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コラボじゃなくて“ハッキング”、その心は? エディターズレター(2021年4月28日配信分)

※この記事は2021年04月28日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

コラボじゃなくて“ハッキング”、その心は?

 2020-21年秋冬、21年春夏、21-22年秋冬じゃなくて、順に「エピローグ」「オーバーチュア」そして「アリア」(笑)。完全に独自路線の「グッチ」が発表した「バレンシアガ」との協業は、コラボじゃなくて“ハッキング”だそうです。「コラボ」と言いたくなっちゃう皆さんは、一度、それを飲み込んでみましょう。3回も息を飲み込めば、次からは“ハッキング”という言葉が自然と言えるようになりますよ(笑)。

 手垢にまみれているくらい当たり前になったゆえ、「安直」とか「消費的」なんてネガティブなリアクションも予測できたから、“ハッキング”と言い換えたのでしょうか?そんな想いも、ゼロとは言い切れません。でも最新コレクションの発表直後に開かれた会見に出席したら、「それだけじゃないんだ」と思えるようになりました。

 今年で100周年の「グッチ」について、アレッサンドロ・ミケーレは「何度も生まれ変わり、再生し続ける幼い子ども」と評します。「え、そうなの?」と思う人もいるでしょう。でも振り返れば、90年代にはトム・フォードがイケイケのセクシー路線でブランドを見事に蘇らせて、最近もミケーレがコンサバ気味だったコレクションに強烈なカンフル剤を投与。私たちが知る限り、少なくとも2回は生まれ変わっています。と考えると、“ハッキング(上書き)”は、「グッチ」のアイデンティティを表現するキーワードというワケ。なるほど「バレンシアガ」を思わせるシルエットに「グッチ」のGGモチーフを“ハッキング(上書き)”、「BALENCIAGA」という文字の上に「GUCCI」のタイポを“ハッキング(上書き)”という今シーズンのクリエイションは、「グッチ」そのものとも解釈できるのです。

 加えて“ハッキング”って大胆不敵で革命的な気もするし、一方で、過去と現在の関係性が「イーブン」なのかもしれない?そんな風に思いませんか?最近は「メゾンのレガシーをコンテンポラリーに表現」という価値観が台頭していますが、その場合、主役はあくまで過去のクリエイターが生んだ「レガシー」です。「コンテンポラリーに表現」する現代のクリエイターは、引き立て役なのかもしれません(もちろん、それも大変だし素敵なことです)。でも“ハッキング”だと、過去と現在の関係性は、「メゾンのレガシーをコンテンポラリーに表現」とは違いそう。それは今っぽい気もするし、ミケーレによる「グッチ」っぽくもあります。

 彼はカンファレンスの最中、度々「『ディオール』との違い」を訴えました。ムッシューの「レガシー」をコンテンポラリーに表現する「ディオール」と、「レガシー」を“ハッキング”し続ける「グッチ」は、同じく長い歴史を有しているけれど、異なるブランドなんだと続けます。なるほど。それはフランスとイタリアという国の違いなのか?マリア・グラツィア・キウリ&キム・ジョーンズと、アレッサンドロ・ミケーレというクリエイターの違いなのか?イロイロ考えられそうで、「ディオール」と「グッチ」考は、研究のしがいがありそうです。

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