毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月1日号からの抜粋です)
村上:最近いろんな方と話をしていると、「『ポレーヌ(POLENE)』みたいなブランド、知りませんか?」って聞かれるんです(笑)。百貨店やセレクトショップの関係者が多いかな。“高見え”する面構え、表参道店の非日常的な空間やマンツーマンに近い接客にもかかわらず、アラウンド10万円という価格に衝撃を受け、そして「納得」という印象に変化している様子。ラグジュアリーブランドの停滞を目の当たりにしているからこそ、こうしたブランド群に商機を見いだそうとしているのかな?と思って、特集を企画しました。
本橋:僕は今回「ロンハーマン(RON HERMAN)」や「ビオトープ(BIOTOP)」といった、ハイデザイナーズやラグジュアリーブランドを扱う高感度セレクトの取材を担当しましたが、やはり最近気になるのは「トーテム(TOTEME)」や「ローエ(ROHE)」「ガーメント(GARMENT)」といった北欧系ブランドみたいです。バイヤーたちは、SNSなどを通じてブランドの出自を問わず幅広く情報収集しているよう。取材では、コロンビアの「ペバポンボ」や韓国の「オル」や「バンブー ロジャー クウォング」といった、聞き慣れないブランド名が次々に出てきて面白かったです。
アッパーミドルの日常に寄り添う
村上:SNSが当たり前の時代にデビューしたブランドが多いので、オウンドメディアでの発信やインフルエンサーマーケティングが巧み、少なくともこだわっているのも、今回取り上げたブランドの共通点です。
本橋:もっとも新しいブランドは本格的な買い付けにまで至っていないことも多く、現状は“様子見”といった印象。ただ来春夏から秋冬にかけて、ラインアップが一気に広がっていきそうです。
村上:韓国でもデザイナー系、欧州でも「アミ パリス(AMI PARIS)」や「ルメール(LEMAIRE)」など、私たちの関心も幅広くなっています。一方、ジョナサン・アンダーソン(JONATHAN ANDERSON)の「ディオール(DIOR)」メンズが示唆するように、ラグジュアリーの世界も従来とは違う価値観を提唱し始めそうです。アッパーミドルの日常に寄り添うべく、ワンランク上の価格帯に挑戦する日本勢の動向も気になります。今、新アフォーダブル・ラグジュアリー・ブランドが得意としている価格帯のプレーヤーが充実しそうな気配です。