ファッション

デムナの「グッチ」ランウエイデビュー ルネサンスに遡って人間の姿を写実的に描くトム・フォードを思わせるセクシー路線

デムナ(Demna)による「グッチ(GUCCI)」が初のファッションショーを開催した。デムナは以前から、すでに発表している2つのコレクションは序章であり、今回の2026-27年秋冬コレクションが本格デビューとなると表明。結果「グッチ」は今シーズンのミラノ・ファッション・ウイークにおける1番の注目ブランドとなり、多くの人はすでに発表して半年前は映画まで上映した「ラ・ファミリア」コレクションからどのように変えてくるのか?に期待した。

デムナが初めて手掛けた「グッチ」のコレクション公開 「再解釈を通じて『グッチ』に対する理解と認識をリセットしたい」

注目のコレクションは、原点回帰。デムナは「グッチ」というブランドどころか、イタリアの今日における美意識の発祥となったルネサンスにまで思いを馳せ、当時勃興した人間を、ありのままに、写実的に描く芸術様式をデムナらしくファッションで描いた。

ファーストルックから、驚くほどシンプルだった。赤いリップと黒いアイシャドウが映える白人モデルが身に纏うのは、肌同様に真っ白なピタピタのミニドレス。ふくよかな胸とくびれたウエストをあからさまに強調するボディコンシャス具合だ。これに続いたのは、同じくピタピタのタートルネックのノースリーブにホワイトジーンズ姿の筋骨隆々な男性モデル。こちらも逞しい大胸筋やシックスパックが透けて見える。ポロシャツにデニム、レザーブルゾンにブラックデニム、真紅のスキッパータイプのポロニットにカラーデニムなど、アイテムは種類があれど、序盤はセカンドスキン級のボディコンシャスだったり、極細のペンシルシルエットだったり、そこに大きなスリットを刻んだり、生地を一部抉ったりで、モデルの体型を露骨に拾い強調する。男性なら力や理性、そして英雄性を、そして女性なら調和や柔らかさ、そして美しさを描こうとしたルネサンスの芸術運動をデムナらしいデザインコードで表現したかのようだ。

これに続くのは、こうした肉体美を理想的に描くべく、ルネサンス期の画家が裸の上に纏わせたトーガを現代の洋服に置き換えたスタイル。そのアプローチは、創業デザイナーのクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)のシルエットをストリートのスタイルで甦らせた「バレンシアガ」時代を思わせる。序盤とは対称的に、ここでは布をたっぷりと使ってオーバーサイズのTシャツを作成。モデルは片袖だけに腕を通し、もう片方は身頃から直接腕を出す。すると古代人が纏っていたトーガのようなシルエットになり、脇腹などはあらわになった。奇しくも会場には、トーガを纏ったルネサンスを思わせる彫刻が並んでいた。

そして終盤は、序盤同様のボディコンシャスなストレッチTシャツやパンツにクリスタルを散りばめ、まるでモデルの体自体が発光しているように神々しく見せることで、「人間讃歌」というルネサンスのテーマを追求したかのようだ。フィナーレに登場したのは、ケイト・モス(Kate Moss)。光り輝くドレスはオープンバックで、後ろからはGGモチーフをあしらったTバッグが覗く。ルネサンスの芸術的ムーブメントは、「グッチ」の歴史に置き換えればトム・フォード(Tom Ford)の時代に通じることを諭す。

現職に就任以来、デムナは「グッチ」というブランドを人間のように捉えて、最初の「ラ・ファミリア」コレクションではさまざまなパーソナリティの男性・女性像を提案した。今回のコレクションは、そうした人間性の探究をルネサンスにまで遡り、写実的に人間の体を描く。すると繋がったのは、トム・フォード時代のセクシネス。そしてセクシネスを引き出そうと、デムナはモデルにもパーソナリティに応じてさまざまなウォーキングを指示したように思える。「グッチ」らしいモチーフを存分に盛り込んだ「ラ・ファミリア」に始まった人間性を求める旅路が、色もモチーフもシルエットさえほとんど廃した今回のコレクションに辿り着くとは、デムナの解釈力の賜物と言えるだろう。

このコレクションは、「グッチ」の今の危機を救うだろうか?正直着られる人は限られるし、バリエーションは限定的だった。「グッチ」の今の課題がショールックとコマーシャルピースの乖離が大きく、特にコマーシャルピースばかりが並ぶ店頭が魅力的に見えないことにあることを考えると、今回のコレクションは問題の根本的な解決には至らないかもしれない。

しかし、やはり注目される存在にカムバックしたことは間違いない。彼は今後も、「グッチ」を人間と捉え、「バレンシアガ」の頃のように賛否両論のリスキーなメッセージを発信し続けるからこそ共感を誘い続けるという、多種多様なアプローチを見せてくれるのだろうか?

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

「セレクト」から「キュレート」に進化するセレクトショップ特集2026 定期購読者には半年に一回のビジネスリポート【WWDBEAUTY付録:2025年下半期ベストコスメ発表】

2月23日発売の「WWDJAPAN」は、全国各地のセレクトショップ特集2026です。今年も、北は盛岡、南は福岡や高松まで、全国15のセレクトショップを取材しました。特集では、店舗の役割が「セレクト:膨大な中から質の高いものを厳選する」から「キュレート:特定のテーマに沿って収集・編集し、新たな価値を加えて提案する」に変わりつつあるのではないか?と考え、それぞれの世界観やテーマ、収集・編集の方法なども…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。