サステナビリティ

ロンハーマンが古着の買取サービス始動 「サステナ戦略は第2フェーズに」

PROFILE: 根岸由香里/リトルリーグ カンパニーオフィサー兼ロンハーマン事業部 事業部長兼ウィメンズ・ディレクター

根岸由香里/リトルリーグ カンパニーオフィサー兼ロンハーマン事業部 事業部長兼ウィメンズ・ディレクター
PROFILE: (ねぎし・ゆかり)2008年サザビーリーグ入社。ロンハーマンの日本上陸・立ち上げ時からバイイングを担当。ウィメンズ・クリエイティブ・ディレクター兼バイヤーを経て16年4月事業部長に就任。現在もウィメンズのディレクションを行いながら、ロンハーマン、RHC ロンハーマン全28店舗を指揮する PHOTO:KAZUO YOSHIDA

ロンハーマン(RON HERMAN)は11月14日から、古着店「ラグタグ(RAGTAG)」を運営するティンパンアレイと協業し、衣類の買取サービス「Special Thanks Ron Herman」を千駄ヶ谷店限定でスタートする。対象は衣料品のほか、バッグ、靴、アクセサリーなども受け付ける。ロンハーマン店舗以外で購入した商品も持ち込み可能。

千駄ヶ谷店内に専用スペースを設け、金〜日の週末は、ティンパンアレイから派遣された専門バイヤーが常駐し、その場で査定および買い取りを行う。そのほかの曜日は受付、預かりのみで、後日査定結果を確認して成約となる。専用フォームから来店予約が可能で、予約者を優先して案内する。予約なしでも利用できる。買い取った商品は、全国の「ラグタグ」店舗で再販され、買取金額の一部をロンハーマンが受け取る仕組みだ。

ロンハーマンは2021年にサステナビリティ・ビジョンを策定し、いち早く取り組みを進めてきた。根岸由香里ロンハーマン事業部長兼ウィメンズ・ディレクターは「この5年で社内のモノ作りに向き合う姿勢は着実に変化した」と語る。一方で、循環型経済への移行を見据えると、売った後の商品に「捨てない選択肢」を作ることも欠かせない。今回の買い取り事業には、そんな次のステップへの意図が込められている。根岸ディレクターに狙いを聞いた。

お客さまに新しい経験を提供したい

WWD:買取サービス始動の背景は?

根岸由香里ロンハーマン事業部長兼ウィメンズ・ディレクター(以下、根岸):お客さまからは「着なくなった服を売りにいくのが正直面倒で、年末に捨てちゃってるのよね」「古着屋に売りに行くハードルが高くて」と言ったお困りの声を多くもらっていた。社内でもリユース事業の構想はこれまで何度も出ていたが、この分野は最適なプロとの協業が不可欠。私たちが目指したい理想の形を実現するまでたくさんの方にお会いし、紆余曲折を経てやっと納得がいくスタートが切れる。

WWD:ロンハーマンの“理想のリユースの形”とは?

根岸:私たちが目指すのは、単なるモノの売買ではなく、“経験”の提供だ。リユース事業で利益を上げていくこと以上に、リユースという新しい選択肢や、お客さまの感覚をスイッチする機会を提供することに意味がある。実は今年の夏、別のパートナー企業と顧客さまを対象に実証実験を行ったが、自分たちの大事にしたい部分が噛み合わなかった。

WWD:というと?

根岸:私たちと同じファッションへの価値観を共有できるかどうかが譲れないポイントだった。大量に仕入れて安く売ることに重きを置くリセール業者もいる中で、今回組んだティンパンアレイは、「ファッションを愛し、1点1点を大事にしたい」という思いが合致した。例えば、買い取りの場で「この年代のアイテム、かっこいいですよね」とか「とても状態いいですね。大事に着てらっしゃったんですね」と言った些細なコミュニケーションがあるかどうかで、お客さまの体験の質は大きく変わる。買い取った後も丁寧なケアを施してなるべく高値で販売してくださる。そうした細部にファッションへの愛を感じた。当社で扱う商品の中には、あっという間に完売したような人気の別注商品でも、一般的なリユース市場でわかりやすく高値が付くものばかりではない。そうしたアイテムに対しても知識のある査定士が在籍しているのも魅力だった。

WWD:再販は行わず、買い取りに絞った理由は?

根岸:再販するにも、現段階ではお客さまの感性に訴える圧倒的な方法にはならないだろうと思った。ティンパンアレイでは、商品を出すタイミングや販売店舗の選定に対しても強いこだわりを持っているし、当社とは異なるお客さまにアプローチできる。まずは餅は餅屋。進化させられるタイミングがきたら、と思っている。

WWD:サステナビリティ・ビジョンを策定してから5年が経過したが、具体的にどんな成果が?

根岸:一番の成果は、社員が自分たちの言葉でサステナビリティを語れるようになったこと。最初は「変わらなければ」という責任感が先行して苦しい時期もあった。でも今は、社員それぞれが自分ならではの答えを導き出せるようになった。結果、トップダウンではなく、ボトムアップで現場から「こんな方法に挑戦したい」といったアイデアが出るようになった。

中でも、モノ作りに向き合う姿勢は大きく変わった。単にリサイクルだから良い、ではなくて、品質や耐久性を含めて本当に長く愛用してもらえる、私たちが考えるサステナビリティを実現できるかどうかを自分たちの基準で判断している。「自分はこの分野に興味があるから」と、新しい素材を果敢に提案してくれる社員もいる。

バイイングでも、これまでの質や値段といった部分に加えて、どういったポリシーでどう作られているのかをブランドと深く会話するようになった。完璧を目指すよりもとにかく動いて形にすることをこれからも続けていきたい。今はまさに、サステナビリティ・ビジョンの第二フェーズに向けて動き出したところだ。

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