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“ハッキング”に込めた愛 エディターズレター(2021年7月21日配信分)

※この記事は2021年07月21日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“ハッキング”に込めた愛

 清水寺、仁和寺、そして旧川崎邸という京都市内の名所3カ所を“ハッキング”した、「グッチ」の一大スペクタクルを取材してきました。いやぁ、たまげました(笑)。ピンクに染まった清水寺にも、畳の部屋に並んだハイジュエリーにも、昔ながらの町家を「蘇らせた」と言っても過言ではない「グッチ」の心意気にも、ただただ、たまげました。

 “ハッキング”は、「グッチ」が今回京都でお披露目した“アリア”コレクションに通じるコンセプトです。“アリア”コレクションで「グッチ」は、「バレンシアガ」を“ハッキング”。デムナ・ヴァザリアによる「バレンシアガ」のシルエットを「グッチ」のモチーフでのっとったり、そんな新しい試みで「グッチ」100年の歴史を上書きしたり、アレッサンドロ・ミケーレの“ハッキング”は、アイテムからシーズンコンセプト、長い目で見たときの歴史にいたるまで、多様なレイヤーで表現されています。そんなコンセプトを、京都でも体現したのです。

 ピンクに染まった清水寺を見て、「不謹慎な」と思う人もいるでしょうか?そんな人には、“ハッキング”という言葉の意味を考えて欲しいと思っています。

 みなさん、“ハッキング”という言葉を聞いて連想するのは、ナンですか?犯罪、ではありませんか(笑)?少なくとも、見つかったら怒られるリスクですよね?そう、“ハッキング”とは、リスク覚悟の果敢な挑戦なのです。だから“ハッキング”しようとするモノは、“ハッキング”を仕掛ける側がリスクを承知してなお「近づきたい!」と願うもの。つまり“ハッキング”を仕掛けるモノは、ハッカーが「究極にリスペクトしているモノ」なのです。

 そう考えると、どうですか?ピンク色に染まった清水寺を、むしろ誇らしく思いませんか?実際「グッチ」は、京都をものすごくリスペクトしています。例えば「グッチ バンブー ハウス」は、京都の遺産とも言える旧川崎邸が舞台ですが、その壁、その床、その柱に傷をつけたり手を加えたりすることがないよう、もともとの床や壁の上に緩衝材を敷き詰め、その上に新たな床や壁を作っているそう。こんな手間暇、「究極にリスペクトしているモノ」じゃなきゃ、絶対にやりませんよね?

 振り返れば「バレンシアガ」の“ハッキング”も、そうなのでしょう。“アリア”コレクションの発表直前から直後にかけては、「安直なコラボ」と評する声もありました。でもこれは、「グッチ」がリスクを犯しても挑戦したかった「究極にリスペクトしているモノ」への愛の証なのです。

 「そんなの欺瞞だ」という人もいるかもしれません。でも騙されたとしても“ハッキング”の特別性を見出し、「バレンシアガ」との取り組みも、京都でのイベントも、楽しんだほうが得じゃありませんか?「グッチ バンブー ハウス」は、明日スタートです。みなさん、「グッチ」の京都への愛、感じてみてはいかがでしょうか?

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