「温故知新」「不易流行」。どちらも吉田カバン(吉田)を表すのに相応しい言葉だ。今年、会社創立から90周年を迎えた吉田は、長く日本でその技術を育んできた老舗工房の職人たちの技と、最先端の機能素材や機械縫製技術を融合させながらそのカバンを作っている。看板となる二大ブランド「ポーター(PORTER)」と「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」はそれぞれ60年、40年以上の歴史を持ち長年愛用する顧客を多数獲得しており、特に「ポーター」は“タンカー”を始めとした人気シリーズを数多くラインアップ。さらに4年前には第三のブランド「ピー・オー・ティー・アール(POTR)」も加わった。この堅実な成長はその実直さに支えられており、間違いなく吉田の魅力なのだが、果たしてそれだけだろうか。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月22日&29日合併号からの抜粋です)
「街のカバン屋さん」が世界を変える
昨年、“タンカー”の主素材であるナイロンを、東レと密かに共同開発していた100%植物由来の新ナイロンに切り替えるというニュースが舞い込んだ。一番の人気シリーズは素材を全面的に刷新すると、一部商品は価格が倍近く上昇した。吉田が本当にただの保守的な企業なら、実施できない芸当だ。だが唯一無二になることでカバン作りを未来につなぐ挑戦は、結果世の中に受け入れられた。
日本伝統のカバン職人たちと密接な関係を築き、最先端のデザイナーズブランドとコラボし、まだ見たことのないデザインと機能性を持つカバンを作る。自分たちは「街のカバン屋さん」だと口をそろえながら、世界各国に商品を販売する。この二面性はどこからきているのだろうか。それは矛盾なのだろうか。吉田の持つ歴史、職人たちとの関わり、協業をしてきたブランドの話、各部門に所属する社員たちの声、そして会社を牽引するトップの話から、その本当の姿を見いだしたい。吉田の哲学は「一針入魂」。90年続けたその姿勢をひも解く。
INTERVIEW:
要望に寄り添い素晴らしさを伝えることが役割
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