「マルニ(MARNI)」がメリル・ロッゲ(Meryll Rogge)新クリエイティブ・ディレクターによる最初のファッションショーを開催した。端的に言えば、創業デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)時代の「マルニ」に回帰しつつ、メリルらしいバランス感覚でエクレクティック(折衷主義的感覚)にまとめ上げた。
振り返れば創業デザイナーによる「マルニ」は、少し野暮ったいシルエットや敢えての色柄合わせという「ズレ」、いまだセクシーが主流だった時代と一線を画したアート志向、そんな姿勢をシンボリックに表現した大ぶりのアクセサリーなどで「カワイイ」と「モード」、そして「アーティー(アートっぽい)」が交わる点で支持されてきた。それに対して前任のフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)は、よりエモーショナルかつアートに系統。シルエットは「少し野暮ったい」から「ドラマティック」に、「敢えての色柄合わせ」は「カオスのような衝突」に、「アート志向」は「アートそのもの」に変化したように思う。それぞれがデフォルメされた結果の「マルニ」は、知性を忘れないスタイルから、時に理性さえ打ち捨てた感情の爆発を想起させるアティチュードを発信するブランドに。この間、ブランドは日本発の「マルニ マーケット」や、モヘアのニットに代表されるロゴをあしらったステイプルなアイテムでファン層を拡大した印象はあるが、肝心のメインラインは後年どんどん気難しい印象となり、アートと交わることで広がるはずだったコミュニティーは閉じている印象があった。フランチェスコ退任の数カ月前の「WWDJAPAN」のインタビューで、「マルニ」を擁するOTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)会長は、「ブランドコミュニティーが少しニッチになりすぎているとも感じている。豊かな色使いを得意とするDNAを生かしつつ、もう少しコマーシャルな方向にも展開してほしい」と話していた。余談だが、だからこそマスブランドの「ジーユー(GU)」で、フランチェスコがどう活躍するのか?には注目している。
さまざまな取り組みでファン層が拡大しているからこそ、ランウエイで発表するメーンラインでも改めて「マルニ」らしさと親しみやすさをーー。これがメリルに託された役割だ。その意味で知性の中に遊びを効かせ、洋服を解体・再構築はするけれどあくまで日常着として着地させ、オーバーサイズのシルエットと構築性を両立させ、マキシマリズムとも違う「ポスト・ミニマリズム」の旗手として評価されてきたメリルという人選は、最適解だった。そしてメリルは、その期待に応えた。
太いベルトが印象的なローウエストのスタイル、大ぶりのスパンコール、弛ませたソックスとキトゥンヒールのフットベッドサンダル、そして胸元のコスチュームジュエリー……。フランチェスコの在任期間中は、コンスエロの娘のカロリナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)による「プラン C(PLAN C)」などに食指が動いていた往年のファンには、メリルのクリエイションは改めて「マルニ」に興味を抱かせる大きな契機になるだろう。腰履きするスカートから覗くのは、ブラトップとレイヤードしたペチコート。メンズでは、上下でピッチが異なるストライプのシャツ&パンツ、同じく色の異なる生地によるジャケパン、タイドアップしたシャツに厚手のカーディガンを合わせたり、クロシェ編みのようなベストには膝丈のシャツをコーディネートしたり。最初はポジティブだったか、いつの間にかシリアスやスピリチュアルなアート志向に傾倒して、派手なのに「遊び」のムードが感じづらくなっていたフランチェスコのクリエイションからの転換を印象付け、改めて自由奔放に着こなす楽しさを発信した。一方、メリルのレトロな色使いや、古着を思わせる生地選びなどは、新しい顧客を開拓しそうな気配がある。グランジやウエスタン、グランパなど、さまざまなテイストを融合する様は、若手らしいリミックス感の表れ。「愛着」や「長年愛用し続けたが故の痕跡」に価値を見出した2026-27年秋冬メンズのムードとシンクロする。
スパンコールをマザー・オブ・パールで表現するなどラグジュアリーなムードは垣間見せるが、全体を“高見え”させるという点においては課題もある。だが、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」を含め、OTB傘下のブランド群はデザイナーのアイデアをコマーシャルな商品に落とし込むセンスが卓越しているから、店頭に並ぶ商品は、そこまで心配することもないだろう。