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連載 小島健輔リポート

コロナ後の損益構造確立へ 適正家賃への店舗資産入れ替えを急げ【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見板であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナ禍から平時の生活に戻り、ファッションをはじめとした消費は回復しているように見える。ただ、コロナの前に山積していた問題が解決したわけではない。アパレル小売業にとって重要な家賃負担について考えてみよう。

コロナが明けて店舗販売が活況を取り戻しているが、アパレル店舗の売り上げは一部の都心施設を除き、未だ2019年を大きく下回っている。最低保証賃料の一時棚上げ・切り下げなどコロナ禍の救済措置も終わって賃料負担がモロに伸し掛かる中、出店立地と店舗費負担の構図を見直すべきだろう。

明け方が一番危ない

3年以上も続いたコロナ禍がようやく明けて人出が戻り、インバウンドも復活した都心の百貨店などでは景気の良い話が飛び交い、百貨店やアパレルの株価も急騰するなど、浮き足立った世情になっているが、その一方で円安とインフレ、人手不足と賃上げが損益を圧迫し、助成金収入も途絶えて最低保証賃料のハードルも元に戻れば、売り上げの回復が鈍いアパレルは追い詰められてしまう。倒産も不景気のどん底より景気の浮上期に集中するから、むしろこれからが危ない。

コロナ禍の3年間で固定費を切り詰め、不可逆的に変貌するマーケットに対応してマーチャンダイジングもサプライも販売体制も組織も再構築した企業はともかく、固定費の抑制もマーケット対応も中途半端なままコロナ前の世界に戻るのを待っていたような企業は雪解けの雪崩に飲み込まれてしまう。コロナが明けてもコロナ前にはもう戻らないし、コロナ下の非常時体制もアフターコロナの新世界には対応できない。当然過ぎる認識だが、対応できている企業は限られる。

コロナ明け5月の百貨店売上回復が華々しく報道されたが、全国百貨店総額は19年の95.1%まで戻しても衣料品は82.9%にとどまり、回復著しい東京地区も総額は98.4%まで戻しても衣料品は85.1%にとどまった。6月も全国百貨店総額は19年比94.9%、衣料品は同83.2%、東京地区も総額98.3%、衣料品85.8%と5月から横ばいだった。好調なのは特選雑貨など身の回り品であって、アパレルの回復は鈍い。

上場アパレル各社の6月も、既存店売上高が19年を超えたのはワークマン(126.4%)、しまむら(122.9%)、西松屋チェーン(118.0%)、ハニーズ(115.7%)のみで、アダストリアこそ97.9%と水面に迫ったがユニクロは88.5%、ユナイテッドアローズは85.3%にとどまり、TSIは77.0%、バロックジャパンは75.9%、良品計画(無印良品)の衣料・雑貨は75.3%、ライトオンは66.8%に終わっている。各社1割前後の単価アップ(値上げ)が押し上げてもこの水準だから、客数は回復どころか減少しているチェーンが大半だ。

賃料と売上対比負担率の水準

最低保証賃料のハードルが元に戻り、助成金収入もなくなれば、売り上げの回復が鈍いとてきめんに損益が苦しくなる。早々に売り上げに対する賃料負担と人件費負担を抜本的に見直して「固定費」の圧縮を図るべきで、今回は賃料負担から出店戦略を考察したい。

まずは自店の賃料水準が割高か割安かだ。割安か割高かは売り上げに対する負担率という視点、同一商業施設の類似業態店舗との比較という視点で異なるが、まずはマクロデータから検証していこう。

日本ショッピングセンター協会の集計に拠れば、22年の物販店舗の坪当たり平均月額賃料は個別徴収方式(賃料+共益費)で1万7266円、売上対比13.1%、総合賃料方式で2万5606円、売上対比13.6%だった。総合賃料方式の方が賃料水準も負担率も高いのは、個別徴収方式より大商圏商業施設の比率が高いからと推察される。

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