ファッション

投資家も注目するデジタルファッションのドレスX創業者が語る 「10年以内に1億のデジタルアイテム販売を目指す」

 ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業、ドレスX(DRESSX)はデジタルファッションのみを販売する注目企業だ。同社のウェブサイトではプライベートレーベルのほか、100ブランド以上1000以上のアパレルやシューズ、アクセサリーなどのデジタルアイテムが並ぶ。価格は20ドル(約2300円)前後のTシャツから、1400ドル(約15万円)のドレスまでと幅広い。ユーザーは同社のウェブサイトで着用したいアイテムを購入し、自分の全身写真をサイトにアップロードすると、後日購入したアイテムを着用した状態の画像が送られてくるという仕組みだ。

 ドレスXは、ファッションとテック業界でキャリアを積んだ3人の女性起業家によって2020年8月にウクライナで誕生した。業界の大量生産の現状に課題を感じ、「ファッションが生み出す美しさや楽しさを保ちながら、生産量を減らしたよりサステナブルなファッション、もしくは生産しないファッション」として、デジタルファッションに着目し、その可能性を広げることに挑戦している。これまでに330万ドル(約3億7000万円)の資金を調達し、アプリの開発や独自のNFT市場の構築などを進める。共同創業者のダリア・シャポヴァロヴァ(Daria Shapovalova)とナタリア・モデノヴァ(Natalia Modenova)にオンラインで話を聞いた。

WWD:デジタルファッションに着目した理由は?

ダリア・シャポヴァロヴァ=ドレスX共同創業者兼CEO(以下、シャポヴァロヴァ):私は18歳でファッション業界に入り、出身地ウクライナでファッション番組を企画したり、地元のファッションシーンを盛り上げるためにメルセデス・ベンツ(MERCEDES BENZ)をスポンサーに迎えてキエフでファッション・ウイークを立ち上げ運営したりしていました。ファッション・ウイークをスタートした同時期に、ナタリアと私は東欧デザイナーを中心としたショールームの運営をはじめ、ネッタポルテ(NET-A-PORTER)やファーフェッチ(FARFETCH)、パリ、ニューヨーク、東京などの世界の大型店舗に商品を卸していました。ビジネスをする中でアパレルは生産サイクルが速く、大量に生産している点や、最近ではSNSで写真を投稿するためだけに服を購入し、撮影後には返却する客が多いといった話も聞くようになり問題意識が芽生えました。そこで私たちはSNSやゲームの世界において人々がデジタル上でファッションを楽しむ様子に、未来のファッションのあり方のヒントがあるのではないかと考えました。ちょうどパンデミックになり、人々がオンラインで過ごす時間が増えたことにも後押しされ、創業を決めました。

ナタリア・モデノヴァ=ドレスX共同創業者兼最高執行責任者(以下、モデノヴァ):社名の“ドレス”は、アイテムとしてのドレスにフォーカスを当てるという意味ではなく、“着る行為”そのものをアップデートせよという意味です。英国のバークレイズ銀行の調査によると、英国で購入されたファッションのうち9%がSNS用の写真撮影の後に返却されたそうです。これはコロナ以前の調査結果なので、今現在さらに多くの人がオンラインで過ごしていることを踏まえれば、デジタルファッション市場にポテンシャルがあると思ったんです。

WWD:デジタルファッションを環境負荷が低いという観点でアピールしている点がユニークだ。

シャポヴァロヴァ:ショールームで働きながら、売られない服をたくさん見てきました。これらを誰かの手に渡らせたいというのが、アイデアの発端の一つでした。私たちはデジタルで新しいファッションや消費のあり方を提案したい。これが業界の環境問題を解決する唯一の選択肢というわけではありませんが、その一つであることは間違いない。例えば、ギフティングをデジタルファッションで行えば、ブランドは資源やコストの削減につながります。そして、デジタル上ではデザイナーたちが頭の中に思い描くデザインを膨大な資源を使わずに実現することもできる。表現の幅を広げるという意味でも可能性は大きいでしょう。

モデノヴァ:私たちの独自の方法で、フィジカルで生産していたものをデジタルに変えることでどれくらいCO2排出量が減らせるかを計測したといったデータも掲出しています。

WWD:デジタルファッションは、未知の分野だったと思うが技術的な課題はどのように解決した?

シャポヴァロヴァ:私とナタリアはファッション業界にいましたが、もう一人の創業者のジュリー・クラニエンコ(Julie Krasnienko)はウクライナのスナップチャットで働いていた経験があり、テック系の知識を持っていました。最初は手探りの部分も多かったですが、創業から3カ月後には現在のチーフ・テクノロジー・オフィサーを含む8人のエンジニアを迎えて急ピッチで開発を進めました。現在は写真だけでなく、リアルタイムで撮影をしながら、その人がデジタルファッションを着用しているように見せることもできるようになりました。

NFT市場参入でビジネス規模をさらに拡大

WWD:現在ウェブサイトでは100ブランド以上のアイテムを取り扱っている。どのように参加デザイナーを募った?

モデノヴァ:最初は何人かのファッションデザイナーに声をかけ、彼らの商品をデジタル化することから始まり、さらにどんな機能が必要かといった検証を重ねました。同時にさまざまなデザイナーにドレスXの意義やコンセプトを伝えることで興味を持ってくれるデザイナーが増えていきました。

WWD:フィジカルファッションを提供するブランドとの協業も増えていく?

モデノヴァ:8月にはファーフェッチとのパートナーシップの下、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のデジタルサンプルを製作しました。ファーフェッチの先行予約サービス開始に合わせたもので、インフルエンサーだけがそのデジタルサンプルを着用することができ、その着用画像をSNSなどに投稿することで、消費者の実際のオーダーにつなげるというものです。ファーフェッチは顧客からサステナビリティへの要求が高まる中、一部のキャンペーンをデジタル化することでCO2排出量を抑えられるという点にメリットを感じていました。そのほか私たちのウェブサイトにはありませんが、「バルマン(BALMAIN)」とは、彼らのNFT商品の製作を手伝いました。デジタル化には、実際の商品を送ってもらう必要はなく、商品の写真から作成できます。

WWD:「10年で1億のデジタルファッションを販売すること」を目標に掲げているが、その進捗は?

シャポヴァロヴァ:売り上げは非公表ですが、月15~20%増くらいで成長しています。私たちはデジタルファッション分野のパイオニア企業の一つで世界最大のプレーヤーです。11月には自分たちのNFTマーケットを立ち上げるので、その規模はさらに大きくなります。

WWD:ビジネス規模を拡大する上でNFTは重視している?

モデノヴァ:すでにいくつかのNFTマーケットと連携しています。例えばクリプト.comで販売しているNFTアイテムは、購入者だけが着用することができ、その購入者がアイテムを売りに出した場合は、アイテムの所有権が次の購入者に移るという仕組みです。NFTで私たちは、よりエクスクルーシブで少数のアイテムを取り扱うラグジュアリーファッションのカテゴリーを新設する予定です。自分たちのNFTマーケットでは、アプリと連携してユーザが常に自分のデジタルクローゼットを管理できるような仕組みを作ります。

シャポヴァロヴァ:カテゴリーは服だけでなく、靴やアクセサリーもあります。残念ながら、靴はあまり強い商材ではないですが、アプリ内のAR試着では特にアクセサリーが人気です。全カテゴリーを網羅し、まだデジタルコレクションを持っていないラグジュアリーブランドを巻き込んで規模を拡大します。

WWD:現在どのような人がデジタルファッションを購入している?

モデノヴァ:SNSのアクティブユーザーや新しいテクノロジーに関心の高い層、ファッションが好きでかつサステナブルな楽しみ方を模索している層などです。

WWD:今後どのようにデジタルファッションの魅力を広げていく?

シャポヴァロヴァ:例えば、この取材もオンラインで行われていますよね。ナタリアが今着けているアクセサリーはドレスXの商品です。SNSやゲーム、オンライン上でのコミュニケーションの場ではデジタルファッションの需要が分かると思います。ただ、デジタルはフィジカルなファッション市場を侵略するものではありません。現在のファション市場のうちの1%でも、デジタルで楽しむことができればそれだけでも相当なインパクトがあります。いかにデジタルとフィジカルを共存させていくかがポイントになるのではないでしょうか。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

盛り上がる”スピリチュアル消費“を分析 「心に寄り添ってほしい」ニーズに向き合う

「WWDJAPAN」10月25日号は、“スピリチュアル消費”特集です。ここ1〜2年、財布の開運プロモーションや星座と連動したコスメやジュエリーの打ち出しがますます目立つようになっています。それらに取り組むファッション&ビューティ企業と、その背景にある生活者の心理を取材しました。 スピリチュアルと聞くとやや怪しさがありますが、取材を通して見えてきたのは「心に寄り添ってほしい」という女性たちの普遍的な…

詳細/購入はこちら