キャリアコラム

役職呼びは廃止 社員からの提案は“やってみよう”の精神で 「風通しの良さ」1位/島田商事【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

 「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員口コミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材。1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「風通しの良さ」1位は、ボタンや縫製資材を扱う島田商事だ。大阪で創業した同社の、関西ならではのユーモア溢れる社風とそのアットホームな雰囲気の秘訣を島田晋宏副社長に聞いた。

WWD:「風通しの良さ」1位について、率直な感想は?

島田晋宏代表取締役副社長(以下、島田):退職者による書き込みが多い「OpenWork」のクチコミでポジティブな評価をいただけたことはありがたい。経営側の思いが社員に伝わり、退職後もその社風が印象に残っているのだと感じた。特に「社員同士の距離が近い」「あたたかい社風」というクチコミがうれしかった。ただ、業界では決して悪い方ではないと思うが、給与に関してはまだまだ課題が残っていると感じたのも正直なところ。賞与に関しては、必ず利益分を還元しているのだが……。

WWD: 風通しの良いオープンな社内環境づくりにおいて、具体的に行なっている施策は?

島田:毎年、入社式の後に懇親会を行っている。そこで必ず新入社員たちと記念撮影を行うのがわが社の恒例行事。入社式のときは、いわゆるかしこまった記念写真。懇親会のときは、変顔の写真をあえて撮影する(笑)。2015年からスタートしたが、年によって社員のカラーが出るのも楽しい。この行事は、今では上海のオフィスや花巻の工場にまで広まっている。実は私自身が同志社大学の喜劇研究会出身で、学生時代にのめり込んだことは漫才。“笑い”でその場が和み、解放感で人と人が打ち解けてコミュニケーションを取れるきっかけになると思っているので、このような写真撮影を始めた。

WWD: 長い歴史がある会社だが、社員に対する配慮は古くからあった社風なのか?

島田:曽祖父が明治20年(1887年)に創業し、今年で133年を迎える。当初は大阪でのみボタンメーカーとして経営していた。戦時中は一度商いを畳み、祖父が戦争で負傷したこともあって、戦後は父が17歳で事業を再興した。最初は仕入れには苦労したと聞いている。そんな時、競合でもあった清原の創業者である清原清之助氏が、当時仕入れ分をツケで購入させてくれるなど、大いに助けてくださったそう。そのようなご恩があり、会社を成長させることができたのだとか。なので、人に対する姿勢は独特なものがあるのかもしれない。3代目社長である父がよく言っていたのが、「自分ひとりでは何もできないけれど、社員とその家族の存在があって会社を運営することができる。だから売り上げた分は最大限社員に還元するように努めろ」。父は社員を含む会社のことを自分の子どものように愛情を持っていると、私も子どもの頃から見て感じていたし、その精神が「風通しの良さ」にもつながっていると思う。

WWD:社内で円滑なコミュニケーションを図るために行っていることは?

島田:以前は係長、課長、部長のように肩書きで呼ぶ習慣があったが、それを廃止して名前で呼ぶようにしている。それによって上司部下、先輩後輩間であってもフラットに会話がしやすくなり、社員同士の距離感が縮まり、率直な意見や新しいアイデアも出やすくなると考えたからだ。付き合いで頻繁にゴルフに行くが、社員が私に対して「それだけゴルフに行っているのに、いつまで経ってもうまくなりませんね」と言ってくる(笑)。私はそれがすごくいいと思っている。

WWD:それだけオープンな環境だと社員も発言しやすいと思うが、社員の意見やアイデアが生かされた例は?

島田:商品企画部の女性社員が島田商事が手がける縫製資材をイラストで描き下ろしてくれた。ボタンは“ぼたお”、裏地は“うらじい”といったように、個性溢れる全20ものキャラクターを“トリムモンスターズ”として考案してくれた。面白かったのですぐに企業キャラクターとして採用し、カタログや販促品、ドイツ・ミュンヘンで行われる世界最大級のスポーツ用品見本市「イスポ(ISPO MUNICH)」展や新聞広告などに使用した。このキャラクターたちにはストーリーがあって、彼らがSBK(島田商事の旧称、島田釦株式会社の頭文字をとったもの)惑星からボタン型の飛行船に乗って、“縫製資材一つで洋服のデザインは変わる”ことを地球に伝えにやって来たというもの。そこに3代目社長の父が通りがかり、仲間になった(笑)。父もつね吉というキャラクターで登場している。普段はあまり目立たない縫製資材だが、もっと注目してほしいという思いが込められている。ほかにも、「イスポ」展出展も香港に駐在していた社員の声で始まり、最初は3m四方のブースだったが、今では数倍規模のスペースになっている。国際展示会への出店やアウトドアリテーラーショーへの参加なども若手社員のアイデアで実現したものだ。

WWD:社員にとって働きがいがある企業とはどのような企業だと考えるか?

島田:成長できること。ただ自分の時間や体力をお金に替えるだけではなく、個々が仕事を通じて何か得るものがあることが働きがいにつながると考えている。弊社では、語学が堪能な新入社員は早ければ1年目から海外出張に行くこともある。また、総合職の独身寮だけでなく、地域採用の一般職にも住宅手当を保障して通勤しやすい環境を整えるようにしている。そういった良い環境にある企業は、結果として優秀な若手社員が集まってくるという手応えがある。