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「マーガレット・ハウエル」運営企業がECに直結しないメディアを立ち上げた理由 「社員の“好き”を承認したい」

 「マーガレット・ハウエル(MARGARETE HOWELL)」を手掛けるアングローバルは、オウンドメディア「アングローバル コミュニティ マート(ACM)」を10月25日に立ち上げた。同社社員のさまざまな興味関心を取り上げ、社員の夢の実現を会社が後押しするようなコンテンツを発信。「多彩な才能を持った社員が多い会社だからこそ、彼らの好きなことを会社が承認する場を作りたい」(中田浩史取締役)との思いが背景にはある。ACMを手掛ける中田取締役と、実質的なACM編集長である及川壮也マーケティング部コミュニティ マート セクション長に聞いた。

 そもそも、アングローバルは2012~13年に、「MHL」のプロモーションの一環として、「コミュニティ マート」と名付けたリアルイベントを東京・神南で行っていた。取引先などが出展する“フェス”のような形で、現在ジュンやベイクルーズグループが行っているフェス型イベントの先駆けともいえるものだった。「売ること優先のイベントではなかったが、いい雰囲気を作ることができ、売り上げもついてきていた」(中田取締役)という。しかし、会場が閉鎖されたこともあって休止。数年を経て、改めてアングローバルとして「コミュニティ マート」と冠した企画を立ち上げることになった。

 「以前行っていた『コミュニティ マート』は取引先などの外部との交流に焦点を当てていた。今ももちろん外部との交流は大切だが、今回ACMで起点としたのは社員。そこが以前とは異なるポイントだ」と中田取締役は話す。「ACMの立ち上げは半分は(お客さんなど)社外のため。残りの半分は社員のため。われわれは社員を愛せる会社でありたい。社員の興味関心がファッション以外に変わったことで、アングローバルから転職していってしまうというのではさみしい。(本業とは関係ないものであっても)社員の“好き”を発信する場を作りたかった。それに、SNS時代にはそういった“個”が立ったコンテンツを消費者も求めている」と分析する。

 社員一人一人に光を当てるといっても、それが可能なのは個性的で粒ぞろいのメンバーがそろっていてこそだ。その点、アングローバルは、独自の興味関心を徹底的に掘り下げるタイプの社員を豊富に抱えている。例えば、「マーガレット・ハウエル」のカフェでキッチン業務を担当する女性。彼女は今年の夏休みに、米カリフォルニアのヨセミテ国立公園を起点とする約340キロメートルのトレイルの旅を行った。ACMでは準備段階から彼女に密着し、旅をコンテンツ化している。

 米国へ出発する前には、彼女と編集者、カメラマンとで、彼女の憧れの人だという行動食に詳しい料理研究家にも会いに行った。「社員に焦点を当てつつ、社員の会いたい人である“その道のプロ”も取り上げるよう意識している。社員の夢をかなえると共に、社員自身がプロになっていくきっかけ作りをACMが担っていければ」と、及川セクション長は話す。読者の立場としても、社員の話だけでなく、プロの意見や視点を知ることができるコンテンツの方が面白い。

 他に企画しているコンテンツは、各店舗の販売員による街の飲食店や名所の案内など。現在は吉祥寺編を掲載している。「販売員がどういったことを考えながら働いているかには寄り添っていたいし、うちの販売員は街のコンシェルジュだということに気付いた」と中田取締役。どの記事も製作はスタッフ自身がブログのように行うのではなく、契約している編集プロダクションの編集者やライターが担当し、クオリティを担保する。また、吉本ばなななどの作家によるエッセイやアート批評なども掲載し、より目の肥えた読者も楽しめるようにした。

 まずはウェブサイトとしてスタートしたが、「コンテンツを積み重ねていって、リアルイベントにも適宜発展させていければ」(及川セクション長)と考えている。サイト内にECサイトへの導線もないわけではないが、決して目立たない作り。「SPAブランドをやっている会社で(EC)カートのないホームページを作るなんてバカじゃないのかとも思われるかもしれないが、それが許されるのがアングローバルだ」(中田取締役)。