ファッション

“新常態”下の時計ビジネス 「モンブラン」はデジタルとコミュニティー力で困難を乗り切る

 「WWDジャパン」6月1日号は「時計特集」。100年以上の歴史を持つ世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」が事実上崩壊し、一方でジュネーブに新たな秩序が生まれようとしている。“激動”という言葉がぴたりと当てはまり、各社がそのうねりに対応すべくデジタル化、D2C化などさまざまにアクションを起こしている。0.25歩先を行く時計業界にファッションが学べることとは?「WWD JAPAN.com」は紙面と連係して、経営トップの肉声を伝える。コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)傘下のモンブラン インターナショナルのニコラ・バレツキー(Nicolas Baretzki)最高経営責任者に話を聞いた。

WWD:新型コロナウイルス感染拡大の影響で、主たる大型時計見本市は全て中止された。「モンブラン(MONTBLANC)」への影響は?

ニコラ・バレツキー=モンブラン インターナショナル最高経営責任者(以下、バレツキー):コロナショックは世界中の生活とビジネスのあらゆる面に大きな影響を与えており、われわれをはじめとするブランド、小売、お客さまに混乱をもたらしている。見本市など時計関連の催事も軒並みキャンセルされ、海外渡航や大規模集会に制限がかかる中、リアルイベントと同等の“魔法”を別の方法で提供する必要がある。

WWD:その一つが、4月25日に初めてデジタル開催されたスイスの大型見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA以下、W&W)」(旧「S.I.H.H.」)なのか?

バレツキー:その通りだ。われわれは「W&W」のデジタルプラットフォーム上で新作を公開している。全ての時計愛好家が「モンブラン」の新作時計について学べる優れた代替手段だ。またメディア向けには、国や地域ごとにビデオ会議ツールZoomを使った新作プレゼンテーションを実施している。日本でも、時計部門の責任者であるダビデ・チェラート(Davide Cerrato)がプレゼンターとなり5月13日に開催した。実機によるタッチ&フィールに勝るものはないが、これらのデジタルによる選択肢は“新しい生活様式”の中で非常に効果的だと感じている。

WWD:コロナショックで「モンブラン」が断念したこと、またそれに立ち向かうべく新たに発足させたプロジェクトなどがあれば聞きたい。

バレツキー:新型コロナは、われわれの健康とビジネスに前例のない課題を突き付けた。「モンブラン」にとっては従業員、卸先、お客さまの安全を守ることが最優先事項だった。その結果、店舗を閉鎖して、徹底した健康対策を実施した。工場もクローズしたため、新作の発売を一部延期した。同時にこの困難は、われわれのコミュニティーの強さを再認識させてくれた。店舗は閉鎖したものの、お客さまとはオンライン接客や電話、手紙でつながっている。もちろん、デジタル版「W&W」も素晴らしい手段の一つとなった。われわれはそこで出会い、時計製造にかける情熱を共有することができた。世界中のビジネスパートナーとお客さまからなる“「モンブラン」コミュニティー”の力があれば、この危機を一体となって克服できるものと信じている。

WWD:“今後、全ての時計ブランドがタイミングを合わせて新作を発表する必要があるのか?”という意見もある。

バレツキー:「W&W」は、多くの時計ブランドが一斉に新作を発表する強力なプラットフォームであり、今後もそれが変わることはないだろう。同時にわれわれは、この状況を新たな発想を生む好機ととらえ、できる限り多くのことを計画してトライするつもりだ。

WWD:具体的なアフターコロナの施策は?

バレツキー:国や地域ごとの商品体験の創出、デジタルおよびオムニチャネルの強化、そしてお客さまとのエンゲージメントの深化が挙げられる。より小規模でエクスクルーシブな、それこそ1対1の関係を構築していければと思う。

WWD:このような状況下でECは有効な選択肢だ。「モンブラン」の現状と今後の課題について聞きたい。

バレツキー:日本はもちろん世界中でECは、コロナショック以前から非常に強力で急成長中のチャネルだった。引き続きデジタル分野への投資を行い、マーケティング戦略としてパーソナライゼーションを加速させたい。これによりEC売り上げが伸びるばかりでなく、実店舗への誘導も促進できると考えている。

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