ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ファーストリテイリングが運営する「ジーユー(GU)」は、売上高3307億円(2025年8月期)の国内屈指のブランドである。圧倒的規模と存在感を誇る「ユニクロ」の陰に隠れがちだが、実態はどうなっているのか。MD(マーチャンダイジング)の視点で詳細に分析する。
絶好調のユニクロと比較すれば課題を抱えるジーユー(GU)だが、店頭のMDとVMDは着実に進化している。25年8月期までの3期間の推移と今秋冬の品ぞろえからインクルーシブ※1.MDの進展を検証してみた。
※1.インクルーシブ(inclusive)とエクスクルーシブ(exclusive)…インクルーシブは包括的・開放的、エクスクルーシブは排他的・独占的という意味で、マーケティング&マーチャンダイジングの基本政策を分ける
絶好調のユニクロ、伸び悩むジーユー
25年8月期の国内ユニクロ事業は売上収益が前期から10.1%伸びて1兆261億円と大台に乗り、営業利益も1844億円と同18.4%伸びて営業利益率は18.0%と10年8月期(20.8%)以来の水準に達した一方、ジーユー事業は売上収益が3307億円と前期から3.6%の伸びにとどまり、営業利益も305億円と9.5%減少し、営業利益率は9.2%と1.4ポイント低下した。23年8月期と比較しても、国内ユニクロ事業が営業収益で15.2%、営業利益で56.5%も伸びているのに、ジーユー事業は売上収益で12.0%、営業利益で16.9%しか伸びていない。
成熟期に入った国内ユニクロより成長期のジーユーの方が売上収益も営業利益も伸びていないのは、メジャーなSPAブランドに進化するのに必須の課題を解決できていないからだ。それは幅広い顧客をカバーする多SKU(色・サイズ)展開で欠品を回避すべく大量の在庫を抱えるインクルーシブMDと消化回転・歩留まりの相剋に他ならない。ベーシックな「ライフウェア」のユニクロが商品開発、サプライ・マネジメントからロジスティクス、店頭のVMD運用まで長い時間をかけて確立してきたノウハウが、メジャートレンドな「ファッションウェア」のジーユーにそのまま使えるわけではないからだ。
ベーシックな「ライフウェア」は売れ残っても多少、値引きすれば翌年も販売できるが、トレンド性の「ファッションウェア」は持ち越せば大幅に値引きして叩き売るしかない。「ファッションウェア」でも「ファストファッション」は二束三文になってしまうが、「今風ライフウェア」ならベーシックな「ライフウェア」と大差なく、来年に持ち越せる。
ジーユーは「ファストファッション」と若向き「今風ライフウェア」の間を揺れ動いてきたが、24年以降はメジャートレンドな「今風ライフウェア」に収斂してMDとVMDが上手く連携され、在庫運用のスキルも相応に高まったのではないか。それでもMD展開や在庫運用が未熟な分、インクルーシブが徹底できず、ユニクロに比べれば売り上げの伸びが鈍く、収益力も追いつけないでいる、と見るべきだろう。
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