ファッション

コペンハーゲンで高評価 SNSで知名度を上げた「ガンニ」と昨年のLVMHファイナリスト「セシリエ バーンゼン」

 コペンハーゲン・ファッション・ウィークは、1月30日〜2月1日の3日間で29ブランドがショーやプレゼンテーションを行った。北欧のデザインといえば装飾は少なくミニマルで、控えめなラインと力強い色彩が特徴。実用性を重要視しながらも、ユーモアのある遊び心が利いたアイテムが多く見られる。フィンランドの「マリメッコ(MARIMEKKO)」、スウェーデンの「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」のような世界的ファッションブランドはデンマークから誕生するだろうか。その可能性を秘めているのは、SNSマーケティングで知名度を上げた「ガンニ」と、ジャーナリストからの評価が高い「セシリエ バーンゼン」だろう。

GANNI

 「ガンニ」は、2000年にカシミヤ製品を扱う店としてオープンし、その後09年にニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)とディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)夫妻がコンテンポラリーブランドとして再スタートした。当初からSNSマーケティングに力を入れており、拡散力のある女性たちがリアルに着用している姿を浸透させたいとの思いから、プライベートで親しくしているインフルエンサーに洋服を送り続け、SNSに載せるか否かは彼女たちに委ねていたという。ニコライは「15年にヘレナ・クリステンセン(Helena Christensen)が友人のケイト・ボスワース(Kate Bosworth)と共に『ガンニ』を着用した写真にハッシュタグ(#GanniGrils)を付けて投稿した写真が転機だった」とウェブメディアの「ビジネス・オブ・ファッション(Business Of Fashion)」の取材で語っている。現在「ガンニ」は、世界各国のセレクトショップや百貨店約400店舗に卸している。ディッテは「北欧スタイルというと、ミニマルでユニセックスと思われがちだけど、それだけじゃないの。フェミニンやエレガントといった要素もミックスしながら、気取らずにファッションを楽しむ。優美なドレスを着ていても足元はスニーカーで、自転車に乗って街中を回るのがコペンハーゲン・ガールよ」と、「ガンニ」が考えるリアルなコペンハーゲンの女性像を語った。

 ショーはコペンハーゲンの北に位置する工場地帯、リフシャレルンで開催した。足元をウエスタンブーツもしくはスノーブーツでそろえ、オーガンジーのガーリーなドレスや、作業着のようなジャンプスーツ、美しく揺れるシルクのドレスがランウエイを飾った。日常に取り入れやすいデザインと手頃な価格設定、SNSでの拡散力もある、バイヤーにとっても魅力的なブランドだ。会場には、ショーのためだけにコペンハーゲンに日帰りで来たという、インフルエンサーにもいたほどだ。「アクネ ストゥディオズ」のデニムのように、ブランドのシグニチャーとなるヒットアイテムが誕生すれば、さらなる飛躍も期待できる。

CECILIE BAHNSEN

 もう1つの注目ブランド、「セシリエ バーンゼン(CECILIE BAHNSEN)」は、シーズンごとにジャーナリストからの評価が高まっている。デザイナーのセシリエ・バーンゼンはデンマーク出身でデンマーク王立芸術アカデミー・デザイン学校(Danish Design School)を卒業し、イギリスの王立美術大学(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート=RCA)でウィメンズデザインを学んだ。「アーデム(ERDEM)」「ジョン ガリアーノ(JOHN GALLIANO)」「ディオール(DIOR)」で経験を積んだ後、15年に自身のブランドを立ち上げ、多くの賞を受賞した。17年にはLVMHファイナリストに選ばれ、一躍注目を集めた。デザインは、オーガンジーやレースといったエアリーな素材を用いて、彫刻的なラインを描くドレスがメーンだ。

 ショー会場となったギャラリー・ニコライ・ウォールナー(Galleri Nicolai Wallner)には、現代美術家のダン・グラハム(Dan Graham)のガラス彫刻が展示され、その周りをモデルが歩くという演出だった。シアーな素材の彫刻的なドレスを軸に、キルティングやハンドニット、刺しゅうなど伝統的なテクニックを取り入れた。フワフワと丸みを帯びたドレスはガーリーだが、背中を大きく露出させたり、ボーイッシュなショーツやTシャツ、ソックスとスニーカーを組み合わせることで、女性の色気とマスキュリンを組み合わせた。デンマーク在住のファッションジャーナリスト、マレーネ・マリング(Malene Malling)は「デンマークのファッションシーンで卓越した才能を発揮した」と評価し、北欧のファッション誌「コスチューム マガジン(COSTUME MAGAZINE)」のリッケ・アントルップ(Rikke Amtrup)編集長は「崇高な彫刻美に感動した」と語った。

 悪天候の3日間だったが、秘める才能を見せたデザイナーに出会えたことは、コペンハーゲン・ファッション・ウィークにおける一番の収穫だ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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