
神戸は中心地のすぐ近くに海と山が共存するユニークな都市です。大丸神戸店のフロアガイドや案内板には「海側」「山側」の表示があります。東西南北ではなく、神戸港方面の海側(南)と六甲山地方面の山側(北)。神戸っ子には海側・山側の感覚が三半規管に刷り込まれていて、道案内でも「交差点を山側に少し進んだところ」「海側に曲がるか、山側に曲がるか」なんて会話が当たり前のようです。
三井不動産は、神戸市の西部にある垂水区の海沿いに「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」を11月26日に開業しました。1999年開業の施設を2023年1月に閉めて、全面的に建て替えたものです。面積や店舗数を拡大するとともに、ラグーン(人工海水池)を整備し、水上ではカヤックなどのアクティビティー、ビーチではバーベキューやビーチバレーが楽しめます。淡路島や瀬戸内の観光ルートの動線にあることからリゾート型モールを標榜しています。
私も内覧会を取材しました。とても風光明媚な場所です。瀬戸内海に面しており、さわやかな海風が心地よい。夕刻になると、目の前の淡路島と明石海峡大橋が夕焼けで赤く染まる風景をテラスから眺められます。
マリンピア神戸が海側のアウトレットモールだとするならば、山側のアウトレットモールが北区にある三菱地所・サイモンの「神戸三田プレミアム・アウトレット」(2007年開業)です。六甲山地の北部ののどかな田園地帯であり、ベッドタウンとしての顔を持つエリアです。有馬温泉やゴルフ場のついでに立ち寄る人もいるようですね。
海側のマリンピア神戸が店舗面積3.2万平方メートルに約145店舗で売上高270億円(当面の目標)であるのに対し、山側の神戸三田が店舗面積4.2万平方メートルに約210店舗で売上高674億円(24年3月期実績)。規模では神戸三田の圧勝です。
神戸三田は関西で唯一、「グッチ(GUCCI)」「プラダ(PRADA)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ロエベ(LOEWE)」といったラグジュアリーブランドを集積するアウトレットモールのため、客単価が高く、売り上げ規模は大きくなります。それに比べるとマリンピア神戸は、ファッションに関してはカジュアルな顔ぶれです。売り上げ規模よりも、滞在型の楽しさを訴求する方針のようです。阪神エリアの商圏の人たちは、対照的な海側と山側のアウトレットモールを使い分けていくことになるでしょう。
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