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大丸松坂屋のボトムアップ風土改革「コノハタプロジェクト」 全国の拠点で広がる“変化の兆し”とは?

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大丸松坂屋百貨店でボトムアップ風土改革プロジェクトが進行中だ。400年以上の歴史を持つ松坂屋と300年以上の歴史を持つ大丸を抱える同社は、現在全国に15店を展開。時代の変化に対応しながら、伝統を守り、革新を続けて、百貨店のありようを拡張している。強い組織を作るうえで、つながりや意識を高める企業文化や風土は非常に重要だ。「コノハタプロジェクト」を主導する泉もも経営戦略本部 経営企画部 風土担当に進捗を聞いた。「経営層改革」編はコチラ

拠点ごとに「変革シナリオ」を設定

WWD:ボトムアッププロジェクトに社長が率先して協力し、徐々に社内のコミュニケーションが変化しつつあることは分かった。並行して進んでいる「拠点改革」ではどんなことが行われているのか。

泉もも大丸松坂屋百貨店 経営戦略本部 経営企画部 風土担当(以下、泉):「拠点改革」は、現時点で本社を含む11拠点で稼働している。現場社員を主役とするマネジメントを目指し、店長を含めた部長以上を“スポンサー層”として、変革の阻害要因を取り除くことと、自ら変わる姿勢を見せることで、現場をサポートしてくれる立場として位置付けた。このスポンサー層と現場からのメンバーでなる“コアネットワーク”を中心に、その店(拠点)における課題の特定と変革方法を策定してもらった。

多くのプロジェクトは“こうあるべき”を設定して、そのギャップにアプローチをすることが多いが、今回の風土改革においてのアプローチは、一旦経営チームである“スポンサー層”同士がお互いを知る、価値観を共有し合うことから始め、「変わりにくい理由、拠点独自の根深い問題は何か」を本音で議論。問題を人のせいにせず、構造的に捉え俯瞰して眺めることで、課題を特定した。そこから「我々は顧客への提供価値を今後どう進化させていくのか?」「終わらせる思考・行動パターン」「提供価値の実現に向けてみんなで目指したい思考・行動パターン」を言語化し、拠点独自の「変革シナリオ」を設定する。

WWD:店長を含めた部長以上を“スポンサー層”とするワーディングが、求めるスタンスが分かりやすく面白い。“コアネットワーク”のメンバーはどのように決め、何をするのか?

泉:進め方も含めて、メンバーの巻き込み方も各店各様だ。想いのある人を中心に変革のうねりを作り出したいということで「挙手制」で参画メンバーを募集した店舗もあれば、次世代の育成や変革人財の活性化を狙い「任命制」で活動を開始した拠点もある。部門を越えたチームで、人数も店によって異なる。現場実態の共有や、スポンサー層と現場の橋渡し役にもなると同時に、対話の場自体をコミュニケーションの機会としている拠点も多い。

パートナー企業(コンサル)からは「変革をデザインする為の情報提供」「思考の質を深めるアシスト」「対話を促進するアクション」の支援を受けながらも、最終的には進め方・コンテンツなどを全て自分たちで意志決定している。このようにフレームワークに則った変革ではなく、対話するプロセスそのものを通して各拠点独自のスタイルで変革に挑んでいる。このこと自体は本店がなく、各店の独自性やエリア特性を最大限に活かした「百様」を大切にする当社ならではの進め方であると感じている。

1年間は本社専任組織のメンバーとパートナー企業(コンサル)が伴走し、その後は店ごとに徐々に自走。23年度は先行拠点として本社と東京店で活動が開始され、24年度は心斎橋店と札幌店、札幌店、名古屋店、上野店、法人外商事業部、25年度は京都店、神戸店、静岡店、下関店でスタートした。

WWD:実際にはどのようなことが行われた?

泉:例えば東京店で23年度に実施した初期のコアネットワークは、「東京店をもっとおもしろく」、略して「東おも」をコンセプトに挙手制でメンバーを募集し、36人程で活動を開始した。スポンサー層と対話の時間を設けて、店長の人となりや思いを聞きつつ、スポンサー層が見守る中、仕事のモヤモヤや本当にやりたいことについて語るワークショップを実施。ストアコンセプトである「クセになる百貨店」と自分の仕事をつなげてみたり、「東おも」を実現するためにあったらいいというアイデア出しをしたりした。1年の活動を通して「東おも」の場で語られた「やりたいこと」が部門を超えた協力で実現したり、改装のアイデアを募集して、その実現と盛り上げ策もいつもと違うメンバーで考えたりと、今までと少し違う仕事の仕方や取り組み方が“変化の兆し”として出てきた。

まず対話のスキルから

WWD:なかなか本音を明かさない“包装紙文化”においては、非常に大変なことのように聞こえる。最初からうまくいったのか?

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