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ECが5割のフランス発デジタルジュエラー「ジェミオ」 起業家夫妻に聞く“既成概念を覆す”ビジネスモデルの作り方

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PROFILE: ポリーヌ・レニョー=ジェミオ創設者、シャリフ・デベス=ジェミオ共同創設者

ポリーヌ・レニョー=ジェミオ創設者、シャリフ・デベス=ジェミオ共同創設者
PROFILE: レニョーはフランス生まれ。パリのHEC経営大学院卒業後、2011年ジェミオを夫のデベスと創設。現在はマーケティングとブランディングを担当。21年、起業家とコーチングの経験を生かしたトレーニンングプラットフォーム「ダミアン」をスタート。デベスは、レコール・サントラル・パリを経てハーバード・ビジネス・スクール卒業。経営コンサルタントとしてキャリアをスタートするが、11年にジェミオをレニョーと創設。現在は、市場開拓等を中心に行う PHOTO:KOHEI KANNO

フランス発ジュエラー「ジェミオ(GEMMYO)」はポリーヌ・レニョーとシャリフ・デベス創設夫妻が2011年、パリで設立した。創設のきっかけは2人の婚約。2人は、パリのさまざまなジュエラーを訪れてエンゲージメントリングを探すが、理想のリングもサービスも得られず、ジュエリー・ブランド「ジェミオ」を起業し、デジタルを駆使して、フランス製のジュエリーを適正価格で届けるスタートアップとして歩み始めた。試行錯誤をしながら、デジタルの利便性、無駄を省いた受注生産、メード・イン・フランスという品質へのこだわり、きめ細やかなサービスを組み合わせたビジネスモデルを確立。設立当初はEC販売だけだったが、現在ではパリを始めヨーロッパ中心に9店舗を運営。年商の平均成長率は約35%と高成長を続けている。日本には23年に上陸し、「ホテル オークラ 東京」でアポイントメント制でジュエリーを紹介したところ、すぐに予約が埋まる盛況ぶりだった。昨年末には東京・表参道にも出店。中心価格帯が35万〜50万円という手に取りやすく高品質なエンゲージメントリングを中心に売上高を伸ばしている。表参道店の1周年を機に来日したレニョー・デベス創設夫妻に成功までの道のりを聞いた。

既成概念を超えるデジタルジュエラーに

専門知識やノウハウが必要で、伝統に縛られがちなジュエリー業界。歴史のあるビッグネームがひしめく市場において、業界経験のない夫妻がどのようにブランドを立ち上げ、直営店を運営するまでに成長できたのか?レニョーは、「既成概念に囚われないビジネスを構築できた。ジュエリービジネスは心理的な要素が大きく、信頼がまず必要だ。消費者が欲しいと思うものやサービスを10年以上かけて模索してきた」と話す。起業時は資本がなく、在庫を持つのは不可能、実店舗などもってのほかだ。ECだけでどうやってジュエリービジネスをしていくかというのが課題だった。レニョーは、「なぜ、オンラインでジュエリーを販売できないのか疑問に思った。デジタルであれば、地方をはじめ。あらゆる人々にリーチできるしコストも低い。だから、デジタルブランドにしたかった」と言う。マーケティングもオンライン中心に行い、フェイスブックやインスタグラムなどのSNSも活用してブランドの認知度をアップ。夫妻が注力したのはデジタルジュエラーとしてのビジネス構築だ。出店に関しても非常に慎重。まず、”レジデンス”という方法で、ホテルなどの場所を借りてイベントを行いテストマーケティングし反応を見るケースが多い。また、“デスティネーション”戦略を取り、トラフィックが多く家賃が高い場所に出店するよりも、商品自体へ資金を投じてきた。

売り上げの5割をECが占める理由

コロナ禍に入り、ECが伸び飛躍的にビジネスが成長。コロナ前に苦戦した年もあったが、19年以降は2ケタ増を継続している。ECと実店舗のビジネスの割合は5対5。多くのジュエラーのEC比率である5〜10%程度と比べると非常に高い。レニョーは、「創業当時からECにフォーカスしてきたから、デジタルの販売技術は熟知している」と話す。

多くのジュエラーがEC運営やカスタマーサービスなどアウトソーシングするが、「ジェミオ」では、全て自社で行う。「EC上の写真や文章、問い合わせまで、国別に最適になるよう調整を行う。とにかく、フレンドリーで快適にショッピングしてもらえる環境作りが重要」と続ける。来店が難しい消費者には、オンラインでアポイントメントを受け付け、スタッフが商品を着用して見せるなど細やかな対応をするという。また、色石のカラーや品質に満足しなかった場合に交換・返品を受け付ける。ECでのシューズ販売と同様、返品・交換は当然のスタンダードという考え方からだ。「これら全ての要素が顧客の満足感を高め信頼につながっている」とデブス。

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