セーレンは、ユニチカから買収した岡崎工場の再建に最大で200億円を投じる。100億円を投じて老朽化した設備更新やDXを行うほか、グループで推進する新規事業の開発及び生産拠点としても活用し、こちらでも最大で100億円を投じる。川田達男会長CEO(85)は20年前にカネボウから買収した繊維事業の立て直しに尽力した結川孝一・元セーレン社長(76)を呼び戻し、再建の任にあてる。9月10日に東京都内で行った会見で、明らかにした。
セーレンは6月に経営再建中のユニチカから、ポリエステル繊維の生産などを行う岡崎工場の買収で基本合意。9月2日には78億円での買収を決めていた。来年1月1日には新設会社を設立し、ポリエステルの重合と繊維、不織布の生産設備などを引き継ぐ。岡崎工場は、愛知県岡崎市内に32万㎡の敷地約500人の従業員が働いている。引き継ぐ人員については3年間はこれまで通りの待遇を保証することが契約に含まれており、3年をかけて福利厚生などのほか組織の統合を進める考え。
設備投資の詳細は老朽化した設備の更新などに100億円、グループで新規事業向けに実施予定の300億円のうち、「30〜40%を岡崎工場に振り分ける」(川田会長)。「建設業界の人手不足により、今は国内に工場を新設するとなると6〜7年はかかる。ユニチカの岡崎工場を取得したことで、新規事業の立ち上げがかなりスピードアップすることにつながる」。新規事業分野では、自動車関連資材や炭素繊維、建築資材、半導体関連の設備の導入を検討する。「現時点での考えであって、実際にはもっと上積みする可能性は高い」(川田会長)。
来年1月に新設する子会社のトップには、20年前のカネボウの繊維事業買収後の統合を指揮した結川孝一セーレン元社長(現特別顧問)が就任する予定。20年前にカネボウの繊維事業を引き継いたKBセーレンは現在見事に再建を果たしており、売上高155億円に対して純利益15億円という高収益企業に生まれ変わっている。
結川氏は2018年にセーレンの社長を退任後は無報酬の顧問に退き、直近では東証プライム上場のシンフォニアテクノロジーで社外取締役を務めている。結川氏は再建に関して「これまで糸売り、原料売りが大半だったのを、加工などの付加価値を高める。赤字が続いていた岡崎工場はこの10年くらいは設備更新もできていなかった。設備更新だけでもコストは億単位で切り下げられる。2027年3月期には黒字化に持っていきたい」と自信を見せる。
岡崎工場の敷地は32万㎡と広大で、設備更新などでさらに余剰のスペースが生まれる可能性が高い。セーレンはこうしたスペースを、グループ全体の物流拠点にすることも検討する。