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デジタルでは「未知の世界」に出合えない エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月21日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

デジタルでは「未知の世界」に出合えない

 最近、ウチのサイトで書籍に関するコラムがたくさんアップされるようになりました。良き。喜びです(笑)。特に良いのは、各々の記者(時にはアルバイトまでもがw!!)が、本を読み、中身を取材で得た知見や最近の興味、そもそもの志向とリンクさせることで“自分ごと化”していること。以前、このお手紙で「コンテンツのコンテクスト化」についてお話ししましたが、それがちゃんと実践されていて、嬉しくなっちゃいます。

 かく言う僕が今読んでいるのは、「現代地政学 国際関係地図」という100の地図を掲載した図版集。東西冷戦から最近の移民問題までを簡単な解説と地図で教えてくれる一冊です。同僚のように書評的コラムを書こうかとも思うのですが、「紙媒体では未知のジャンルを」と思うフシがあり、書店に行くとついついファッションやビューティ関連書籍以外をチョイスしてしまいます。

 「紙媒体では未知を」は、数年に及ぶデジタルとの関わりから意識するようになりました。デジタル、特にSNSに触れて、「この世界は自分のフィールド、もしくはその周辺を知るには便利だけど、未知のフィールド知るにはなんて不便なんだ!」と痛感したのがきっかけでした。

 「え!?ネットって、なんでも知ることができるでしょう?」。そう思う方は、多いかもしれません。でも、それは違います。SNSは、そもそも自分がフォローしている人が、「自分のフィールド」の人。そんな方々の投稿で構成されるタイムラインは、結果「自分のフィールド」です。そしていずれのSNSも、アルゴリズムが「自分のフィールド」を深く知るきっかけを提供する一方、「未知のフィールド」を学ぶ機会は奪っています。

 検索ツールも同様です。「自分のフィールド」は、さまざまな検索ワードが即座に浮かびますが、「未知のフィールド」はそもそもどんなキーワードを打ち込んで検索したらいいのかさえわからない。結果、やっぱり「未知のフィールド」には出合いづらいのです。というワケで、他者が情報を選別・編集してくれる新聞や雑誌、書籍にはまだまだ価値があると思っているし、むしろ、大勢がその価値を再考しているとさえ思います。

 だからこそ紙媒体は、自分とは全然違う世界の一冊を選びたい。そんな風に思っちゃうのです。次読もうと思っているのは、ケン・キージーの「カッコーの巣の上で」。映画は見ましたが、原作はそれ以上に悪魔の手術ロボトミーの狂気性と、アメリカの“しゃらくさい”カンジが漂っていると聞きます。ロボトミーにアメリカ臭、ファッション&ビューティとはあまりにかけ離れている気がしますが、それで良いのです(笑)。

 最後に、ちょっと強引にデジタルっぽい話をすると、インスタグラムにもたくさんの書評がアップされています。面白いのは、ハッシュタグの使い方。完全に目次としている人、備忘録がわりに明言をタグ化している人、さまざまです。こんなデジタルとアナログの融合もあるんですね。

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