PROFILE: 須田千尋/CHIHIRO SUDA Inc.代表

須田千尋CHIHIRO SUDA Inc.代表は、ジュエリーブランドの「ミオハルタカ(MIO HARUTAKA)」をはじめ、ラグジュアリー分野を中心に幅広くPR活動を行っている。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」で広報をしていたときに目にしたオークチュールの素晴らしさを伝えたいと独立。自身でエージェンシーを立ち上げて、日本人向けにパリ・オートクチュール・コレクションへのアテンド業務を始めた。須田代表は、「当時、日本人顧客がいないのに疑問を持ったのと同時に、クチュールは継承すべき文化的価値があるもので、伝えるべきだと思った」と話す。今でこそ、日本でもクチュールビジネスは重要だが、当時日本人顧客はほぼ皆無だった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年1月13日号からの抜粋です)
お金では買えない
究極の体験がビジネスに
もちろん、クチュールのショーを見ても、ショールームでフィッティングしても、オーダーしないで帰国することはできる。でも「一回買ったら、抜けられなくなる。そういうもの」らしく、須田代表も無理強いはしない。「ホスピタリティー=ビジネスではない。究極のラグジュアリー体験を提供するのがモットー。直接クチュールのチームと会話をしながらのショッピング体験は、お金では買えない貴重なものだ」。顧客のほとんどが、須田代表がコーディネートしたツアーを体験すると「夢のような1週間だった」と言うそう。その特別な体験と記憶が、ビジネスに結びついている。
今は誰でも、インターネットで多くの情報を入手できるし、欲しいものを探せる時代。須田代表が大切にしているのは、顧客との対等でパーソナルな関係性だ。「対会社だと数字が全てのビジネスになりがち。富裕層を相手にする際は、より個と個の関係性が重要だ。顧客と対等の立場で、どれだけメゾンやモノの価値などを伝えられるかが大切。それが顧客へのインスピレーションになり、潜在的な需要を引き出すきっかけになる」。また多くのクチュールメゾンは、目や髪、肌の色を見ながら、時には「似合わない」とアドバイスするという。これもまた対等でパーソナルな関係だろう。
須田代表がファッション以外に注目しているのがアートや食などだ。彼女は国内外の写真作品を展示する「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」をはじめ、昨年上陸したニューヨーク発アートギャラリー「ペース ギャラリー(PACE GALLERY)」やフランス発ギャラリー「ペロタン(PERROTIN)」、ミシュラン3つ星フレンチ「SESANNE(セザン)」などの広報を手掛けている。「モノの価値の差別化は難しい。単なる物質的な価値ではなく、より社会や時代に合うモノやコト、その素晴らしさを伝えていくべきだ」。