ファッション

活動的な女性の1日を描く「クレージュ」、自分を大切にすることを説く「ミュウミュウ」 【2026-27年秋冬パリコレダイジェストVol.2】

2026-27年秋冬のコレクションサーキットが終わり、シーズンを象徴するムードやトレンド、デザイナーたちの考えが見えてきました。「パリコレダイジェスト」では、毎回一つのトピックをもとに気になったブランドのコレクションを取り上げます。

第2回は、現代を生きる女性たちへの着目。今季は女性の多面性に向き合いコレクション制作に取り組んだデザイナーが都市を問わず実に多かったですが、ここではミニマルなスタイルの中にメッセージを込めた「クレージュ(COURREGES)」と「ミュウミュウ(MIU MIU)」を紹介します。

この流れを象徴する「シャネル(CHANEL)」と「ジバンシィ(GIVENCHY)」のコレクションは別途リポートしているので、合わせてご覧ください。

ニコラスの集大成は
“「クレージュ」ウーマンの24時間”

ベルギー人映画監督シャンタル・アケルマン(Chantal Akerman)の多くの作品を観直したというニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)は今季、アクティブな都市生活を送る“「クレージュ」ウーマンの24時間”を表現しました。テーマに合わせ、ゲストに招待状として届けたのはアナログの目覚まし時計。「目覚まし時計って時代遅れだと思われていたけど、実際にはスマホをベッドのそばに置きたくない人たちの間で復活している。2年前は『もう誰も買わない』と言われていたのに、今は違う。だから招待状としても面白いと思ったし、目覚めから1日が始まるという点でもコレクションのいい出発点になった」と彼は振り返ります。

そんなアナログ時計の針が刻む音から始まったショーのファーストルックは、寝起きにシーツを身にまとったような白のサテンドレス。そして、1日の移り変わりを表すように変わる環境音とともにショーは進んでいきます。例えば、窓を開けたり、コーヒーを淹れたりしてから、家を出て、メトロに乗って……といったように。それに合わせて登場するルックも、高いスタンドカラーのコートやブルゾン、ミニドレスやスカート、シャツ、タートルネックニット、デニムといった都会にふさわしいデイウエアになり、終盤にはイブニングスタイルへと変化。ラストは1日の終わりにベッドへと戻っていくかのように、シーツ風のブラックドレスで締めくくりました。

今季特に目を引いたのは、メトロ(地下鉄)の切符やクロークの預け札をモチーフにした装飾がびっしりとあしらわれたスカートやドレス。パリのメトロの切符は今年完全廃止になりますが、日常生活の中にあるものを取り入れたデザインは今季のテーマを象徴するだけでなく、ミニマルなスタイルにユーモアをもたらしました。また、「夜を感じさせる服やコンセプチュアルなデザインだけでなく、より幅広いワードローブを提示できたと思う」とニコラスが語るコレクションには、創業者のアーカイブにヒントを得ながら、それらを現代的に解釈することで彼が確立してきたデザインコードが見て取れます。

フィナーレには、ショーに登場した全ルックを白で作り直して披露しました。ニコラス曰く、「白は『クレージュ』の象徴。アンドレ・クレージュ(Andre Courreges)にとっては光や純粋さを表す色であり、自分にとっては、それに加えて平和も感じる色」だそう。そんな今季のショーは彼のデビューから5周年の節目を記念するものでしたが、ショーから約3週間後、退任が発表されました。5年の在任期間に低迷していた「クレージュ」のイメージを刷新し、ファッション界の話題に上る存在へと戻すだけでなく、実際に若者を中心に支持されるブランドへと復活させたニコラス。その功績には、大きな拍手を送りたい。そして、今後も他のメゾンで活躍することを期待しています。

またニコラスの後任としてアーティスティック・ディレクターに就任したのは、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」でキャリアをスタートし、「JWアンダーソン(JW ANDERSON)」でデザインディレクター、ダニエル・リー(Daniel Lee)による「バーバリー(BURBERRY)」でシニアデザインディレクターを務めてきたドリュー・ヘンリー(Drew Henry)。彼のデビュー・コレクション披露は9月の予定ですが、これから「クレージュ」がどんな方向に進んでいくのかにも注目です。

「ミュウミュウ」が示す
自分の体と心を大切にすること

「プラダ(PRADA)」でラフ・シモンズ(Raf Simons)と共に女性の人生の複雑さや多面性を表現したミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、「ミュウミュウ(MIU MIU)」でもこの不安な時代を生きる人々に向き合いました。「あなたという人間は、それだけで十分。心を持ったあなた自身という存在があるのだから、他には何も必要ない。何が起こったとしても、それで十分であるべき」。そう話す彼女は「広大な世界に対する小さな人間の体というアイデア」を起点に、体と心、そして自分自身を意識して、大切にすることを説きます。

そんな体との関係性や自身という存在だけで十分という考えを映し出すように、細身のレトロなスーツスタイルから始まったショーは、総じてコンパクトやスリムなど着る人に寄り添うようなシルエットと削ぎ落としたデザインが特徴。レザーやリネン、コットンポプリンといったさまざまな素材で繰り返し打ち出した胸元に蝶結びのリボンを飾ったシンプルなタンクドレスをはじめ、レザーのクロップドジャケットとローウエストパンツや、コットンのブレザーとシャツ、ペンシルスカート、シアリングのライナーを配したナイロンのウィンドブレーカー、ファーリーなコート、ビジューをあしらったシアーなシフトドレスなど、「ミュウミュウ」のスタンダードを示すようなスタイルがそろいます。

そのほとんどは、ウォッシュなどの加工によって着古したような風合いやテクスチャーを演出。そこには、「アンティークとは、単なる歴史の経過を指すものではなく、時の中に存在し続けること」という意味が込められているといいます。そして「プラダ」でも見せたように、着用者の「痕跡」を示すようなシワや汚れなどの表現は、今季台頭した「愛着」のムードにもつながります。

また、毎回「ミュウミュウ」のショーはキャスティングもユニークですが、今季も多様な顔ぶれが目を引きました。イエナ宮の格式ある空間に土や草、小枝を敷き “野生の森”を再現したランウエイに登場したのは、ジリアン・アンダーソン(Gillian Anderson)やクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)、ジェマ・ワード(Gemma Ward)から、映画監督リュック・ベッソン(Luc Besson)の娘サティーン・ベッソン(Sateen Besson)、クンバ・サンバ(Coumba Samba)、ドンキー・キッド(Donkey Kid)、トゥモロー・バイ・トゥギャザー(TOMORROW X TOGETHER)のチェ・ヨンジュン(Choi Yeonjun)まで、幅広い年齢の俳優やアーティスト、ミュージシャン、モデルたち。今季のミニマルなスタイルは、それぞれの内面から滲み出す個性やエネルギーを際立たせました。

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