ファッション

“タピオカに並ぶ時代はもう古い” ブームの火付け役「春水堂」が考えるタピオカティーの未来

 タピオカティーブームの火付け役、台湾発の「春水堂(チュンスイタン)」はこのほど、銀座プレイスに国内14店舗目となる旗艦店、春水堂銀座店をオープンした。台湾全土で54店舗を出店する春水堂は、2013年に海外初店舗を東京・代官山にオープン。その後、続々と上陸してきた“台湾スイーツ”の先駆け的存在でもある。春水堂を日本で運営するオアシスライフスタイルグループの飲食事業を率いる木川瑞季社長は経営コンサルタント時代に台湾駐在を経験し、その時に出合った春水堂のタピオカミルクティーの美味しさに衝撃を受けた。その時、日本にお茶の文化を浸透させたいと思ったという。12日には、系列のテイクアウト専門店「TP TEA(ティーピーティー)」(台湾では250店舗を出店)の六本木ヒルズ店もオープンし、並ばずに飲めるウェブオーダーシステム「スマタピ」も本格スタートした。急成長するタピオカティー市場の未来を木川社長はどう描く?

WWD:春水堂を銀座に出店した理由は?

木川瑞季社長(以下、木川):私たちにとってこれまでの6年間は第1次タピオカティーブームを作るための準備期間でした。タピオカティーは、私たちが“アレンジティー”と呼ぶお茶の一種ですが、この第1次ブームは若いお客さまを中心に盛り上がっています。ですが、これからは大人のお客さまにも飲んでほしい。そうした思いから、日本の中心地である銀座に旗艦店を出すことが次のステップだと考えました。

WWD:6年前はここまでのブームを予想していた?

木川:手前味噌ですが、ブームを仕掛けた側だと思っています。最初は、台湾発祥のスイーツ店が表参道に続々と出店した15年に(春水堂も15年に表参道に出店)、メディアに向けて“台湾スイーツ”という言葉で訴求しました。それまで屋台などのB級グルメのイメージが強かったのですが、同時期にLCC(格安航空券)が台頭して台湾旅行が身近になったことで追い風となり、少しずつ台湾フードが受け入れられるようになりました。特にタピオカに関しては、台湾でも非常に市場が大きく、元々潜在性があったのだと思います。当然、1店舗だけでは盛り上がりませんが、大型の台湾ブランドが上陸してきたことで、パンケーキと同じように比較できるようになり、お客さまの中での熱が高まりました。

WWD:今後のブームをどう読む?

木川:タピオカをきっかけに、お茶を飲む文化が広がったことが大事なポイントです。これをただの一過性のブームにするのか、お茶の市場ができたと捉えるのかは私たち次第だと思っています。コーヒーもスターバックスやタリーズが日本に入ってきた20数年前に似たような現象になりましたが、結果的に大型チェーン店が残り、シアトル系のコーヒー市場が確立しました。今回も品質のいいブランドが伸びれば、アレンジティーの市場も伸びると思っています。決して、パンケーキやポップコーンのように一過性のブームにしてはいけません。

WWD:パンケーキやポップコーンが一過性のブームになってしまった原因は何か?

木川:リピート率だと思います。なぜお茶が残ると思うかというと、コーヒーと同様にリピート率が高く、なおかつ自分の為に買うから。ポップコーンのように手土産になると人に上げるタイミングでしか買わなくなるし、週に1回買うかと言われたら難しいのだと思います。

WWD:これまでお茶の市場が広がらなかった理由は?

木川:コーヒーに比べて圧倒的に生産量が少ないのが理由の一つです。品質のブレも大きく、発酵(コーヒーでいう焙煎にあたる)も安定させないといけないので、チェーン店には難しいとされてきました。1杯500円で出しているので決して安くはないですが、品質を落とすとお客さまが離れ、市場は成立しません。弊社は品質にこだわることで、安定的な茶葉を供給できるレベルになりました。

「もう行列に並ばせない」タピオカ界初のシステムでおじさんも飲める時代に!?

WWD:行列に関してはどう思う?

木川:行列を作りたいとは全く思っていません。行列をなくすために、テイクアウト専門店の「TP TEA」にウェブオーダーシステムを導入しました。タピオカティー=行列に並ばなければいけないというイメージを完全に壊したいと思っています。このシステムは、ウェブサイトから注文すれば、最短15分後から店頭で受け取れ、登録したクレジットカードで決済するので、レジも一切通しません。オフィスワーカーの多い丸ビル店で試験運用し、13日の六本木店オープンに合わせ、2店で本格的にスタートしました。既に多くの大人のお客さまから支持を得ています。

WWD:「タピオカティー専門店の厨房におじさんいるのが嫌」というツイートが話題になったが、これでおじさんもタピオカティーが飲める。

木川:今は潜在的に失っているお客さまがすごく多いと思います。ここ数年間、店舗に行ったけど買えなかったというご意見をたくさんいただきました。一度ネガティブな印象がつくと、元々好きでいてくださったお客さまも離れてしまいます。実はこのシステムを導入するのは、昨年上海でラッキンコーヒーのモバイルオーダーを体験して、衝撃を受けたことがきっかけです。「日本で行列に並ばせている時代じゃない。こんなことをしていたらいつかお客さまの心は離れてしまう」と。あくまで行列をなくしたいと言うのは表面的な言い方であって、一番大事なのはお客さまの購買体験だと思います。年に一度しか並ばないのであればワクワクする体験になるかも知れませんが、私たちは週に3回飲んでほしいですから。お茶を楽しんでもらえる時代を作るのが最終的な目標ですね。

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