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「ヴェルサーチェ」「コーチ」「ジバンシィ」の失敗に学べ 中国で炎上しないためには

 ラグジュアリーブランドが中国で相次いで炎上している。しかしTシャツに香港や台湾を独立した国のように表記して中国の主権を侵害していると批判され、8月11~12日にそれぞれの公式ウェイボー(微博、WEIBO)アカウント上で謝罪する事態となった「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「コーチ(COACH)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」と、2018年11月に上海でのショーが中止となった「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」には大きな違いがある。それはタイミングと、地政学上の問題が関係しているかどうかだ。

 「ドルチェ&ガッバーナ」の場合、ステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)=デザイナーがインスタグラムのアカウントから中国を侮辱するメッセージを送信したことが暴露され、ショーが開催の数時間前に中止となった上に、中国内外の大手ECや百貨店で製品が取り扱い中止となった。これを受け、ステファノ・ガッバーナとドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)創業者兼デザイナーデュオが謝罪動画を公開する騒ぎとなったものの、中国政府からの反応は特になかった。

 一方で、今回の「ヴェルサーチェ」と「コーチ」に対し、中国共産党中央委員会の機関紙である「人民日報」は、「彼らは非常に愚かな間違いをしでかした。中国人民の正当な怒りに火をつけたばかりではなく、中国市場におけるブランドの将来を暗いものにした。中国でビジネスをしたいのであれば、中国の法律に従わなければならない。中国の主権を侵害するこうした非難すべき多国籍企業に対して、われわれは警告を発するべきだ」と厳しく批判する記事を掲載した。

 中国政府がこれほど神経をとがらせている背景には、香港で犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対するデモが激化していることがある。13日には香港国際空港を占拠してのデモ活動が行われ、150便以上が欠航となるなど混乱が続いている。これは“一つの中国”政策を掲げている中国政府にしてみれば由々しき事態だろう。国際法律事務所ガウリングWLG(GOWLING WLG)のアレクサンドラ・ブロティ(Alexandra Brodie)=パートナーは、「大手ブランドは多様性についてもっと学ぶ必要がある。こうした(地政学上の)間違いは調査さえしておけば簡単に避けられるが、一度間違いを犯してしまうとその被害は甚大だ」と述べた。

 中国でビジネスをするにあたり、政治的に注意が必要なのは香港や台湾だけではない。マカオ、チベット、新疆ウイグル自治区などの取り扱いにも慎重を要する。米コンサルタント会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKINSEY & COMPANY)の調査によれば、25年には世界のラグジュアリー関連支出の40%が中国によるものになるという。その巨大な市場を鑑み、中国人の女優やモデルをアンバサダーとして起用するブランドも増えているが、地政学上の問題が発生した際にはリスクが倍増することを頭に入れておくべきだろう。中国の芸能人は社会的なロールモデルであることを期待されており、愛国者らしいふるまいをしているかについて中国政府が厳しく監視しているからだ。実際、「ヴェルサーチェ」のアンバサダーを務める中国の女優ヤン・ミー(Yang Mi)は同ブランドとの契約を解除する声明を出しているほか、「コーチ」のアンバサダーを務める中国のトップモデル、リウ・ウェン(Liu Wen)と同女優クアン・シャオトン(Guan Xiaotong)もブランドと距離を置く姿勢を見せた。

 現在、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は中国人女優のチョン・チューシー(Chuxi Zhong)、同歌手のクリス・ウー(Kris Wu)、俳優のリウ・ハオラン(Liu Haoran)を、「プラダ(PRADA)」は歌手のカイ・シュクン(Cai Xukun)をアンバサダーに起用している。