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完全実力主義。検定試験と現場社員の声を生かした評価制度で明確な指標を示す 「20代成長環境」1位/ジンズ【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

 「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員口コミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材。1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「20代成長環境」1位はジンズ。社員の平均年齢29歳の若い企業だ。完全実力主義を採用し、若者が活躍し成長できる環境づくりを積極的に進めている同社の仕組みについて、人事戦略本部の小川篤史・企画開発チームリーダーと小林真吾・事業統括リーダーに話を聞いた。

WWD:「20代成長環境」1位について、率直な感想は?

小川篤史・企画開発チームリーダー(以下、小川):現場の力は日々実感していたが、「20代成長環境」1位にランクインできたことはとてもうれしい。「ジンズの成長は人間力にある」と自負している。そこが一番の強みであり、採用を担当しているとそのような社風に魅力を感じて入社してくる社員が多いことも目の当たりにしている。だが、意図的に成長できる環境をつくり出せているかというと、まだ改善していくべき点はあると感じている。会社全体の成長には社員一人一人の成長が不可欠だと思うので、現状にとどまらずより良い社内の仕組みを作っていきたい。

小林真吾・事業統括リーダー(以下、小林):社員約3500人のうち200人が本社勤務で、残りは店舗勤務。新入社員は全員まず店舗に配属される。眼鏡に関する教育制度はかなり充実していて、弊社独自の「スキル検定」と呼ばれる検定制度で眼鏡の知識はもちろん、販売の技術も習得できる仕組みになっている。ランクが分かれていて、「エントリー」「ベーシック」「アドバンス」「エキスパート」「マイスター」までの5段階。「マイスター」は合格率が5%で全体のわずか1%しかいない狭き門だ。また業務形態上、来店者数の多い店舗では接客の回転率も重要で、お客さまの意図を汲み取った最適な提案ができる知識と技術力が伴った対応が素早くできることが問われる。そこが“街の眼鏡店”と異なる点かもしれない。求められる技術を研修と検定に分けて明確に示しているところが、「20代成長環境」の評価につながっているのかもしれない。

小川:この検定制度は、社員だけでなくパートやアルバイトにも適用される。検定のレベルが上がれば基礎時給も上がるので、それがモチベーションにつながっていると思う。もちろん目指す目標は個々に委ねているので強制ではない。

WWD:検定に合格するためにはどのくらいの時間を要するのか?

小川:店長になるには「スキル検定」で「エキスパート」の取得が必須。個人差はあるが、早ければ入社して3カ月くらいで「エントリー」を、1年半で「エキスパート」を取得し店長になる者もいる。平均は2年以上だ。検定自体は6年前にできたが、年々難易度は上がっていると思う。検定を作った当時は年間50〜70もの店舗が新規にオープンするなど、ビジネスが急速に拡大していた。チェーン店なので各店舗の店長の裁量に頼る部分が大きくバラつきがあり、昇進の基準を明確にする必要があった。手頃な価格の商品であっても、接客、笑顔、回転率、ブランド力など、競合に勝つためにどうすればいいか研究した。また、眼鏡は医療器具としての側面もあるので、丁寧に扱い信頼を得ることも大切な要素だ。

WWD:完全実力主義を採用しているが、具体的な評価制度は?

小川:2019年9月に店舗の人事制度を変えた。従業員満足度の調査で、現場から「評価基準が曖昧」「現場で頑張っているのに評価されにくい」という声があったためだ。そこで、それまで評価の目安としていた「グレード評価」を見直し、新たに「インセンティブ評価」と「コアバリュー評価」を実施することにした。「コアバリュー評価」では、「スキル検定」では測れない、ジンズが掲げるブランドのコアバリューを理解し体現できているか、さらにビジネスマンとしての行動が適切であるかを直属の上長がチェックする。“店舗で頑張っている人を評価する”ことを新しいポリシーとして設け、従業員が納得できる評価制度に作り直した。「インセンティブ評価」では“売り上げ利益”“お客さまの満足度”“従業員の満足度”の3つの視点で判断する。半期に一度の評価だが、売り上げとお客さまの満足度を達成するとインセンティブが毎月給与に反映される仕組みになっている。

また「グッジョブカード」を導入し、店の売り上げに貢献したスタッフを店舗スタッフ内で評価し合えるようにしている。このカードは正社員かアルバイトかに関係なく、個人間で自由に送り合えるもので、90%の店舗スタッフが使用している。店舗業務はホール、測定、加工と分業制で個人ノルマを設けることができないため、個人の評価におけるこまやかな評価体制を設定した。この「グッジョブカード」の枚数もインセンティブに反映されるが、実際のところスタッフの間では1枚あたりがいくらに換算されるかというよりも、個人の長所や感謝の気持ちを伝え合う文化として根付いているように思う。

WWD:昇進に関しては、「スキル検定」「インセンティブ評価」「コアバリュー評価」以外にも評価基準がある?

小川:「スキル検定」だけでは昇進の納得感が自他ともに得られづらかったため、19年9月に「昇進試験」を復活させた。「ブランドのコアバリュー理解・体現度」を面接で、店長よりも上位のものが確認・評価する試験だ。コアバリューの理解度を「実際に行動できているか」をすり合わせすることで、お互いの納得感を高めることが出来ている。知識があり普段の行動も伴っていて、周りも認める社員が店長になれるシステムを作る必要があった。

WWD:このようなこまやかな人事制度を整えるために、どのような点に留意したのか?

小川:今回の人事制度は、もともと店舗スタッフだった者が店に立つ人の目線で作った制度だというのは大きいかもしれない。また店舗で社員とパート、アルバイトのスタッフにアンケートや聞き込み調査も実施した。社風として、アルバイトの学生や家庭を持つパートタイムの方にはよく話を聞くようにしている。なぜなら彼らが消費者の目線に近く、またしがらみがないので率直な意見が出るケースが多いからだ。

WWD:最後に、社員にとって「働きがいのある」企業とは、どのような企業だと考えるか?

小林:利益だけを追うのではなく、ジンズがビジョンとして掲げている「すべての人の人生を豊かにする」という“Magnify Life”を実現し、顧客も従業員も満足した上で社会的に価値があることをできる会社だと思う。もちろん個人としては給与を重視する価値観もあるだろう。ただ、それだけで終わらない仕事ができることが働きがいに通じていくと考えている。低価格で良い品質のものを提供することで暮らしを変えていく。現在弊社はほかにもシェアオフィスなどの新業態にも着手している。“より良い社会に”という視点を常に持ち続けている会社が働きがいのある企業ではないだろうか。

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