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特集 パリ・コレクション2026年春夏 第2回 / 全6回

「シャネル」「ディオール」「バレンシアガ」「ロエベ」「マルジェラ」……新デザイナーのデビューコレクション総まとめ

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「シャネル」「ディオール」「バレンシアガ」「ロエベ」「マルジェラ」……新デザイナーのデビューコレクション総まとめ

2026年春夏パリ・ファッション・ウイーク最大のニュースは、9組のデザイナーの本格デビューだ。ラグジュアリーの停滞に対するカンフル剤としての働きを期待された彼らは、そのあり方を再定義。総じて創業デザイナーや先達のクリエイションに敬意を払いつつ、自分らしさや今の時代感を注入し、おおむねフレッシュに生まれ変わった。デザイナー交代劇はSNSも沸かせている。日本でのビジネスを営む8つのブランドの新たな一歩を総括する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月20日号からの抜粋です)

バレンシアガ(BALENCIAGA)

DESIGNER/ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)

デムナ由来の「破壊」を継承しつつ
「はさみの魔術師」が再来

前任のデムナ(Demna)は、創業デザイナーのアバンギャルドな革新性に着目し、特異なシルエットを現代のストリートウエアで表現してきた。ピエールパオロは、その精神性は継承しつつ、スタイルでは創業デザイナーに近いシルエット重視のミニマリズムに回帰。ボリューム感は前職の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」にも通じているが、「バレンシアガ」ではハリがありつつも空中に浮遊し続けるかのように形状を維持するガザル素材を多用し、パターンとカッティングに傾倒。縫製は最小限にとどめ、「はさみの魔術師」と呼ばれたクリストバルの再来を思わせた。一方、正直フォーマルやドレスのルックには不釣り合いなサングラス、クロップド丈のボンバーズなどでデムナへの敬意も表現する。

INTERVIEW:
現実と関わり続けるため、
デムナのようにクールでいたい

ピエールパオロ・ピッチョーリ/「バレンシアガ」クリエイティブ・ディレクター

ピエールパオロ・ピッチョーリ/「バレンシアガ」クリエイティブ・ディレクター

PROFILE:「フェンディ(FENDI)」で10年間働いた後、「ヴァレンティノ」に25年間在籍。2008年から16年までは、「フェンディ」でも共に働き、今後は同ブランドでチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)と共同で「ヴァレンティノ」のクリエイティブ・ディレクターを担い、その後は単独で24年3月まで同職を務めていた

これまでの「バレンシアガ」を素晴らしいと思っている。過去を否定するのは、ブランドにとっても良いことではない。継続性と変容こそブランドをより豊かにして、新たな側面や角度、視点を提示する。

クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)の洋服については、遠くからでも一目瞭然なボリューム感やプロポーションなどで誰にも知られている。彼の洋服は全て、身体という概念に基づいている。身体から始まり、時には身体から大きく離れながらも、身体は常にその中心にある。しかし間近で見ると、彼にどれほど多くの人々がインスピレーションを得てきたのかが本当によく分かる。建築的な視点は後年、今なお多くのデザイナーに影響を与えているだろう。そこでクリストバルが使用したシルクガザルをより硬くしつつも余分な重量を加えずに織り上げ、建築的なシルエットを生み出した。軽さと構造の間を追求しつつも緊張感は排して、現代の日常生活によりふさわしいコットンとウールのガザルを同じようなアプローチで作成した。構造と軽さ、シルエットと空気感というシンプルなコンセプトにたどり着くには時間を要したが、その後は直感を信じた。

デムナは、クリストバルやニコラ(・ジェスキエール〈Nicolas Ghesquiere〉。かつて「バレンシアガ」のクリエイティブ・ディレクターを務めていた)のように破壊的な存在だ。破壊は「バレンシアガ」のDNAの一部であり、私は継続することに魅力を感じている。(自身が現職に就任してから約1カ月はデムナと)チーム、空間を共有することで、尊敬や寛容、分かち合いという概念を学んだ。デムナは「バレンシアガ」をストリートウエアの世界に持ち込んだ。一方で私は、文化としてのクチュールという概念を用いて、Tシャツやジーンズのように毎日着られるアイテムを制作したい。クチュールについて考えると美しさばかりを優先してしまい、現実やクールさを忘れてしまうことがある。現実と深く関わるため、クールさは忘れずにありたいと思う。

シャネル(CHANEL)

DESIGNER/マチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)

ツイードもカメリアも大変身
ローウエストでフレッシュに

マチュー・ブレイジーによる新生「シャネル」は、とにかくフレッシュだ。メゾンのアイデンティティーやデザインコードを斬新に解釈し、「シャネル」が「シャネル」だけの世界から、以後はファッション自体とより自然かつ大胆に交わっていく期待が高まる。例えばカメリアは、細く切り裂いたファブリックや糸を束ねるなどして新たな形に。「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」時代には“素材の魔術師”と呼ばれたマチューらしく、ツイードはメタリックヤーンを編み込んだり、裾に同柄のビーズをグラデーションするようあしらったり、ツイードならではのチェックモチーフをオーガンジーの上にプリントしたり。さまざまな手法でツイード自体の概念を拡張することで、表現の幅を広げている。長年のファンは少し驚いているのかもしれないローウエストのシルエットも、ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)が1920年代に女性を解放したことを考えると納得だろう。彼女がもたらしたセパレートという概念をフレッシュに表現した証だ。

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