毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月20日号からの抜粋です)
村上:2026年春夏のパリコレは、9ブランドが新デザイナーによる初のメーン・コレクションを披露。大豊作なシーズンで、ページ数も多くなりました。
藪野:デザイナーの個性とメゾンコードが融合していて、フレッシュなんだけれど、そのブランドらしさがある、良いコレクションが多かったですね。どのブランドがベストでしたか?
村上:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」です。はさみの魔術師と言われ、カッティングで美しいシルエットを生み出してきたクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)のアプローチに戻ったという印象を受けました。デムナ(Demna)はアバンギャルドなシルエットをストリートの世界で表現していましたが、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は最小限の縫製でどれだけ美しく仕上げられるかに立ち返っていて。ピエールパオロの才能を改めて思い知りました。
藪野:僕は「シャネル(CHANEL)」のショーを、会場にいるゲストのインスタライブで見たのですが、映像を通しても心を揺さぶられる、フレッシュかつ大胆なコレクションでした。厳格なメゾンコードがあるのに、かなりマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)らしさが出ていて。正直ここまで変わると思っていませんでした。セットも壮大。会場で見たかったです。
村上:新しい時代の到来を感じましたよね。パリの街でも自主的なウオッチパーティーが開かれたり、SNSでも盛り上がっていたりで、「こんなに多くの人がコレクションを見てくれるんだ!」という印象でした。六本木で開催中の展覧会も、めちゃくちゃ混んでいるし、みんなおしゃれしてきているし、「シャネル(CHANEL)」は“レベチ”だと改めて実感しました。
「ドリス」を受け継いだジュリアンに今後も期待
藪野:2シーズン目のブランドも良いコレクションが多かったです。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」はジュリアン・クロスナー(Julian Klausner)に代わって2回目のウィメンズですが、彼ならではの新鮮さもありながら「ドリス」らしさがしっかり受け継がれていて、安心感のある仕上がり。社会は暗いニュースが多いですが、今季は喜びや高揚感がいろんなブランドから感じられて、「やっぱりファッションっていいな」と思うシーズンでした。