような仕組みを取っているのか?

福田:育児休暇に関しては、正社員に限らず勤続1年以上ならパートタイムの人でも取得できる。子どもがたくさんいる人は育児休暇期間が長くなるが、以前は上限を12年としていたがそれを撤廃し、一番下の子どもが満3歳になるまでは取得できるようにした。

また育児勤務制度も充実していて、一番下の子どもが小学校4年生になる年の3月31日までは希望者全員が取ることができる。短時間勤務に加え、短時間とフルタイムを併用できる勤務など8パターン設定し、多様なニーズに対応している。なので、出産を理由に退社する正社員はわが社では皆無だ。今、正社員の平均勤続年数は女性が男性をすでに超えていて、そういう企業はなかなかないと思う。

WWD:法令を順守し、働きやすい環境づくりを目指して積極的に施策を行う背景には何があるのか?

福田:わが社はもともと働き方改革が言われるよりはるか昔から社員が安心して働ける職場づくりに尽力してきた。そして現在、百貨店自体の要員がどんどん減少していく中、厳しい状況にあるというのも理由の1つだろう。今いる人間で同じ成果以上のものを目指そうと思うと、働き方を変えないと伸びない。かつ、退社されると会社にとっては損失となるので、長く気持ちよく働いてもらうための視点がすべての根底にある。

WWD:最後に、社員にとって「働きがいのある」企業とは、どのような企業だと考えるか?

福田:「いつも、人から。」が経営理念であり、何よりのテーマだ。明るく楽しく働きやすい、働きたい職場づくり──これを大きなテーマにして、業務プロセスや制度、システムを考えている。その中には業務効率化や人材育成などいろいろな項目があり、それらをきちんと循環させながら、ワークライフバランスも充実させ、仕事でも活躍し、成長できるようなグッドサイクルをつくっていくことができれば、「働きがいのある企業」となるのではないだろうか。