ビジネス

今度は「トッズ」が司法管理下に? 伊サプライチェーンの下請けで相次ぐ労働搾取疑惑

イタリアのブランド「トッズ(TOD'S)」は、サプライチェーンの下請け業者における劣悪な労働環境や労働搾取の疑いのため、裁判所によって司法管理下に置かれる可能性があるという。

これはミラノの検察当局が2024年から調査を行い、同社のロンバルディア州およびマルケ州を拠点とする下請け業者で上述の疑いが浮上したため、ミラノの裁判所に訴訟を提起したことに端を発している。しかし、前者については「トッズ」が直接契約しているサプライヤーではなく下請け業者であることや、消費者に販売する商品ではなく従業員向けのユニホーム用の資材を製造していることなどを理由に訴えを棄却。25年5月の控訴審でも同様の理由で棄却されている。後者の下請け業者はフットウエアのアッパー部分を製造しているものの、地理的に管轄権がないとして、ミラノの裁判所からマルケ州のアンコーナ裁判所に移管された。なお、ロイター(REUTERS)の10月8日の報道によれば、検察は「是正措置と予防策を迅速に講じる助けとなる」ことを理由に、「トッズ」を司法の管理下に置くことを要求するべく最高裁判所に上告している。

「トッズ」の親会社は声明を発表

報道を受け、同ブランドを擁するトッズ・グループ(TOD'S GROUP)は、「当社および傘下ブランドは労働慣行を含む全ての適用される法律を順守しており、監査も定期的かつ徹底的に実施している。また、当社は製品の品質と従業員の快適な労働環境は切り離せないものと考え、いずれも重視している。この信念に基づき、本件に関する文書を精査し、調査に全面的に協力する」と声明を発表。一方で、同社は「(調査に着手したころなど)適切な時期に検察当局から連絡があれば、必要な情報を全て提供し、当初から調査に協力できたと思うと失望を感じざるを得ない」とも述べており、検察当局の調査方針にやや不満があることを示唆した。

“メード・イン・イタリー”の危機に直結

ここ2年、イタリアのラグジュアリーブランドで同様の事例が相次いでいる。「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」の製造を担うジョルジオ アルマーニ オペレーションズ(GIORGIO ARMANI OPERATIONS)は24年4月に、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が擁するクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)のイタリアの子会社で「ディオール(DIOR)」のバッグなどを生産するサプライヤーが契約していた下請け企業は6月に労働搾取などの疑いで検察の調査を受け、両ブランドは司法管理下に置かれることとなった。いずれもブランド側は調査に全面的に協力し、是正措置と予防策を迅速に講じたことが評価され、前者は25年2月に、後者は3月に管理措置が解除された。しかし、5月には「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のバッグ製造を手掛ける部門の下請け業者が、7月にはLVMHが擁する「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」がやはり下請けにおける労働搾取の疑いを受け、司法管理の対象となっている。

下請け業者はブランド側やその親会社による監査や管理の目が行き届きにくく、問題が発生しやすいと考えられる。しかし、“メード・イン・イタリー”の看板を揺るがしかねない事態となりつつあることを踏まえると、改善に向けて迅速かつ粘り強く取り組む必要があるだろう。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

企業文化を醸成・浸透させるには? 6つのモデルケース

「WWDJAPAN」11月3日号は、企業文化浸透術を特集しています。企業は、そのビジョンや理念を共有することで、文化を育み、組織を強くします。少子化で人材の確保が難しく、さらに人材の流動性も高まっている昨今、従業員の会社に対するつながりの気持ち(エンゲージメント)を向上しようという動きもあります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。