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「無印良品」3年後に売上高1兆円計画 清水社長「強気の出店」の勝算

良品計画は2028年8月期を最終年度とする3カ年計画で、営業収益1兆円、営業利益1000億円、営業利益率10%を新たに目標に掲げた。10日のオンライン決算会見に登壇した清水智社長は、「世界の成長に挑戦するという方向性は変わらない。一方で、全社の生産性を改善する取り組みを行っていく。28年8月期には営業利益率は10%を目指し、その後、12%まで収益性をさらに改善をしていく。日本、東アジアでは安定収益を継続し、欧米、東南アジアを次期収益けん引国としてこの3年間で成長させていきたい」と語った。

最大の成長エンジンは「出店」

3カ年計画を「稼ぐ」「削る」「生かす」の3つに分解すると「稼ぐ」の一番大きな成長のエンジンには出店を位置付ける。海外は28年に営業収益5000億円を見込む。日本は600坪の定型フォーマットだけでなく、 店舗サイズはエリアに応じて柔軟に対応していく方法にシフトする。中国大陸は出店だけではなく、現在こまめな小規模改修で既存店が成長していることを踏まえて、これを継続し、1店舗当たりの収益性も改善していく。 東アジアは韓国を中心に拡大フェーズに入る。 東南アジアは旗艦店によるブランドの認知度向上を図りながら、 既存店や新店の収益性の改善に力を入れていく。

「削る」では構造改革や原価改善、調達力向上などに取り組、事業全体でのコスト削減のために専門の委員会も立ち上げた。

「生かす」では28年以降の成長も考慮し、調達子会社MGSの拠点の拡大や、工場や産地由来の商品開発の機能を付与し、人員や拠点の拡充を図る。物流・ITでは攻めと守り、双方のインフラを構築するとともに、「何よりも人材に投資していく」。海外派遣を念頭に置いた本部での教育体制や、待遇改善による長期間安心安全に働ける環境を構築していく。

収益を生み出すESG

これまで掲げてきた「世界での成長に向けた8つの成長ドライバー」(出店拡大、日本のオペレーションの波及、商品開発体制の強化、OMO強化、マーケティング戦略、生産性改善/サプライチェーン改革、ITによる支援、本業としてのESG)については28年8月期に向けて取組みをアップデートしていく。

「出店拡大」では日本で行ってきた600坪の定型フォーマットは日本での構築がほぼ終了したため世界へ波及させる。各国の首都クラスの都市に旗艦店を出店する。まずは仏・パリ、タイ・バンコク、ベトナム・ホーチミンに出す。とくに欧米ではリストラが完了したため、旗艦店出店を開始し再成長軌道に転じる。26年秋冬をめどにパリではリボリ通り(コンコルド通りからマレ地区に通じる、ルーブル美術館なども面している目抜き通り)に600坪で出店する。「リブランディングを行い、ここを中心に主要都市に出店を再開していく」(清水社長)。一方、日本では次の段階として500円以下の商材を集めた「無印500」のような中小型店の出店形態を柔軟に拡大していく。

「商品開発体制の強化」では、ヘルス&ビューティー、衣服に続くコア商品を世界で創造することに注力する。生活雑貨のグローバルの品ぞろえを27年8月期までに80%とする計画をさらに遂行。加えて、海外での食品の構成比を現在の4%から7%に引き上げる。

「OMO強化」ではリアルとECの複数チャネルの在庫を一元化するとともに、メンバープログラムも強化。ECチャネルを再構築し世界でECを伸長させる。「ITによる支援」では日本で基幹システムの構築が完成する。海外でのローカルITの開発投資にも力を入れる。

「本業としてのESG」では、「無印の存在意義でもあり、数字だけのものではなく、実際の商売、本業として行っていくことが非常に重要だと考えている」と清水社長。25年3月には世界最大店舗をイオンモール橿原(奈良)に出店。「(RE:MUJIとして手がける)循環型の取り組みが大変成功した」。回収衣料をアップサイクルした「つながる服」シリーズのシャツやジャケットなども非常にヒットしているという。「こういった単なる取り組みだけではなく、しっかりと収益につながる本業としてのESGをさらに強化していきたい」と語る。

売り上げ、利益が過去最高更新

10日に発表した25年8月期連結決算は、営業収益、各段階利益が過去最高を更新した。売上高に当たる営業収益は7846億円(前期比18.6%増)、営業利益は738億円(同31.5%)となった。営業総利益率は生産体制内製化による原価低減や、海外事業の値下げ率改善により、0.5ポイント改善し51.4%。販管費率は国内の売上げ伸長などで0.4ポイント改善の41.9%で着地した。

売り上げは中国大陸、欧米を中心に海外事業が好調で、海外の営業収益は3144億円(同15.3%増)、営業利益は553億円(同21.2%)と引き続き国内の利益を海外が上回った。中国大陸の営業収益は1398億円(同18.3%増)だった。

国内の営業収益は4701億円(同20.9%増)、営業利益は521億円(同31.2%増)。出店と既存店の売り上げ伸長が寄与した。通期の既存店とECの合計売上高前年比は13.1%増となった。

期中は出店146店舗(うち国内71、海外75)、閉店39店舗(うち国内11、海外28)で、期末店舗数は107店舗増え1412店舗(うち国内683、海外729)となった。

グローバルでの衣服・雑貨の売上高は2852億円(同14.7%増)、生活雑貨3681億円(同21.6%増)、食品1046億円(同21.6%)といずれも躍進。中でも生活雑貨のヘルス&ビューティー部門は順調に推移し、国内だけで1000億円を突破。売上高構成比は2年前対比で5ポイント上昇し22%となった。スキンケアをグローバルでのコア商品と位置づけ、東アジア、東南アジアからグローバルに順次展開拡大したことも奏功。25年8月末時点で「発酵導入美容液」「敏感肌ケア」は9か国・地域に展開する。「各国で大変好調に推移し、計画をオーバーしている状況。これをテコにこのコア商品を世界に伝播していきたい」と意気込む。

26年8月期は営業収益8000億円(同9.0%増)、営業利益680億円(同21%増)を計画。営業収益、各段階利益は3期連続で過去最高を更新する見込み。国内事業の収益性強化に加え、海外事業では欧米の出店再開、東南アジア全域での出店の精査と継続を軸に成長を加速する。

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