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「テレ東音楽祭2026夏」演出・大森時生が語る“見守り“演出と“伝説メモ”誕生秘話

PROFILE: 大森時生/テレビ東京 プロデューサー・ディレクター

PROFILE: (おおもり・ときお)1995年生まれ、東京都出身。2019年にテレビ東京に入社。「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」「このテープもってないですか?」「祓除」、TXQ「イシナガキクエを探しています」「飯沼一家に謝罪します」「魔法少女山田」「UFO山」「神木隆之介」を担当。Aマッソの単独公演「滑稽」でも企画・演出を務めた。23年「世界を変える30歳未満 Forbes JAPAN 30 UNDER 30」に選出。イベント「行方不明展」や「恐怖心展」も手掛けた。26年6月酒井善三監督とタッグを組んだ劇場長編映画「遺愛」が公開された。

「テレ東音楽祭2026夏」が6月28日に放送された。今回は「歌の伝説」をテーマに、番組史上初となる日曜日の4時間30分の生放送。72組のアーティストが出演し、“見守り”演出や、アーティストにまつわる小ネタを表示する“伝説メモ”など独自の演出が大きな話題を呼び、放送中から「#テレ東音楽祭」がXでトレンド入り。放送後もSNSには多くの感想コメントが投稿され、TVerなどの配信でも多く見られている。

同番組はいかにして伝説になったのか。今回、演出を担当したテレビ東京の大森時生に、アーティスト選定の考え方、“見守り”演出や“伝説メモ”誕生の裏側、そして「視聴者ファースト」を掲げる音楽番組論について聞いた。

「歌と記憶の連動」がテーマ

WWD:私自身、「テレ東音楽祭」をちゃんと見たのは、今回がはじめなんですが、まず「テレ東音楽祭」が社内ではどのような位置付けの番組か教えてください。

大森時生(以下、大森):社内のバラエティーの特番の中では一番大規模で、(日テレの)「24時間テレビ」というとさすがにおこがましいですが、テレ東の中では一番労力とお金がかかっています。それこそ制作局だと関わっていない人がいないぐらい、「全員野球」に近い感じで作っています。

WWD:今回、大森さんは演出を担当されましたが、具体的にはどのような役割だったんですか?

大森:他局だと、特番の「音楽祭」は普段音楽番組をメインでやっているチームが制作していると思うんですけど、「テレ東音楽祭」の場合は「プレミアMelodiX!」などの音楽番組のチームだけだと人員が足りないので、僕のようなバラエティーの制作チームもメインで関わっています。今回、演出は3人いて、宇賀神(敬行)さんと渡邊(麗)さんと僕。宇賀神さんと渡邊さんは音楽チームとして歌撮りブロックを担当して、僕が番組の全体構成や歌の細かい部分の演出を考えました。

WWD:大森さんはこれまでも「テレ東音楽祭」には関わっていたんですか?

大森:入社2年目から関わっていましたが、主に制作進行という役割でした。昨年から部分的に演出で入って、その流れで今年は番組全体の演出を担当することになりました。

WWD:演出のオファーを受けたのはいつ頃でしたか?

大森:今年の3月ごろです。そこからガッツリと関わっていきました。

WWD:最初は何から決めていったんですか?

大森:今年の大きな変更としては、VTRパートをなくすというのがあって。例年は4時間半のうち1時間半ほどを過去映像で構成していました。例えば、1万人に聞いたドラマソング、CMソングといった企画です。今年はその枠がなくなったため、例年よりも大幅に生歌のパートを増やすことになり、改めて構成から組み立てることになりました。

現在活躍している人気アーティストを数多く集めることは、音楽番組の大切な役割だと思います。ただ、それだけでは、それぞれのファンが目当てのアーティストを楽しむ番組にはなっても、幅広い世代が同じ時間を共有する番組にするのは難しいのではないかと考えました。

1980〜2000年代前半はみんなが知っている国民的な曲がいっぱいあったから、そうした人気アーティストを集める音楽番組が成立していたんだと思いますが、近年は好みも細分化して、幅広い世代の人がみんな知っているマスな曲が少なくなっている。その時代に、どういう方法が多くの人にとって、見ていて楽しい音楽番組になるかっていうことを考えて、そこから「歌と記憶の連動」っていうテーマが思い浮かびました。例えばドラマの主題歌を聴いた瞬間、その作品の場面だけでなく、誰と見ていたか、自分が当時どこで何をしていたかまで思い出すことがある。CMソングにも、同じように時代の風景や生活の記憶が保存されています。過去の映像を振り返るのではなく、その曲や出演者を現在の生放送に呼び戻すことで、視聴者一人ひとりの記憶を立ち上げられないか。そう考えたことが、ドラマ主題歌やCMソングを軸にしたメドレー企画の出発点でした。

40〜50代の人には懐かしく、
20〜30代の人には新しく

WWD:今回の「伝説のドラマ超名曲メドレー」をはじめ、「SPEED超名曲メドレー」、「小室哲哉SPメドレー」、「沖縄スーパーヒット曲メドレー」など1980〜90年代の曲がメインのパートが多かったですが、大森さんはリアルタイムで経験してきた世代ではないと思うんですが、それでも「この曲はマスだな」って感覚はあるんですか?

大森:今30歳なんですけど、僕らの世代にとって、単なる「懐メロ特集」は、面白いかつまらないかを判断する以前に、「これは自分が見る番組ではない」感覚がある気がします。一方でTikTokでオリジナル・ラブの「接吻」(1993年)やm-floの「come again」(2001年)が若い世代に広がるような現象も起きています。そこでは、何年に発売された曲なのかは、それほど重要ではない。昔の曲でも、今聴いてよければ自然に受け入れられる。むしろ若い世代ほど、過去と現在を区別せず、同じタイムラインに流れてくる音楽としてフラットに聴いているように感じます。

だから人選を考える上で1980年代、90年代の歌番組や「40代向けの感涙メドレー」みたいなものを聞きまくって、自分の中で良いと思った曲や面白いと思った曲をピックアップし、それをリアルタイムで体験した40代、50代の人に確認してみて、その時の興奮具合で最終ジャッジしていました。結果として、40代、50代にとっては懐かしい曲との再会になり、20代、30代にとっては知らなかった音楽との新しい出会いになる。同じステージを見ながら、世代によって異なる時間が立ち上がるような番組を目指していました。

WWD:アーティストの人選にも大森さんはかなり関わってるんですね。

大森:出演交渉はプロデューサーの方が行なってくれていますが、ラインアップは僕がチーフプロデューサーとかに相談して決めました。

WWD:他の音楽番組とは違う独特な人選でしたが、そうした中でもaespa(エスパ)が出ていたのは意外でした。

大森:実はダメ元で依頼したらOKが出たという、ラッキーでした。僕らも最初は本当に来てくれるのか、半信半疑でしたけど(笑)。

WWD:あそこだけ違和感があって、それも「テレ東音楽祭」ぽくってよかったです。

“見守り”システム
曲とドラマと人生

WWD:今回、SNSでかなり話題となったのが、歌うアーティストを関係性のあるゲストが“見守る”という演出でした。あの演出は以前からあったんですか?

大森:実は、“見守り”の演出自体は前回も一度試していたんです。D-51さんにドラマ「ごくせん」の主題歌「NO MORE CRY」を歌っていただいた際、ドラマに出演していた脇知弘さんにも来ていただき、そばで歌唱を見守ってもらいました。その時の脇さんの佇まいが、本当に印象的だったんです。歌を聞きながら、涙をこらえているようにも見えるほど、深くかみ締めていた。おそらくあの曲は、脇さんにとっても、俳優人生の大切な時間と結び付いた“人生の一曲”なのだと思います。その姿を見て、歌とともに記憶がよみがえる瞬間を、そのままテレビで見せることには大きな可能性があると感じました。

それで今回、「歌と記憶の連動」というテーマのもと、視聴者がドラマの主題歌を聞いて、自分の記憶と接続させるために、“見守り”システムというのは、かなり有効に作用すると思ったので、「伝説のドラマ超名曲メドレー」のパートを中心に導入しました。

WWD:一緒に歌うのではなく、ただ“見守る”っていうのがいいですね。

大森:「ドラマメドレー」のパートは2軸あって、1つはアーティストが来てくれたら、それをゲストが見守りながら聞く。もう1つはアーティストが亡くなっている場合や出演が難しい場合は、主題歌だったドラマの演者がその曲を歌う。そうすれば、ある種バグ的に脳内で当時の記憶が蘇るんじゃないかという考えです。例えば千堂あきほさんに、ドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」を歌ってもらったり、髙嶋政伸さんにドラマ「HOTEL」の主題歌「LET THE RIVER RUN」を歌ってもらったり。

WWD:それでも赤井英和さんに森田童子の「ぼくたちの失敗」(※ドラマ「高校教師」の主題歌)を歌ってもらおうとは思いつかないです。

大森:赤井さん、ドラマ「高校教師」の中では、数少ない善い人でしたからね。僕もどのくらい受け入れられるかは、ちょっと心配ではありましたけど、視聴者の反応は想像以上に好意的でした。

WWD:あの“見守り”演出って奇妙な感じがしつつ、ちょっと笑える不思議な演出でした。

大森:それは歌っている人と見守りの人の距離が近いからかもしれないです。あんなに人が近くで曲を聴くことってあまりないと思うので。

WWD:特に麻倉未稀さんが「スクール☆ウォーズ」の主題歌「ヒーロー -Holding Out For a Hero-」を歌っている時、ゲストで来た山下真司さんと松村雄基さんが向かい合って立っていて、あの変な感じで見守るっているのが印象的でした。

大森:僕自身が当時をリアルタイムで知らないからこそ、既存の評価や個人的な思い入れにとらわれず、比較的フラットに考えられた部分はあると思います。音楽への愛情が深い作り手ほど、アーティストの魅力や世界観をできる限り尊重して見せようとします。それはもちろん大切なことです。ただ、その敬意が前面に出すぎると、すでにファンである人には満足度の高い番組になっても、初めて見る人は入り口を見つけにくくなることがある。

ファン向けの番組やライブであれば、それでも成立すると思います。一方、テレビは、特定のアーティストを知らない人も偶然目にするメディアです。だからこそ、アーティストの魅力をそのまま届けるだけでなく、キャプションや文脈、意外な組み合わせを通して、知らない視聴者との間に橋を架けることも必要だと思っています。

アーティストへの敬意は持ちながら、演出側が少し距離を取り、「初めて見る人にはどう映るか」を考える。その視点があることで、ファン以外の人にも開かれた音楽番組になるのではないかと思います。

WWD:“見守り”ゲストで来た人に「最後一言感想を」って、やりそうですが、今回なかったですね。

大森:今回は無しにしました。だからイントロの間にちょっとだけ喋ってもらったりしたんですが。でもコメントよりもゲストの聞いている時の表情が何よりも雄弁なんじゃないかと信じていたところもありましたね。

ニューヨークは
「目線をつけるのがうまい」

WWD:スタジオゲストのニューヨークさんですが、明確な役割があるわけではなく、MC2人(Snow Manの深澤辰哉と俳優の松本若菜)のそばいて、少しコメントするみたいな。それも絶妙な立ち位置でしたね。

大森:ニューヨークさんはとにかく「目線をつける」のがすごく上手い方だと思っていて、「こういう見方をしたら面白い」っていうのを自然に視聴者に教えてくれる。昨年もスタジオゲストをやってくれたんですが、その時の「目線のつけ方」がめちゃめちゃ素晴らしかったので、今年もお願いしたいなと思って。今回でいうと“見守る”っていうのが「いいことでもあり、変なことでもある」っていう2軸を生むのには、ニューヨークさんの視点が必要でした。ニューヨークさんは視聴者的なメタの視点で自由に思ったことを言ってくれるし、逆に演者として内側に過剰に適応するというボケもしてくれて。

WWD:確かに違和感がある部分はちゃんとツッコんでくれてましたよね。

大森:違和感を一瞬で捉えるっていう力もそうですし、それを一言で的確に表現するのが異常に上手い方々で、大変ありがたかったです。

伝説メモは
1000本ノック

WWD:今年の「テレ東音楽祭」で“見守り”システムと共に話題になったのが、「麻倉未稀は山で会う人に『こんにちは』と言う」や「酒井法子は早食い」「いしだ壱成はトルコで植毛に成功した」といった“伝説メモ”でした。こちらはどのようにして思いついたんですか?

大森:発想の原点は、テレ東の選挙特番です。候補者の経歴や当落情報と一緒に、その人の意外な一面が分かるメモを表示していますよね。真剣な情報の横に、少し人間味のあるエピソードが並ぶことで、よく知らない候補者にも興味を持てる。音楽番組でも、同じことができるのではないかと思いました。

WWD:メモの内容が絶妙でした。少し笑えるくらいのどうでもいい内容で。

大森:そこは僕がちょうどいいと思うラインで統一したかったので作家さんから、メモになりそうな小ネタや資料を出してもらって、選定と文章の作成は僕が行いました。

音楽番組ならではの大団円

WWD:中山エミリさんとダチョウの共演も話題となりました。

大森:あれもドラマと同じ考えで、音楽と結びついている90年代のCMって結構あって。「ポカリスエット」のCMはどれも素晴らしいのですが、その中でも中山エミリさんの「ポカリスエット」のCMとFIELD OF VIEWさんの「突然」って印象的で。40代の人もこのCMはすごく覚えていて、かつ僕が今見てもめちゃくちゃいいなと思ってお願いしました。

WWD:普通だったら中山さんだけで、ダチョウまで呼ぼうとは思わないですけどね。

大森:そんなに深く考えてなくて、あのCMってダチョウの存在感も大きかったので、いた方がいいかなと思ったんです。

WWD:でもあれだけのために動物を呼ぶのって結構準備が大変じゃないですか? 生放送っていうのもありますし。

大森:だからいろんな人に嫌がられながらやってました。

WWD:もう1つ、SNSでの感想が多かったDOZAN11(三木道三)さんの企画。昨年は「一般人100人の『一生一緒にいたいもの・人』に対する熱い気持ちを受け止め、1人ずつに『Lifetime Respect』を歌うという企画をやっていて、今年は千葉県・柏市から東京・天王洲まで「一生一緒にいてほしいもの(人)」がある一般人を探し、エンディングで「Lifetime Respect」を大合唱するという企画でした。どちらもYouTubeで生配信しながらの企画ですが、今年もDOZAN11さんの企画は最初から考えていたんですか?

大森:個人的に「紅白歌合戦」や「24時間テレビ」みたいに、最後にみんながステージに集まって歌う大団円みたいなのも結構好きで。去年の流れもありつつ、「Lifetime Respect」ってすごく合唱するのに向いている曲だなと思っていたので、お願いしました。YouTubeで一般の人と実際に交渉しているところを生配信していたんですが、現代では信じられないハードスタイルでやってましたね。

岡本太玖斗の動くロゴ

WWD:今回の「テレ東音楽祭」のロゴはグラフィックデザイナーの岡本太玖斗さんが制作されました。一見、手書きのようなロゴが実は長方形がつながっているというものでしたが、あのロゴはどのようにしてできたんですか?


大森:基本的には岡本さんのセンスですね。打ち合わせの時点では、「音楽番組は、それぞれのアーティストがそれぞれにパーフォーマンスして、一つの番組が作られている。それは他のバラエティーとは違う、音楽番組特有かもしれない」って話を岡本さんとしてたら、あのロゴを考えてくれて。

WWD:モーションがあると、その意図がよりわかります。ロゴは動かすのを前提で作ってもらったんですか?

大森:そうですね。当初からモーションも含めて岡本さんとは話をしていました。手書きの文字に見えるのが動くと一つひとつの長方形だってわかるのがおもしろいですよね。

全てがフラットになった時代の音楽番組

WWD:今回の「テレ東音楽祭」の放送後の評判は?

大森:すごく多くの反響がありましたね。視聴率だともっと良い年はあるんですが、「TVer」や「ネットもテレ東」の配信の再生数は歴代の「テレ東音楽祭」では1位で、テレ東内の歴代バラエティー全体でも4位で、本当に想像以上の反響です。

WWD:今回の感想で面白かったものはありましたか?

大森:社内でも、40〜50代の方が想像以上に興奮していて、社内の話したことない人からも「めちゃめちゃよかったよ」って熱量高く言われたりもして。逆に音楽番組でみんなが興奮するのって、僕の世代ではもう起こり得ないことだなとも思って。その埋め難い感覚差みたいなのはすごく実感しました。

WWD:鈴木おさむさんがXで、今回の「テレ東音楽祭」を絶賛していました。そこで「テレビは45歳以上に振り切った方がいい」みたいなツイートをしていましたが、大森さん的にはどう思いましたか?


大森:僕の中ではそんなに45歳以上に振り切ったつもりがまずあまりなかったんです。むしろ意識していたのは、「ディグ」と「サンプリング」の文化でした。今はSNSやサブスクによって、昨日発表された新曲と何十年も前の曲が、同じタイムラインに並ぶ時代です。発売された年代や当時の評価を知らなくても、偶然出会って、いいと思えば聴く。古いものと新しいものの境界がなくなり、すべてがフラットになった現在の音楽環境にふさわしい歌番組は、こういう形なのではないかと考えていました。

だから番組の中でも、乃木坂46さんやFRUITS ZIPPERさんのような現在のシーンを代表する方々と、久しぶりにテレビで歌う方々を、同じ平面に並べたかったんです。どの時代の音楽が上で、誰が今いちばん評価されているかという序列を作らず、すべての出演者を「今、この瞬間に見るべき存在」として扱う。そういうフラットな世界を作ろうとしていました。

もちろん、実際に強く反応してくださったのは、当時の記憶を持つ40代、50代の方々が多かったのかもしれません。ただ、目指していたのは、その世代だけが懐かしさを楽しむ番組ではありません。若い人が知らない曲やアーティストに新しく出会い、背景を知らなくても「これは面白い」「この曲はいい」と感じられる番組にしたかったんです。

WWD:若い人の反応はどうでしたか?

大森:もちろん、80〜90年代の当時の音楽シーンを知っている方が楽しめると思うんですが、知らなくても何か面白いって、その感じに反応してくれる若い世代の人がいてくれて、うれしかったです。

テレビだからできること

WWD:今回の「テレ東音楽祭」を経験して大森さん的にテレビに希望が見えたっていう手応えはありましたか?

大森:もともと僕が入社した時の時点でそんなに別にテレビに希望がないと言われている時代だったので、僕の中では、そこから割とずっと上がりも下がりもしてないんですよ。

そんな中でも、「テレ東音楽祭」をやってみて、同時間帯に多くの人が見てそこに興奮が生まれるっていう「24時間テレビ」や「紅白歌合戦」的な良さは、まだテレビ以外では引き起こせないだろうなって、改めて思いましたね。配信だと多くの人が見たとしても、興味ある人にしか届けられない。テレビだと興味ない人が偶然見る可能性もまだ残されているので。

WWD:少し話がそれるんですが、最近はどこのテレビ局もファンダム狙って作っている番組が増えていませんか。多くのメディアがそうであるように、テレビ業界としては、やっぱりそういう流れが強いんですか?

大森:ファンダムを狙って作る番組は基本的に配信での再生数を取りたい番組だと思います。例えば、あるボーイズグループだったら、10万再生は大体いくとか、再生数が計算がしやすい。逆にファンダムを狙わないなら何かよっぽど仕掛けがないと本当に誰にも見られないというのが、今のテレビ業界の問題だと思っていいて。特に昔のスノッブカルチャーっぽい「わかる人にはわかる」という深夜番組が、今だと本当に通用しない苦しさがあって。何かをきっかけに大バズが起こせればいいんですが、テレビのKPIを満たそうとする時に、ファンダムを狙う以外、特に深夜帯では必勝法はないっていうのが現状です。

一方で僕はテレビの視聴率って結構夢があるなと思っていて。視聴率ってビッグデータすぎて、世代もバラバラで、特に上の世代が多いとなると、ファンダムが強いグループをそろえたからといって、再生数はいくけど、テレビの視聴率はそこまでいかないってこともありえる。だから、ゴールデンの時間帯で、ある程度視聴率を狙わないといけない時に、「このファンダムを狙ったら成功できるよね」っていうのはないのが、テレビの難しいところでもあり、いいところでもあると思ってます。今は多くのメディアがファンダムを中心に考えている中で、テレビはそうじゃないものもできるなと感じています。全てが全てファンダム文化に飲み込まれるのはそれはそれで違う気もするので。

WWD:それはテレビに限らず、多くのメディアが感じていることだと思います。ちなみに「テレ東音楽祭」は生放送でしたが、生放送は好きですか?

大森:生放送、いいなと思いました。テレ東って、「テレ東音楽祭」と「隅田川花火大会」の年に2回ぐらいしか、バラエティー班が関わる生放送ってないんですが、やっぱり独特の興奮ありますよね。今回のテレ東音楽祭は、「生きていくってこういうことだよな」と感じる瞬間がいくつかありました。僕みたいな若造がいうとあれですが「長年かけてやり続ける」ことの尊さを感じたというか。

WWD:「テレ東音楽祭」を通して、人の人生を見たと?

大森:人生を見ましたね。さまざまなシーンから勝手に人生というものの奥深さを感じていました。僕も30歳になって、「生活」とか「人生」みたいなことに関心が高まっていて。20代の頃はもうちょっと刹那的に、それこそバズるとかも含めてとか面白いものを作ってその瞬間に反応があるみたいなことに一番関心があったと思うんですけど、人生は長距離走というか。今回の「テレ東音楽祭」でも、人生いろいろあったけど、結局今もあの名曲を歌ったり、その曲を聞いて涙を流す人もいたり、その人の人生を感じる瞬間が生放送中にたくさんあって。それがこの番組をやって一番よかったことですね。

PHOTOS:KAZUO YOSHIDA

「テレ東音楽祭2026夏」配信

「テレ東音楽祭2026夏」は7月27日までTVerと「ネットもテレ東」で配信中
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