ファッション
連載 小島健輔リポート

なぜ「ルルレモン」はコロナ下でも急成長できたのか 苦境で光る“誠実経営”【小島健輔リポート】

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 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナどこ吹く風で力強い成長を遂げているのが、スポーツウエアのルルレモンである。2021年度の売上高はコロナ前の19年度に比べて1.6倍。なぜ苦境をものともせず、結果を残すことができたのか。詳細に分析してみた。

 コロナ禍が長引いて業績の回復が遅れるアパレル企業が大半だが、アスレジャーを代表するカナダのルルレモン・アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA 以下、ルルレモン)の回復は目覚ましいものがある。コロナ禍ではスタジオ・ワークアウトの激減や店舗の休業で同社も少なからぬ打撃を受けたが、適確かつ誠実な対応で苦難を乗り切り、サステナブル経営のお手本を示した。

急回復を見せつけたルルレモン

 ルルレモンの2021年度(22年1月期)決算は売り上げが前期から42.1%も伸び、コロナ前の19年度を57.2%も上回った。前期に2倍強に急増したオンライン売り上げこそ21.6%の伸びにとどまったが、前期に33.7%減少した直営店売り上げは70.1%も伸びて19年度も12.8%上回り、前期に37.7%に落ちた売上比率も45.1%とオンライン(44.4%)をわずかながら抜き返した。

 ルルレモンのオンライン売上比率はコロナ前の19年度でも28.6%と高く、営業利益率は42.6%とラグジュアリーブランド並みで、直営店部門の27.6%を15.0ポイントも上回っていた。コロナ禍の20年度は売り上げが倍増して営業利益率も45.1%と跳ね上がり、店舗休業で売り上げが激減した直営店部門の12.8%を32.3ポイントも上回ったが、21年度は直営店部門も25.8%に回復し、その差は18.0ポイントまで縮まった。それでもこれほどの収益力格差があるということは、ルルレモンの家賃負担が専門店としては異例に低い(21年度で売上対比5.1%)とはいえ、店舗販売がいかに非効率なものか痛感させる。

 21年度は粗利益率※も62.8%と前期から0.8ポイント回復したが、コロナ禍の20年度も19年度から0.3ポイントしか下がっておらず、店舗休業などで在庫が滞貨しても値引き処分に走らなかったことがうかがえる。棚資産回転日数は19年度の126.2日から20年度は141.7日へ15.5日も延び、21年度も151.4日と回復していないからダメージは小さくなかったが、買掛債務回転日数を19年度の21.0日から20年度は37.7日、21年度も45.4日と延ばし、CCC(Cash Conversion Cycle)を19年度の108.9日から21年度の110.5日と1.6日の延びに抑えて運転資金負担を抑制している。買掛債務回転日数を延ばしたといっても18年度からは2週間弱であり、コロナ禍のアパレル他社のように1カ月も延ばしたわけではない。サプライヤーの負担にも配慮したバランス点だったと思われる。

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