ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回は業界大手のハニーズホールディングスとバロックジャパンリミテッドの2社の決算を詳しく解説する。婦人服を主戦場とする両社はこの数年、苦戦が続く。低迷の理由を探っていくとある共通点が見えてくる。
アパレル企業の決算というと、好調企業の成功要因やつまずきばかりが注目されがちだが、伸び悩んだり低収益に苦闘する企業の足枷となっている要因や突破口を探るのも有意義だと思う。2026年5月期が3期連続の減益となったハニーズホールディングス(以下、ハニーズHD)、26年2月期が2期連続の減収・純資産減少となったバロックジャパンリミテッド(以下、バロック)にフォーカスしてみよう。
減収減益で中計見直しに追い込まれたハニーズHD
26年5月期の売上高が561億8200万円と前期から2.6%減少し、営業利益も46億1900万円と同21.8%、経常利益も48億5700万円と同18.9%、当期純利益も28億4500万円と同23.8%の減益だったハニーズHDは26年5月期からスタートした中期(3カ年)経営計画の下方修正に追い込まれた。
最終年度の28年5月期の計画で売上高630億円としていたのを580億円に、営業利益70億円としていたのを46億円にという大幅下方修正で、3カ年の積み上げ額を売上高は53億円から3億円に、営業利益は11億円からマイナス13億円に修正しているからスタートから転倒したようなものだ。売上高のうちEC売上高を100億円から76億円に24億円も切り下げたのが目立ったが、それでも6億円の積み上げになるから、店舗売上高は3億円減少することになる。
26年5月期の当初見通しに対して売上高は4.8%(28億1800万円)、営業利益は25.5%(15億8100万円)、当期純利益は28.9%(11億5500万円)の未達だったとはいえ、営業利益率は8.2%(前期比−2.0ポイント)とアパレルチェーンとしては高い方で、自己資本比率も85.2%(同+0.8ポイント)、純資産対運転資金率も57.9%と財務も健全で、そこまで急ブレーキをかける必要があるようには見えない。それでも急ブレーキをかけたくなる要因は一体、何だったのだろうか。
不調だった要因として江尻英介社長は「値頃重視でリードタイムの長い東南アジア生産(26年5月期は94.5%を占めた)のベーシック商品に偏り、トレンド対応や天候対応が後手に回った」と釈明しているが、25年5月期(2.18回転)から26年5月期(2.20回転)で棚資産回転が減速したわけではなく、後述するようにインフレ局面で値上げを抑制できず客離れを招いたことが指摘される。元よりミャンマーの自社工場生産比率(26年5月期は30.2%)が高く、ほぼ100%工場直接発注の自社企画・生産管理型SPA事業ゆえ在庫回転は極めてスローだが、大きな振れもないからコントロールできている。
問題は値頃調達優先ゆえ前年踏襲の安全牌商品に偏ることで、もう何年も毎月のように定点観測しているが、今年も去年も一昨年も各季節の商品にほとんど変化はなく、ウエアリングのトレンドでスウェットやニットと布帛のトップス比率が変化するぐらいだった。そうかといってユニクロのように素材から開発した重点商品を大ロット生産して山積みし、継続して縦売りするわけでもなく、ODMバイイングSPAのように類似商品のリレー展開が多いから、何のための自社工場なのかといぶかられる。自社工場軸の自社生産管理なのに、その体制を生かすMDとサプライの仕掛けが欠けているのだ。
縦売りの仕掛けも売り場のVMD訴求力も欠いて販売効率が上がらないのに加え、若い女性(10〜40代)が流出して客数が減少するローカル立地や郊外生活圏立地の店舗も多く、販売効率は26年5月期で前期から2.7%低下して7.72万円/月坪と限界的に低い。EC(オンライン決済)売上高を除くと6.75万円/月坪に過ぎないから店舗在庫の回転はギリギリで、ローカルや郊外生活圏では不採算店舗も少なくないと推察される。
ハニーズHDが減速したもう一つの要因として、コロナ禍を経てインフレに転ずる中での価格政策の稚拙さもあったのではないか。
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