アンドエスティHD(旧アダストリア)は、自社ECモール「アンドエスティ(and ST)」で他社ブランドの取り扱いを本格化する。この秋からユナイテッドアローズ、ICL、ジュン、ニューバランスジャパンの4社が加わった。オープン化されたプラットフォームとしての役割を強め、2030年度にGMV(流通総額)1000億円の達成を目指す。
15日からユナイテッドアローズの「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS)」、22日からICLの「アフタヌーンティー・リビング(AFTERNOON TEA LIVING)」、29日からジュンの「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE)」「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」「ビス(VIS)」「エポール(EPOR)」が加わる。先行して9月24日には「ニューバランス(NEW BALANCE)」を始めた。
15日の記者会見に登壇した木村治社長は「国内アパレル市場は成熟市場へと変わりつつある。このような環境下でも、ファッションのワクワクを届けていきたい。競合他社と組むことで1社では作れない世界観や体験価値を提供したい」と説明した。
同社は23年10月にユナイテッドアローズ、TSIホールディングス、バロックジャパンリミテッドと「アパレル物流研究会」を発足させ、今年から共同物流の実装を始めた。「(自分たちより上の60代以上の)創業者世代は考えもしなかったことだろう。しかし利益を独占する時代は終わった。これからは利益を分け合いながら(業界を)盛り上げていく必要がある」。記者会見にゲストとして登壇したユナイテッドアローズ、ICL、ジュン、ニューバランスジャパンのEC担当者も、木村社長の考えにうなずいていた。木村社長は自らのトップセールスによって各社の社長を口説いたという。
「アンドエスティ」の会員数は2070万人(9月末時点)に育っている。各社は「2000万を超える母数はもちろん、私たちが手薄な20代の顧客が多いのも魅力」(ユナイテッドアローズの岩井一紘OMO本部長)、「約2100万人という数字に魅力を感じている。フレンチカジュアルなジュンとカジュアルなアンドエスティ。(異なる系統に)ワクワクしてもらえたら」(ジュンの渡辺明利専務)、「お客さまに『アンドエスティ』の熱意が伝わっている。アクティブ会員が770万人もいるのはその証拠だろう」(ICL アフタヌーンティー・リビング Div.の岡本昌和ECディレクター)と期待を寄せた。
「アンドエスティ」の強みの1つは、東京・原宿のリアル店舗「アンドエスティ トーキョー」を生かしたOMO(オンラインとオフラインの融合)だ。4月のオープンから半年で来場者は55万人を突破した。年間目標の100万人に向け順調に歩を進めている。ニューバランスジャパンの江川英孝常務は「9月に3週間ほどポップアップを実施したが、『アンドエスティ』の妥協ないVMDも合わさり、目標数値を達成できた」と手応えを語る。こうした“相乗効果”は「アンドエスティ」上のスタイリング投稿サービス“スタッフボード”にも現れる。多くの販売スタッフがアンドエスティHDのブランドと他社ブランドを合わせたスタイリングを提案していく。
「アンドエスティ」は14年に「ドットエスティ(.st)」として始まった。25年2月期のGMVは403億円。「1000億円のGMVを目指すには、『アンドエスティ』に魅力を感じてもらえる仲間を増やすことが必要」(木村社長)とし、22年から他社ブランドの誘致を進めてきた。25年3月末時点で「ワコール(WACOAL)」「ゾフ(ZOFF)」「ヤーマン(YA-MAN)」「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」など27の他社ブランドを取り扱ってきたが、この秋のユナイテッドアローズをはじめとした大手アパレルの参加を呼び水にしたい考えだ。