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楽天のキーマンが語る「ドローン発の物流革命」 “配達の全自動化”を本格化

 「物流業界では“宅配クライシス”が起きている。楽天はドローンなどを使った無人配送でこの問題を解決し、新たな産業革命を起こしたい」——7月31日~8月3日にパシフィコ横浜で開催されている楽天グループのイベント「楽天オプティミズム(Rakuten Optimism)2019」で、楽天の安藤公二・常務執行役員社長室長インベストメント&インキュベーションカンパニー シニアヴァイスプレジデントが「あなたの生活がどう変わる:ドローンと地上配送ロボット」と題した講演を行った。

 物流業界は「高齢化などによってドライバーが不足しているし、再配達が20%に達していて仕事の効率が非常に落ちている。これらの問題を解決するための本当に革新的なソリューションが求められている」(安藤常務)。楽天は問題解決の答えが無人ソリューションにあると考え、実証実験を重ねてきたという。

 その第1弾が2016年5月に千葉県内のゴルフ場で行った「国内初のドローン配送サービス」(安藤常務)だ。ゴルフ場でプレーしている顧客が、アプリを通じてゴルフボールや飲み物などを注文すると、クラブハウスから指定の場所までドローンが商品を配送する。ドローンは完全自立走行で、荷物の切り離しも自動で行い、荷物を切り離した後も自動でクラブハウスまで戻る。

 講演では「手ぶらでバーベキュー」をコンセプトにした新たなドローン活用事例も動画で紹介した。バーベキュー場でアプリから食材を注文すると、近隣のスーパーから食材をドローンが配送する、というもの。アプリの画面では「ドローンが今どこにいるのか」といった配送状況も確認できる。安藤常務は「欲しい商品が空からすぐに届く。このような革新的なサービスを出来るだけ多くの人に体験してほしい」と語った。

 利便性に加え、「物流困難なエリアの支援にも有用なのがドローンの特徴だ」(安藤常務)。過疎化した町や山間地、離島といった配送困難な地域で活用したり、運転免許を返納した高齢者の自宅に日用品を配送する、といった用途での利用が見込まれている。「こういった問題は喫緊に解決しなくてはいけないと考えている。そのためにわれわれは日本全国の自治体と連携してさまざまな実証実験を進めている」(同)。

 楽天はローソンと共同で2017年10月から約半年間、東日本大震災で被災した福島県南相馬市でのドローン配送サービスを行ってきた。基本的にはローソンの移動販売車が南相馬市の集落に商品を販売に行くが、「移動販売車には約200種類の商品しか載せられないため、それ以外の注文があった場合にリアルの店舗からドローンで配送を行った」(安藤常務)。ドローンの飛行時間は約10分。安藤常務は「地域の課題に対して新たな形で貢献できたと思っている。寒いシーズンのサービス提供だったので、からあげクンや肉まん、あんまんがよく売れた」と振り返る。

 2019年6月からスタートして9月末まで実施を予定しているのが、神奈川県横須賀市の離島、猿島でのドローン配送サービスだ。楽天と西友が共同で取り組んでいるサービスで、「実際にお金をもらってドローンで配送するのは国内初」(安藤常務)という。猿島はバーベキューや海水浴などを目的とした観光客でにぎわっているが、これまで島にある商品は定期船で配送されるもののみであったため「バーベキュー中に食材が足りなくなってしまったような場合は買いに行ける場所がなかった」(同)。今回のサービスでは、楽天のドローン用アプリから数百種類の商品を注文できるようにし、注文が入ったら対岸にある西友のスーパーからドローンで商品を届ける形をとっている。

 安藤常務はドローンの実証実験について「まずは実現可能な地域から具体的なサービスを開始し、地域の課題に取り組みながらドローンの社会的な重要性を高めたい。その上で将来的には都市部でもサービスを実現して、ドローンを必要不可欠な存在にしたい」と語った。

 ドローンと並んで楽天が2018年から開発に力をいれているのが「Unmanned Ground Vehicle(UGV)」と呼ぶ4輪を備えたロボットを使った無人地上配送だ。ドローンでは配送が難しい地域での活用を検討しているという。2019年5月には千葉県にある千葉大学のキャンパス内で実証実験を行った。学生が文房具や食べ物を注文すると、UGVが学生のいるところまで商品を届ける、というものだ。

 安藤常務は「UGVは非常に未来を感じる配送方法だが、まだ公道を走ることができない。政府と連携し、未来の宅配をいち早く実現するよう動いていきたい。海外ではさまざまな無人配送が実用化されてきているので、日本でもその流れは必ずやってくる」と話した。

 無人配送と5Gの連携についても言及した。「ドローンもUGVも無人配送なので、ネットワークとの連携が非常に大切だ。将来個体数が膨大になったときに、各拠点で制御・運用するのは負担が大きい。しかし5Gを活用すれば、遠隔で一カ所から制御・運用を行うことが可能になり、負担を大きく軽減できる」(安藤常務)。

 5Gとの連携にはさらに別の恩恵もある。「現在のネットワークでは、ドローンにつけたカメラの画像をクラウド上に送って解析する、といったことができない。そのため、ドローン側で画像情報を処理したり、カメラの画像を人が確認して安全を確保する、といったことをしている。だが5Gになれば、すべての画像をクラウド上のAIに送って処理することができるため、ドローンには処理能力が不要になって軽量化ができるし、着陸場所の安全を自動で認識できるようになる」(安藤常務)。実際に2018年に楽天生命パーク宮城で行った実証実験では、ドローンに設置したカメラによってスタジアムにいる観客の顔を正しく認識することに成功したという。

 安藤常務は「ドローンやUGVによって将来の配送は劇的に変わる。そこに5Gが加わると、これまで体験したことのないようなサービスが実現できるので期待してほしい」と語り、講演を締めくくった。

吉田洋平(よしだ・ようへい) : 出版社勤務後、フリーランスに。ビジネス、ITを中心に様々な雑誌、Web媒体、企業のオウンドメディアなどで記事を執筆