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「イッセイ ミヤケ」「エルメス」「ソニー」がメディア向け勉強会を開催 デザイン保護の重要性を訴える

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」などを擁する三宅デザイン事務所は7月12日、デザイン保護の重要性を訴えるメディア向けの勉強会を開催した。三宅デザイン事務所からは法務部長の中川隆太郎・弁護士が登壇したほか、エルメスジャポンの黒川靖子・知的財産権担当マネージャーとソニー知的財産センターの内山信幸・特許第2部部長を招き、各社の模倣品対策やデザインに対する思いを語った。

 中川法務部長は、「一般的にファッション業界は“トレンド”というものがあるためデザインが似てしまう側面もあるが、『エルメス』や『イッセイ ミヤケ』のように流行に左右されないモノ作りに取り組んでいるブランドもある。また、エレクトロニクス業界では機能性に焦点を当てたデザインも多いが、『ソニー』はブランディングに資する高いクリエイティビティーをもってデザインに取り組んでいる」と3社の登壇理由を説明した。

 各社はそれぞれの模倣品対策についてプレゼンテーションを行った。トップバッターの中川法務部長は、バッグブランド「バオ バオ イッセイ ミヤケ(BAO BAO ISSEY MIYAKE以下、バオ バオ)」の模倣品対策の歴史を説明。その過程で「バオ バオ」の特徴でもある、三角形のタイルのようなピースを並べた図柄を商標登録するに至ったエピソードなどを披露した。

 続いて登壇した内山部長によると、ソニーにデザイン室(現在のクリエイティブセンター)が誕生したのは1961年のことだという。当時から現在に至るまでクリエイティビティーを重視したモノ作りに取り組む同社の関連では、製品そのものはもちろんのこと、パッケージデザインに至るまで模倣品が出回っている。また、同社の模倣品の90%は中国製のため、中国で開催される世界最大規模の家電製品の展示会を視察し、模倣品が出品されていないかをチェックし、欧米等の企業が中心となって構成された中国外商投資企業協会の優良ブランド保護委員会(QBPC)で電化製品ワーキンググループのリーダーを務めているという。

 「エルメス」の黒川マネージャーは、アイコンバッグ“バーキン(BIRKIN)”と“ケリー(KELLY)”の立体商標登録に至るまでの過程や一つのデザインを生み出すのにかかる人的労力、費用、時間の多さを説明。これらの労力をかけずにフリーライドする行為(他社が築いた信用や価値に便乗して利益を得ようとすること)から自社のブランドを守ることの重要性を強く説いた。

 経済産業省と特許庁が2018年5月に「デザイン経営」宣言を発表するなど、デザインの力による企業の産業競争力向上が期待される一方で、フリーライドの問題は依然として残る。18年3月に東京税関が発表した資料によると、「デザインを模倣した意匠権侵害物品の差し止め点数は前年比25倍で5万点超え」だという。「デザインが重要だという認識は高まっているが、模倣の問題にスポットが当たっていない」と中川法務部長は勉強会開催の意図を語った。

 「模倣品の流通の場はネット上の空間が最も多い」とソニーの内山部長が話すように、ECプラットフォームにおける模倣品問題は深刻だ。「メルカリ(MERCARI)」は出品を監視するブランド専門対策チームを組んで模倣品対策に当たり、ネット通販モール「楽天市場」とフリマアプリ「ラクマ」は6月に講談社とタッグを組んで模倣品対策を行うと発表するなど、プラットフォーマー側も模倣品の流通を阻止すべく動いている。中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)も、ラグジュアリーブランドをはじめとする企業と提携して模倣品対策を行っているという。しかし、その網の目をかいくぐって模倣品が流通するため“イタチごっこ”の状態は続いている。こうした状況に「法的な部分を含めてうまく対応していく仕組みづくりが大切なのではないか」と内山部長は語る。

 また、過剰にものを作り過ぎることが問題とされるファッション業界において、近年ではリセールや2次流通は“サステイナブルである”という考え方もある。しかしリセール業者がブランドの正規品と鑑定した商品の中に模倣品が紛れ込んで問題となるケースもある。18年12月にはラグジュアリーブランドの中古品を扱う会員制ECサイト「ザ・リアルリアル(THE REALREAL)」が販売した商品の中に模倣品が含まれていたとして「シャネル(CHANEL)」が提訴したが、「ザ・リアルリアル」側は模倣品の存在自体を否定し徹底抗戦の構えを見せている。

 「最近はいわゆる“ニセモノ”も巧妙になってきている」と語るのは黒川マネージャーだ。「リセールの場で真正品として売られてしまっているという事実はあり、お客さまを守るという意味では懸念するところだ。また、“リセール”は本来、消費者が安く購入できるはずだが、弊社の製品の場合は定価に数10%上乗せされた価格で売られているため、きちんとした形で消費者に届ける売り方を考える必要がある」と語る。中川法務部長も、「サステイナブルだという意見があることも理解しているが、意図せず模倣品を購入してしまう消費者がいることも看過できないため、悩ましい問題だ」と続けた。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中