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ファストリとハニーズの大幅上方修正の要因はどこが違うのか【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見板であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。業績を急回復させるアパレル企業が増えている。低価格のカジュアルウエアで知られるハニーズもその一つだ。一時は中国市場の不振と撤退によって事業の再構築を余儀なくされてきた同社だが、しっかり立て直してきた。ファーストリテイリングとの比較を交えながら小島氏が詳しく分析する。

5月8日にコロナが5類に移行して行動規制がなくなって以降、人出が急回復して売り上げが伸び、決算見通しを上方修正するアパレルが相次いでいるが、回復の鈍いアパレルもあって明暗が開いている。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングを引き合いにハニーズの上方修正要因を探ってみた。

ファストリ大幅上方修正の主要因は外部環境だった

ファーストリテイリングは7月13日の第3四半期決算発表と合わせて、4月13日の第2四半期決算段階で開示していた8月本決算の上方修正を発表したが、売上収益で500億円(1.9%)、営業利益で100億円(2.8%)、税引き前利益で284億円(7.7%)、親会社帰属当期利益で200億円(8.3%)の上積みをもたらした要因の大半は外部要因だった。

第3四半期(3〜5月)は売上収益38.0%増、営業利益89.5%増の海外ユニクロがけん引。北米、欧州が大幅な増収増益、東南アジア・インド・豪州が大幅増収、グレイターチャイナ(中国、香港、台湾)が大幅な増収増益で、特に中国大陸の既存店が4割超の増収と報告しているが、これはわが国同様、「コロナ規制解除効果」が大きい。国内ユニクロも既存店売上高が5.5%増となって8.1%の増収だったが、営業利益は5.7%の減収だった。3〜6月の累計売上高7.3%増は、10.0%増の客単価が押し上げた「値上げ効果」であり、客数は2.5%減っている。

結果、第3四半期(3カ月)の売上貢献は海外ユニクロ50.63%に対して国内ユニクロ31.73%、営業利益貢献は海外ユニクロ55.67%に対して国内ユニクロは29.19%と大差が開いた。第3四半期累計(9カ月)でも海外ユニクロが売上貢献で前年同期の47.66%から51.21%、営業利益貢献で48.97%から55.70%と伸ばしたのに対し、国内ユニクロは売上貢献で36.31%から33.11%、営業利益貢献では37.86%から30.14%へと大きく落としている。

海外事業の業績貢献はこれだけではない。23年8月期本決算では円安効果で海外事業の売上収益が1256億円押し上げられ、海外ユニクロからのロイヤルティー収入が国内ユニクロの粗利益に推計425億円上乗せされ、為替差益などの金融収益で税引き前利益が286億3000万円、第3四半期の累計売上収益比で1.34%も押し上げられる。為替によってはその逆もあり得ることを指摘しておきたい。

今回のファーストリテイリングの大幅な業績上方修正は「コロナ規制終了効果」「値上げ効果」「為替差益効果」によるものだと言ったら、あまりに他力本願な結果に聞こえるかもしれないが、大きく振れることなく着実に改善を積み上げてきたマーチャンダイジングとサプライチェーン、幾度も挫折を繰り返しながらくじけず築き上げた海外事業があってこその結実で、そのどちらも持たないアパレルチェーンは今回の外部環境要因を享受できず、逆に円安などによるコストインフレに圧迫されている。

ハニーズの大幅増益修正をもたらした3つの要因

売上規模はファーストリテイリングと比較にならないが(約50分の1)、23年5月期決算を1月6日予想値から大幅上方修正したのがハニーズホールディングス(以下ハニーズHD)だ。ミャンマーでの自社工場生産でファーストリテイリングよりSPAに踏み込む一方、逆に中国事業から撤退して損益構造を再構築している。

上方修正は売上高では28億8800万円(5.6%)と小幅だが、営業利益では16億7000万円(27.8%)、経常利益では19億2100万円(31.5%)、純利益では14億3600万円(36.8%)と振れが大きく、前期比では売上高の15.1%増に対して営業利益は53.6%増、経常利益は58.6%増、純利益は64.0%増と利益の伸びが著しい。

利益上方修正の要因は(1)第4四半期(3〜5月)の売上高がコロナ規制の終了で予想外に伸びたこと、(2)それにより固定費率の高い販管費の比率が下がったこと、(3)ミャンマー子会社の自社生産を中核とするASEAN生産で調達コストが抑制され高い粗利益率を確保できたこと、の3点が指摘される。

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