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2026年春に南青山に開業の「ソーホーハウス東京」 CEOが語るクラブの哲学と“東京が持つ創造性”

イギリス・ロンドン発の会員制クラブ「ソーホーハウス(SOHO HOUSE)」が、2026年春に日本初進出となる「ソーホーハウス東京(SOHO HOUSE TOKYO)」を東京・南青山にオープンする。三井不動産が開業する複合施設「表参道グリッドタワー」内の11〜14階に位置し、アジアではムンバイ、香港、バンコクに続く4番目のハウスとなる。

クラブは4フロア構成。ラウンジやレストラン、バー、イベントスペース、屋外プール、ウェルネススタジオ、42室のベッドルームなどを備える。インテリアには英国のビンテージ家具に加え、着物の裂き織りや寄木細工など日本のクラフトを随所に取り入れ、日本の文化との融合も図る。

22年に創業者のニック・ジョーンズ(Nick Jones)から代表の座を引き継いだアンドリュー・カーニー(Andrew Carnie)最高経営責任者(CEO)は、南アメリカやアジアなど、ヨーロッパ以外の拠点を続々とオープンさせてグローバル路線を推進してきた。今や世界46拠点を展開する同クラブを率いる同CEOは、なぜ東京という街に引かれたのか。そして「ソーホーハウス」の哲学とローカルの創造性をどうつなぐのか。来春のオープンに向けて工事が進む「ソーホーハウス東京」の予定地で話を聞いた。

多様性こそが「ソーホーハウス」の“魔法”を生み出す

「『ソーホーハウス』は、クリエイティブな人々が集い、楽しみ、つながり、そして“自分の居場所”と感じられる場所。いわば“もうひとつの家(Home away from home)”なんだ」とカーニーCEO。東京のメンバーシップは、ファッション、音楽、建築、映画、アート、テック、AIなど幅広い分野で活躍する“クリエイティブ”な人々を対象にするという。年齢や性別の制限はなく、男女比は50:50を理想とする。

イギリス発祥の伝統的な会員制クラブは、上流階級の男性限定クラブ、いわば「ジェントルマンズクラブ」としてスタートしたものが多い。しかし「ソーホーハウス」創業の地、ロンドンのソーホー地区は古くから歓楽街として栄え、ファッションやストリートカルチャーの発信地でもあった。現在はメディア企業やお洒落なレストランが集まり、ゲイバーやレズビアンバーも多く立ち並ぶ。ロンドンのクリエイティビティーや多様性を象徴する地域だ。

そんな地で創業したからこそ「ソーホーハウス」は、一貫して多様なメンバーを揃えることにこだわる。入会希望者は、肩書きそのものより「ソーホーハウス」にどんなクリエイティビティーをもたらすのか、クラブとの親和性があるかという観点で審査される。カーニーCEOは「多様性こそが『ソーホーハウス』の“魔法”を生み出す。若者だけでも年長者だけでもない、世代や文化を超えたコミュニティーを育てたい」と語る。

東京進出は6年以上前から構想されていたという。「グローバルな戦略を進める中で東京には常に拠点を作りたいと考えていた。香港やソウルと並んで、アジアの中でも特別な文化と創造力が共存する場所だ。こんな街に住める人たちはラッキーだと思うよ。ぼくたちもようやく、クリエイティブコミュニティーが息づくこの街に“家”を作ることができる」。パートナーの三井不動産とは、ビルの開発段階から協働してきた。立地選定も「東京のクリエイティブが集まる場所」という基準で決めたという。

朝から夜まで過ごせるワークスペースも備えたクラブ空間

全4フロアのうち、ワークスペース、ラウンジ、イベントスペース、レストランなど、メンバーたちが社交を楽しむエリアは1つのフロアにまとめられている。レセプションは同ハウスが入る表参道グリッドタワーの1階部分に設けられ、メンバーは、チェックイン後に上階のクラブや客室にアクセスする。“クラブ・スペース”と呼ばれるラウンジスペースは「朝・昼・夜を通してメンバーが滞在できるように設計されている」とカーニーCEO。朝食やランチを楽しみながら仕事をし、夜はそのまま食事やイベントに参加できるようデザインされているという。フロアの最大収容人数は約250名。リラックスした雰囲気の中で、食事と社交の時間が自然に繋がる構成だ。

ラウンジスペースでは、バーガーやピザ、サラダ、寿司などのクラブメニューを提供する。特に、ピザ窯で焼いた本格ピザは「ソーホーハウス」の人気メニューの一つ。一方、「ニューヨークスタイルのダイナー」をイメージしたデザインのレストランは、英国の伝統を感じさせる“ブリティッシュグリル”をテーマに据える。ただし「ソーホーハウス」はイタリアンやフレンチブラッスリー、地中海料理など、世界中にさまざまなコンセプトのレストランを展開しているため、半年ごとにこれらのコンセプトをローテーションし、メニューを変更することを考えているという。実際に香港のハウスではこの方針を採用し好評を博す。オープンキッチンからは調理の様子を覗き見ることもできる。プライベートダイニングルームもあり、メンバーの誕生日会やディナーイベントにも柔軟に対応するフレキシブルな空間設計が特徴だ。

月40本のイベントが生む“つながり”

「ソーホーハウス」では、世界中の拠点で毎月40本以上のイベントを開催する。「ライブイベント、ウェルネスイベント、アートや建築に関するパネルトーク、ファッションショー、DJイベントなど、形式はさまざまだ。メンバーが交流し、新しい人と出会うための場として機能している」とカーニーCEOは語る。

各ハウスには委員会(コミッティー)が組織される。この委員会と創設メンバー(東京の場合は500名)が、ハウスを駆動させる“心臓部”となり、中心となってコミュニティーを構築していく。ちなみに「ソーホーハウス東京」でも、すでに委員会が立ち上がっており創設メンバーを集めているところだ。「『ソーホーハウス』はナイトクラブでも、単なるレストランでもない。仕事も遊びもできて“1日いられる居場所”なんだ」とカーニーCEO。館内にはウェルネススタジオも併設され、ヨガやフィットネスなどの充実したプログラムも用意する。

「ローカルに作り、ローカルに根づく」

ハウスの主たる設計はロンドンのデザインチームが担う。ただし建築や施工、館内に設置するアートワーク、陶器やテキスタイルなどはすべて東京のパートナーと協業している。「アート、陶芸、パジャマ、ローブまで、できる限り東京の職人やブランドと作っていく。私たちが大事にする原則は“ローカルで作る”ということ」。その言葉の通り、制服のデザインは「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」が手がけるという。「『ソーホーハウス』のデザインにとって最も大切なのは、地域の文化と人々を映し出すこと。メンバーの多様性を空間にも反映させたい」と話す。

東京のハウスには、大型の屋外プールも併設する。「この建物が新築だからこそプールを設計できた。日本人は冬にプールで泳がないと聞いたが、寒い季節でも利用できるよう温水仕様にしたんだ。冬や雪の日にも泳ぐメンバーが現れることを期待しているよ」と笑う。

「私たちは、メンバーが自分らしくいられる“安全で自由な空間”をつくりたい。ここで新しい人と出会い、楽しく過ごし、そして自分の創造性を育ててほしい。それこそが『ソーホーハウス』の本質だ」と語った。

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