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コペンハーゲン・ファッション・ウイークの注目2ブランド 「セシリエ バーンゼン」と「ホルツヴァイラー」

 1月29~31日にデンマークの首都でコペンハーゲン・ファッション・ウイーク(以下、CFW)が開催された。3日間で合計31ブランドがショーやプレゼンテーションを催し、2019-20年秋冬コレクションを発表した。昨年11月にCFW最高経営責任者(CEO)にセシリエ・ソルスマルク(Cecilie Thorsmark)を迎えてから初めてのファッション・ウイークだ。筆者にとっては1年ぶり、2度目の取材となった今季、コレクションの全体的な傾向は、装飾が増し、色彩もカラフルに、よりフェミニンさが増えたイメージだ。世界に率先してサステイナビリティーに取り組む地とあって、地球や自然をテーマにしたブランドも多数。今回はジャーナリスト、バイヤー、インフルエンサーから高い評価を得た2つのブランドを紹介する。

CECILIE BAHNSEN

 昨年に続いて、プレスから支持されたのは「セシリエ バーンゼン(CECILIE BAHNSEN)」だ。ショー会場に選んだのは、工場地帯にある、かつて倉庫として使われていたインダストリアルな雰囲気の建物。今季もオーガンジーやレースといったエアリーな素材を用いて、彫刻的なラインを描くドレスがコレクションの要となる。しかし、少女のような無垢な可愛さを表現していたこれまでとは違い、毒気のあるバッドガールの一面が見え隠れした。バーンゼンはコレクションについて「自分自身の“闇”の部分に焦点を当ててみようと思った。着想源となったのは、アメリカ人フォトグラファーのウィリアム・エグルストン(William Eggleston)の写真と、映画監督デイヴィッド・リンチ(David Lynch)の謎めいた世界観」と語った。

 ルック前半は黒で統一されていた。シアーな素材のドレスに花の刺しゅうや細かなレースの装飾、パッチワークなど、繊細な手仕事の技が際立つ内容だ。ドレスの膨らみを抑えるかのようにハンドニットのタイトなトップスを重ねたり、ガーリッシュに対抗するボーイッシュなハーフパンツを合わせたりと、さまざまな要素を組み合わせる新たな試みが見られた。「一人の少女が、実験的につなげたり離したりしながら、自身のアイデンティティーに大人の部分を模索するイメージが頭の中にあった。エグルストンの写真に写っていた彼の姪の姿がそのイメージにぴったりだった。彼女はとても若そうだが同時にとても賢くも見えた、まるで全ての秘密を知り尽くしているかのように。少女から感じ取った“無知と経験の狭間”を表現することを求めた」とバーンゼンは説明した。米雑誌「オフィス マガジン(Office Magazine)」の編集者ルイーズ・ボーチャーズ(Louise Borchers)は「可愛さと不気味さと職人技が同居したコレクション。成熟しきらない曖昧な部分やダークな側面って人間いくつになっても持っているものだがその割合は人によって違うから、着る人によって洋服の見え方が変わりそうだと思った」と感想を述べた。インフルエンサーのペルニーレ・タイスバック(Pernille Teisbaek)は「彼女の洋服は後ろ姿がドキッとするほどかわいい。デンマークを代表する才能あるデザイナーの一人」とコメントした。

HOLZWEILER

 既に全世界約200店舗の取引先を持つ、ノルウェーブランドの「ホルツヴァイラー(HOLZWEILER)」は今季もCFWに参加した。同ブランドは06年にスザンヌ・ホルツヴァイラー(Susanne Holzweiler)とアンドレアス・ホルツヴァイラー(Andreas Holzweiler)姉弟が、ノルウェーで小規模にオリジナルスカーフを販売したところから始まる。カシミヤ、シルク、ウールをブレンドした上質な天然素材を使ったスカーフが口コミで評判を呼び、12年に正式にブランドを立ち上げホールセールを開始し、14年にプレタポルテをローンチさせた。現在日本では、高島屋、伊勢丹、トゥモローランドなどで取り扱われている。

 スカンジナビア諸国発のブランドの多くがそうであるように、「ホルツヴァイラー」もサステイナビリティーを理念に掲げるブランドだ。商品に使用されるウールの60%はリサイクルウールで、廃棄物となるカシミヤのアップサイクルにも力を入れている。約15万枚のスカーフを全世界へ出荷する際に使用する包装紙は、再生可能資材だ。「サステイナビリティ・マネジャーという役職を設け、私たちが扱う全ての素材と生産過程が可能な限り環境への悪影響が少なく、サステイナブルであることを目指している」とスザンヌは説明した。ノルウェーで開催されるオスロ・ファッション・ウィークではなくコペンハーゲンに参加する理由については「スカンジナビアで最も規模が大きいコペンハーゲンの方が、世界的な発信が強いと考えているから。合同展示会コペンハーゲン・インターナショナル・ファッション・フェア(Copenhagen International Fashion Fair)には多くのバイヤーが訪れ、影響力がある」と答えた。

 今季はテクノロジーと自然の共存をテーマにし、ニットでグラフィカルな柄を描いたり、リサイクルによるPVC素材のパンツなどを製作した。カーゴパンツやジャンプスーツなど、ストリートの要素も取り入れ、基盤となる温かみのある上質な天然繊維とあいまって現代風のフォークロアに仕上げて見せた。コペンハーゲンのセレクトショップ「ストーム(Storm)」のアシスタント・バイヤー、アントン・ストーム(Anton Storm)は「商品ラインアップや価格レンジが広いため顧客にさまざまな提案ができる。老若男女を問わず、継続的に人気がある」と語っていた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける