ファッション

フランス発ジュエラー「フレッド」 ラグジュアリーのプロ、新CEOが語る“モダンジュエラー”の強みとブランドの”鮮度”の重要性

PROFILE: ヴィンセント・ライネス / 「フレッド」最高経営責任者

ヴィンセント・ライネス / 「フレッド」最高経営責任者
PROFILE: フランス生まれ。米マルチメディア企業のグレイ・メディアでキャリアをスタート。広告代理店BBHの要職を経て、2001年LVMHグループ入社。ブルガリの香水・化粧品のマーケティング部門統括、アクセサリー部門のマーケティングおよび製造責任者、ワールドワイドのセールスマーケティングディレクターなどを歴任。ブルガリの英国法人のマネジングディレクターとMEA(中東・アフリカ)の責任者を経て、22年ブルガリ・ジャパンの社長兼CEOに就任。24年6月から現職 PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

フランス発ジュエラー「フレッド(FRED)」は、アイコニックな“フォース10”をはじめ日本市場で売り上げを伸ばしている。同ブランドは1936年、フレッド・サミュエル(Fred Sammuel)が創業。“太陽のジュエラー”としてモダンでデイリーに楽しめるジュエリーを提案し続けている。「フレッド」のヴィンセント・ライネス最高経営責任者(CEO)が就任して約1年が経過した。ライネスCEOは、「ブルガリ(BVLGARI)」で20年以上に渡り要職を務めてきた人物。「フレッド」のCEOに就任するまではブルガリ・ジャパンのトップを務めた。来日したライネスCEOに話を聞いた。

ブランド継続のために必要な歴史と革新性の融合

WWD:来日の目的は?

ヴィンセント・ライネス「フレッド」CEO(以下ライネス):日本は「フレッド」にとって非常に重要な市場。同様に、私にとっても第二の故郷とも言える国だ。妻が日本人で、ビジネスだけでなく私自身にとって日本はとても大切な場所。日本の顧客やチームに会うために来日した。

WWD:「フレッド」のCEOに就任して約1年が経過したが、戦略の変化は?

ライネス:大きな変化はない。「フレッド」は来年、創業90周年を迎える。私の役割は、このブランドの90年後を思い描いてチームを率いていくこと。「フレッド」は、ジュエラーが集まるヴァンドーム広場にブティックがあるが、他のジュエラーとは違う。創業者であるサミュエルの独立した起業家精神と価値をジュエリーを通して軽やかに表現するモダンジュエラーだ。サミュエルは、カリスマがあり社交的で、顧客だけでなくスタッフや彼を取り巻く全ての人をインスパイアした。それらが「フレッド」のDNAやジュエラーとしての価値であり、それを大切に育んでいくだけ。「フレッド」は“太陽のジュエラー”として、多くの人々へ幸福感や満足感をもたらしてきた。“日出る国”と呼ばれる日本でも大きな可能性を持っている。

WWD:「ブルガリ」における長年の経験をどのように「フレッド」で生かしているか?

ライネス:24年間「ブルガリ」に勤務した。長い年月だと思うかもしれないが、ラグジュアリー・ビジネスには必要なこと。まず、そのブランドの個性を理解しなければならない、そして、それを製品に落とし込むには長い時間がかかる。時間をかけなければブランドのことを理解もできないし、ちゃんとした関係性を築くことはできない。基本「フレッド」でも、「ブルガリ」でやってきたことを続ける。どのブランドにとってもクリエイティビティーが最重要だ。ブランドの歴史やアイコンなどをきちんと理解して、クリエイションに落とし込むだけ。私の仕事は、優れたチームがいなければ成立しない。彼らと共に、ブランドが持つ価値を大切に育てて、誰が見ても「フレッド」を嘘のない完璧なラグジュアリー・ブランドにすること。そして、常に革新的な考えを持ち、ブランドの鮮度を保ち続けることだ。

親しみやすいジュエラーとして女性&若年層へアピール

WWD:改めて「フレッド」の魅力とは?

ライネス:「フレッド」のジュエリーは、手に取りやすいものからハイジュエリーまで幅広いが、どれも1日中着用できるのが魅力だ。いろいろな着け方できるし、カジュアルからフォーマルまでさまざまなシーンで活躍する。ジュエラーというと敷居が高く、近寄りがたいイメージがあるが、「フレッド」はカジュアルで親しみやすいブランド。顧客とのつながりをとても大切にしている。ブティックは、まるで友人宅を訪れたかのように居心地のよい場所であるべきだ。このようなオープンでカジュアルな面は、より多くの若い世代に支持されると思う。また、ジュエラーとしては珍しく男性にアピールする点。これからは女性向けの商品を強化するつもりだ。

WWD:「フレッド」の商況は?売れ筋や価格帯は?

ライネス:全ての市場で好調。中国を含むアジア市場は絶好調だ。中東でも市場を拡大しつつある。売れ筋は、アイコンの“フォース10”ブレスレットや“シャンス アン フィニ”。“フォース10ライズ”という女性向けのラインを通して女性にもアピールしていきたい。幅広い価格帯のものがあるが、売れ筋はエントリーの20万〜70万円程度。1番売れるのはブレスレット、その次がリング、ネックレスだ。今後は、現在の顧客層が求める70万〜250万円の価格帯の商品を拡充させる。なぜなら、その価格帯の商材が市場にあまりないから。“シャンス アン フィニ”の新作ジュエリーが代表的だ。

WWD:日本市場における課題と戦略は?

ライネス:銀座にブティックをオープンしたのは、1994年。当時の銀座にジュエラーの店舗はまだ少なかった。日本の消費者は商品知識が豊富で、ブランドや商品への期待値が非常に高い。あらゆるラグジュアリー・ブランドにとって日本は、重要で指針となる市場だ。現在の課題は、インバウンド客が増える中で、バランスをとりながら日本人客に対して店頭での体験やサービスをちゃんと届けるということ。また、ブランドの認知を上げていくことが重要だと考える。

WWD:金高騰がビジネスに与える影響は?

ライネス:さまざまなモノの価格が上がっている。ジュエリーは、その中でも、最も影響を受けにくい商材だ。バッグなどは信じられない上昇率だ。金高騰でジュエリーの価格が上がったとしても、バッグに比べれば妥当だと感じる。消費者は、投資や誰かに引き継ぐ目的でバッグなどファッションアイテムの代わりにジュエリーを購入している。例えば、数千年前の文明で現在も残っているものは、建築やジュエリーだ。時代を超えて残るという意味でも、ジュエリーには永遠の価値がある。価格は、それに対する単なる指標の一つでしかない。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

“カワイイ”エボリューション! 2026年春夏ウィメンズリアルトレンド特集

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。