ファッション

「バレンシアガ」と「ゴルチエ」×「サカイ」に大興奮! ドキドキワクワクのクチュール初体験記 Vol.3

 ボンジュール!WWDJAPANヨーロッパ通信員の藪野です。3日目は、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のクチュール復活と「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢デザイナーが手掛ける「ゴルチエ パリ(GAULTIER PARIS)」発表という今季の2大トピックが重なるビッグデー!どちらもリアルショーへの強いこだわりから1年延期していたので、待ちに待ったお披露目です。一体どんなコレクションが披露されるのか、ワクワクする1日の始まりです。

7日10:00 アレクシ マビーユ

 本日朝一番は、街の中心にある素敵なパッサージュ、ギャルリ・ヴィヴィエンヌに構える「アレクシ マビーユ(ALEXIS MABILLE)」のサロンへ。今季のテーマは“フラワーウーマン”だったのですが、「さすがにこれは直球すぎないだろうか……?」と感じるバラのつぼみをモチーフにしたヘッドピースと茎に見立てたスパンコールのボディースーツのルックに目が点。燕尾服の要素を取り入れたイブニングドレスやチュールに小花の刺しゅうを散りばめたドレスは素敵でしたが、どうしてもラグジュアリーな“モジモジくん”が頭をよぎってしまうのでした。

7日11:00 ディオール

 初日に発表された「ディオール(DIOR)」の展示会へ。クチュールでは普段プレス向けの展示会はないそうなのですが、今回は特別に見せていただけることになりました。うねるように手で形成したプリーツやボディにピッタリと沿う編み、極薄の生地をつなぐクラフト感のあるノット、花柄のパッチワークに重ねたステッチ、メッシュ状のニットに1本1本縫い付けたフェザーなど、間近で見るとクラフツマンシップへのこだわりがヒシヒシと伝わってきます。ショーのラストに登場したフェザーをあしらった淡いグリーンのドレスは、600時間以上をかけて制作されたものだそう。 クチュールなので、もちろん生地や装飾の色合いを好みに合わせてオーダーできます。

7日11:30 バレンシアガ

 続いては、お待ちかねの「バレンシアガ(BALENCIAGA)」です。53年ぶりに復活するクチュールを披露する舞台は、ジョルジュサンク通り10番地に再建したクチュールサロン。内装は、創業者のクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)がそこにいた当時を再現しているそうです。その話題性に対して、スペースが限られているために席数はかなり少なく、今季1番のプレミアチケットだったことは間違いありません。日本のメディアでショーを取材したのは、おそらくWWDJAPANのみです!コレクションの内容はこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

 最大のポイントは、やはりそのシルエット。これまでプレタポルテでもクチュール由来のシルエットをストリートの文脈を交えながら表現してきましたが、今回のクチュールで見せたのは紛れもないエレガンス。日常着のようなアイテムやデザインディテールを取り入れているものの、表現の方向性は全く異なると感じます。例えば、襟を背中にずらしたような“スイングバック”のシルエットは、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)アーティスティック・ディレクターのデビューとなった16-17 年秋冬コレクションでも印象的だったシルエットですが、クチュールではピュアな造形美を追求。作りとしても、本来の肩の位置にフィットするパーツが内側に配されていて、常に完璧なシルエットになるように仕上げられていました。これこそが、デムナの考える現代そして次世代のためのクチュールなのでしょう。

7日12:30 エルメス

 「バレンシアガ」の会場で歴史的瞬間の余韻に浸るのもそこそこに、「エルメス(HERMES)」の新作ジュエリーの展示会が開かれているフォーブル・サントノレ通り店へ。“ケリーモルフォーゼ(KELLYMORPHOSE)”と題されたコレクションは、アイコニックな“ケリー(KELLY)”バッグの留め具や南京錠をさまざまな形でデザインに落とし込んだネックレスやブレスレット、リングをラインアップ。ダイヤモンドをふんだんに使ったハイジュエリーですが、そのデザインには01年から同ブランドのジュエリーを手掛けているピエール・アルディ(Pierre Hardy)=クリエイティブ・ディレクターの自由な発想が光ります。

7日14:30 ゴルチエ パリ バイ サカイ

 会場近くのこじんまりした素敵なレストラン「プラミル(PRAMIL)」でランチをいただいた後、いよいよ本日2つ目の目玉、「サカイ」の阿部さんがゲストデザイナーとして手掛ける「ゴルチエ パリ」のショーへ。早めに到着しましたが、会場前にはすでに人だかり。会場内は3つの輪が並ぶように席が配置されています。ざっと数えたところ200席ほどしかなく、これまたかなりのプレミアです。

 こちらのレビュー記事でも書きましたが、コレクションは本当に力強く美しく、それは「ゴルチエ」であると同時に「サカイ」でした。2人のクリエイションに共通する部分が多いからこそ、ここまでナチュラルに2つの世界観が融合したのでしょう。そして今回のコレクションは、阿部さんからゴルチエさんへの絶大なリスペクトと、ゴルチエさんからの阿部さんのクリエイティビティーへの全幅の信頼で成り立っていると感じました。

 過去のインタビューで「常に違う景色が見たいと思っている」と阿部さんは話していましたが、クチュール制作はまさに“まだ見たことのない景色”。ショー後、やり切った感のある清々しい表情でインタビューに答える姿が忘れられません。日本人としても、ファッションジャーナリストとしても、いち「サカイ」ファンとしても、この瞬間に立ち会えたことは感無量!阿部さん、本当にお疲れさまでした‼︎

7日16:00 メゾン ラビ ケイルーズ

 「ゴルチエ」のショー後に阿部さんとゴルチエさんを夢中で取材していたら、次のアポまで10分しかないという大ピンチ!ダッシュで地下鉄に駆け込んで、サンジェルマン・デ・プレにある「メゾン ラビ ケイルーズ(MAISON RABIH KAYROUZ)」のショールーム兼アトリエを訪れました。元は小さな劇場だったらしく、天井が高くてとっても気持ちいい空間です。

 今シーズンのアプローチは、これまでとも、他のブランドとも異なります。ベースとなるのは、“エッセンシャル”と呼ぶシーズンレスなプレタポルテ・コレクション。そのシルエットをデフォルメしたり柄を描くように全面に装飾を施したりと、実験的なアプローチで再解釈することによって、特別なアイテムを制作しています。目を引いたのは、海岸で集めた貝殻から象ったゴールドの装飾やパールを全面にあしらったトレンチコートや、2枚のチュールの間にリアルなドライフラワーを挟んで縫いつけたドレス。ドレスに関してはコンセプトの提案のみで実際にオーダーが入った際には刺しゅうで表現するそうですが、思い出をデザインの一部にするようなアプローチはエモーショナルです。

 帰り際に、デジタルで発表された映像に映っていたアトリエも少し見せてもらいましたが、そこには若い女性職人たちがたくさん。未来のクチュールの担い手が育っているということは、頼もしいですね。

7日17:00 ズハイル ミュラド

 今回取材する最後のリアルショーは、レバノン発のクチュールブランド「ズハイル ミュラド(ZUHAIR MURAD)」です。会場で世界を飛び回るファッションジャーナリストのマスイユウさんと久々に会えて話していたら、目の前をいかにも“富裕層”な雰囲気をまとった煌びやかな女性たちがぞろぞろ。クチュールのショーは来場する顧客を見ると、どんなブランドなのかがよく分かりますね。今シーズンのインスピレーション源は、仮面舞踏会的なカーニバルで知られるイタリアのベネチア。シャンデリアからヒントを得たというクリスタルが揺れ動く装飾や、ワントーンでまとめつつも刺繍をたっぷりと施したカラードレスは、豪華絢爛の一言に尽きます。

 ただ、緩やかに傾斜するランウエイをピンヒールの華奢なサンダルで歩くモデルの中にはぎこちなく辛そうな子もちらほら……。こういうウォーキングだと、見る側もそれが気になり服に集中できないので、非常にもったいない。リアルショーを開き、ライブ配信するからには、そういうところも考える必要があると感じるショーでした。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

ストリートスナップで探る22年春夏の「売れるトレンド」/追悼:ヴァージル・アブロー

「WWDJAPAN」12月6日号は「2022年春夏リアルトレンド特集」。緊急事態宣言が明けて約2カ月がたち、都内の繁華街にもにぎわいが戻ってきました。ファッションは世相の写し鏡。世の中の20-30代の女性は今、どんな服装をしているのか?編集部は街に繰り出し、ストリートスナップを実施しました。裏表紙からは、急逝したヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の追悼特集。「オフ-ホワイト c/o …

詳細/購入はこちら