ナイキ(NIKE)は9月11日、原宿の旗艦店を移転増床オープンする。2009年にオープンした表参道通り沿いの旗艦店を8月末に閉店していたが、その真隣に建て替えられた原宿クエストビルの1〜3階に、総面積1860平方メートルで出店。1階は注力カテゴリーのランニングにフォーカスし、米ポートランド本社のラボなどでエリートアスリート向けに提供していたランニングフォームの分析サービスの一部を店頭に導入した。「アスリートや競技をブランドの中心に取り戻す」という近年のブランド方針を象徴する店舗だ。
「原宿はグローバルで見ても重要な店舗。新しいフェーズを切り開く店として、商品だけでなくサービス、体験を含め革新的なものを提供していく」と、小林哲治ナイキ ジャパン ジェネラルマネージャー兼VPは話す。
走り方改善のワークアウトや
適したシューズを提案
1階入り口すぐは、ランニングシューズに絞った壁面陳列“フットウォール”だ。エリートランナー向けから初心者向けまで製品をラインアップしている。機能別のランニングシューズのフラッグシップ3モデル“ペガサス”“ボメロ”“ストラクチャー”と、“アルファフライ”“ヴェイパーフライ”などのレーシングシューズ、トレイルランニング用シューズをメンズ、ウィメンズ共に陳列。“ボメロ プラス”で原宿店限定カラー(2万2000円)も企画した。
ウォール裏が、ランニングフォーム分析サービス“NSRL Form”のための小空間になっている。NSRLは、ナイキスポーツ研究所(Nike Sport Research Lab)の頭文字。トレッドミルが中央に置かれ、壁面には6つのカメラ(iPhone)を設置。2分間の計測で体の150カ所のデータを捉え、横ぶれ、腰の沈み、内寄りの着地、上下動、上半身の傾き、膝下の振り出し、という6要素(前半3つが安定性の指標、後半3つが力の指標)と、ケイデンス(1分間あたりの歩数)、着地部位でフォームの特徴を捉える。それを元にナイキ独自の分析を行い、改善ポイントと、改善するのに有効なワークアウトプログラムをナイキのフィットネスアプリと連動して提案。最後に、フォームに適したシューズも数型推薦する。
人気のカスタマイズコーナーも
“NSRL Form”は24年11月に中国・上海の店舗に初導入し、原宿と同タイミングで英ロンドンの店舗にも導入。原宿が世界で3店舗目となる。1コマ15分の予約優先制で、連日11〜20時の計測を受け付けており無料。予約は公式サイトから。
1階はランニングシューズのほか、ランニングウエアや雑貨、ランステーションとしてのロッカーも設置。SNSの拡散などで年々人気が高まっているというカスタマイズコーナー“NIKE BY YOU”、アウトドア向けの「ナイキ ACG(NIKE ACG)」で構成する。
マネキンでスタイリング提案強化
2階はウィメンズとキッズ、3階はメンズ、「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」、バスケットカテゴリーをラインアップ。いずれもマネキンを移転前の店舗よりも増やし、シューズからライフスタイル用途やトレーニング用途のウエア、小物まで全身でのスタイリング提案を強化。各階に設けたフットウォールは、シューズをカテゴリー別に分かりやすく展示している。
キャサリン・ポー/ナイキスポーツ研究所シニアディレクター
「全てのランナーに提供できることは誇り」

「ナイキスポーツ研究所は1980年代に設立された。科学者、生体力学の専門家、エンジニア、デザイナーらさまざまな分野の担当者が1カ所に集まり、アスリートのパフォーマンスを高め、イノベーションにあふれたシューズやアパレルの開発を進めている。今回、原宿店に導入するランニングフォーム分析サービスの“NSRL Form”は、エリートアスリート向けに提供してきたサービスを一般アスリート(消費者)にも提供するものだ」
「共同創業者のビル・バウワーマンが手作業で陸上用スパイクを作っていた時代から、われわれは常にアスリートの声を聞き、限界を超えることを追求し、可能性を探ってきた。マラソンで人類初の2時間切りを目指したプロジェクト“ブレーキング2”、女子1マイル走で初の4分切りを目指した“ブレーキング4”も、共にトップアスリートと共に行った挑戦だった。このようにエリートアスリートに提供してきたサービスを、“NSRL Form”によってあらゆるレベルのランナーに提供できることを誇りに思う」
「“NSRL Form”は、横ぶれ、腰の沈み、内寄りの着地、上下動、上半身の傾き、膝下の振り出し、という6要素を元にランニングデータを分析し、ナイキのアルゴリズムを使い、そのランナーが意識すべきことを伝える。個人に合ったアドバイスができ、シューズを勧めるだけでなく、本人が自身の動きを理解することができる。分析結果は動画を除いて、その人の登録Eメールにも送付する」
「“NSRL Form”は他社が提供している分析サービスとどう違うのかと聞かれることも多いが、他のサービスは足や足首にフォーカスしたものがほとんど。われわれは体全体の動きのデータを取り、分析する。そして、(個人のコンサルタントが提供する分析などに比べて)定点カメラによるデータ採取、われわれが長年研究・蓄積してきたアルゴリズムに基づく分析ゆえ、客観性がある。さらに、店頭でのサービス導入により、規模の拡大が可能だ。“NSRL Form”は既に約1万人に体験してもらい、24年11月に導入した上海の店舗でも既に多くの人に試していただいている。そのデータも蓄積している。ランニングが軸となるが、今後は他のスポーツカテゴリーにおいても、このようなサービスを提供したいと考えている」